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第一部 異世界建築士と獣人の少女
第74話:戦うということ
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「――なるほど、作戦行動中に穴に落ちたと、そういうわけですか」
中国戦線での作戦行動中だったという瀧井氏は、中国兵を蹴散らし、現地避難民を保護・誘導している最中に、「何かの拍子に」足を踏み外し、気が付いたらこの世界にいたのだという。
しっかりと肩にかけていた九九式小銃とかいうのはこの世界に一緒に来たが、その時背負っていた老婆はどうなったのか、分からないそうだ。
戦闘を終えた後に、避難し、助けを求めてきた老婆を救助し、背負い、後方陣地へと避難させていたのだという。
だが、戦争中にそんなことがありえたのか?
背負っていた老婆? 意味が分からない。
だって、戦争中で、しかも敵である日本兵に助けを求めた、だぞ?
いくら何でも嘘だろうと思ったが、瀧井氏は大真面目に続けた。
「支那兵は本気で自分の国のために戦っているのか分からんところがあってな。国民党軍と共産党軍が鉢合わせたら、わしらをそっちのけで戦闘を始めるなんてこともある始末だった。あいつらは国民党軍と共産党軍でいがみ合って、その片手間にわしらと戦っておるようなもんだった。
――そりゃあ、強くもなれん」
ごく当たり前のことのように話す瀧井氏だが、ますます信じられない。
だって、目の前に共通の敵がいるんだぞ? いくら仲が悪くたって、その敵の目の前でいがみ合うか? 共倒れになるだけじゃないか。
「それは、日本がいるからでしょう? 日本がいなくなったら、自然に統一されたんじゃないんですか?」
「蒋介石と毛沢東が手を結ぶ? そんなこと、天地がひっくり返ってもあり得んかっただろう。お前さんの話だと、今の中国は共産党が支配しておるそうじゃないか。つまりそういうことだったということだ」
瀧井氏は、最初、日本の行く末を心配していた。
彼がこの世界に来たのは一九四三年だったそうだ。確か一九四三年というと、山本五十六とかいう軍人が撃墜された年だったか。
ワンショットライターとか呼ばれた、ちょっと撃たれたらすぐ燃える飛行機に乗っていたと、中学時代に社会の先生が言っていた。あんなもので移動するなんて馬鹿だと。
五十六という変わった名前とワンショットライターの名前がすごく印象的だったので、覚えている。
日本はアメリカに負けた、原子爆弾を落とされ三〇万人以上が殺されたと話した時には、やはりアメリカには勝てなかったかと、涙をこぼしていた。緒戦で勝っても、結局はそれを講和に利用することができなかったのだろうと。
「やはりと言うならどうして戦争などという悪事を働いたのですか?」
「戦争が悪――なるほど、そう受け止めているのか。気持ちは分からんでもない。だが、当時はどの国も、互いの生存権を掛けて戦っていたのだ。わしらも、もちろんアメリカもな」
戦争は悪ではない、外交の一手段に過ぎない――瀧井氏の言葉だが、戦争が外交? 何を馬鹿な。
「いいか、村田さんや。戦争が終わって平和な世の中しか知らんのであれば、当時のわしらがどれだけの思いで戦ったか、おそらく分かりはせんだろう。わしらは戦争のために戦争をしたんじゃない、日本の独立を守るために戦ったのだよ」
「アメリカ相手なら、百歩譲ってそれでもいいでしょう。ですが瀧井さんは中国戦線ですよね? そっちは完全に侵略行為じゃないですか」
「……それについては、否定はせんよ。だが、それでも、我らが帝国はそこに賭けるしかなかったのだ。欧米列強の帝国主義に立ち向かうために」
自衛のための戦争だったと言いたいらしい。
だが、中学の社会の先生は、忌々しげにこう言っていた。
なぜ自衛と言いながら、中国に、日本の軍隊がいたのだと。自衛なら、日本本土を守っていたはずじゃなかったのかと。
「――自衛のために、中国で虐殺を続けたわけですか?」
「支那事変以来、長くずるずると続くことになってはしまったが、わしらも無用な虐殺などせんかったぞ。考えてもみろ、占領したあとは支那人となんとか手を結んでいかねばならんのだ。
むしろ、国共軍のほうがえげつなかった。ろくに戦う訓練もしとらんかったんだろう、質の低い兵たちは、わしらと衝突すると、武器を捨てて逃げ出す者も多かった。するとどうなるか、分かるか?」
「……戦線が崩壊し、あなたたちが前進するだけでしょう?」
「違う。督戦隊という、味方を背後から撃つための部隊がいてな。逃げる味方を撃ち殺すわけだ。死にたくなければ戦えと。
塹壕には、足を鎖で縛られ、逃げることもできんかった者たちもいた。あいつらは、末端の兵を人間と思っていなかったし、農民も味方だとは思っていなかった。
食料と兵士を補充するための、軍の餌くらいにしか思っていなかったんだろう」
そんな話、聞いた事もない。日本は三光作戦と称して、街を焼き尽くし、盗み尽くし、犯し尽くす、そういう戦い方で中国人を虐殺してきたと、社会の先生は言っていた。
「それは――わしらじゃない。やつらが、自分でやったのだ。
国民党軍も共産党軍も、それはひどいもんだった。民の街を焼き、民から略奪し、女を犯しては無残に殺した。そして、わしらがやったのだと宣伝しておったようだな」
……そんな馬鹿な。自分の国の国民に、自分たちが被害を与えてなんの得があるっていうんだ。
「……信じられんという顔をしておるな。まさに前線のわしらが、それを感じておったよ。奴らは、わしらの行動を妨害するために、川の堤防を切って何万人もの自国民を平気で見殺しにしたりした。
わしらは、そういう相手と戦い、むしろ中国の民を保護して回ったりもしたものだ」
……嘘だ、どこに自国民の生活を破壊し、自国民を虐殺して回る軍があるというんだ。ありえない。
「やつらはそうしていたぞ。特に共産党ゲリラの悪質さには手を焼いたものだった」
淡々と語る瀧井氏の話は、俺の中では衝撃に衝撃を重ねるものだった。
にわかには信じがたかったが、この世界にやってきて、いまさら俺に嘘をついて何になるというのだろう。
むしろ、俺の中学時代の社会の教師は、いったいどこから、中国軍は正義の軍で、勇気に溢れ品行方正な中国国民の味方、日本軍は邪悪で悪辣、盗み殺し犯し、妊婦の腹を裂くなど残虐なことを平然と行う人類の敵、という話を仕入れ、当時中学生だった俺たちに教えていたのだろう。
「妊婦の腹を裂くだと? それは通州《つうしゅう》事件だろう。むしろ支那の連中――特に非正規軍の奴らが好みそうなやり口だ。あの事件を知ったときには、実にむごたらしく殺された邦人の無念を思って、涙したものだ」
……通州事件? 聞いたことがない。南京大虐殺の間違いじゃないのか。
「南京攻略のことか? 虐殺も何も、軍人が互いの作戦のために命をかけて戦った、ただそれだけだ」
瀧井氏は、しかめっ面になって続けた。
「確かに支那兵は、最後には内部争いで勝手に崩壊してしまったところはあったようだが、それでも首都防衛をかけて、皇軍と必死に戦ったのだ。それを虐殺など、一方的にこちらが殺戮できたほど弱かったようなことを言って貶めるのは、感心せんな」
……え? そっち?
言い訳するかと思ったら、むしろ俺が中国を悪く言ったみたいな扱いだ。
「い、いや、民間人だって相当に殺されたって聞いていますよ! 逃げないように長い一本の針金で何万人も縛られて、機関銃でまとめて撃ち殺されたって――」
俺の言葉に、瀧井氏は、笑った。愚かな幼子の、微笑ましい失敗を笑うように。
「何万人もの支那人が、一本の針金で縛られる、だと? 一人三十秒で縛られるとして、一体何時間かけたのだ? その間、支那人は大人しく待っていたというのか? 殺されるとわかっていれば、普通、抵抗しないか? 支那の同胞が、何万人もいるんだぞ?
そもそも、何万人もの人間を縛ることができる一本の針金だと? 仮に一人につき二メートル程度だとして、何キロメートルの針金なのかね? 君は鉄というものの重さを、理解しておるのかね? その何トンもの重さになる針金の束を、どこから調達してきたのかね?」
……言われて気づく。確かに、変だ……?
「さらに、何万人もの人間を、機関銃で殺す? 何時間かかると思っているのかね、そんな無駄弾を、どこから調達したのかね。
皇軍の兵は確かに精強だったが、弾がなくては戦えん。南京制圧後も作戦行動が控えていたのに、そんなくだらない弾の使い方などできるものか」
……いや……でも、そうやって聞いて……。
しかし、あの戦争で実際に戦った人間にきっぱりと否定されると、なにか、俺が今まで学んできたことに、致命的な誤りがあったようにも思えてきてしまう。
……いや、でも、それでも……。
「わしらは皇軍の自負もあったし、アメリカやイギリスなどの新聞記者の監視もあった。腐っても民間人に手など出すものか」
瀧井氏はそこまで話し終えると、カップを手に取り、傾けた。
俺も、一口すする。ぬるくなった白湯は、うまいものではなかった。
「共産党軍が中国を支配したというなら、どうせやつらのことだ。民を民とも思わぬ無茶な政策でもやって、たくさんの犠牲者を出したのではないか?
わしらと戦っている間にも数万、ひょっとすると数十万人の民間人を死に追いやったやつらだ。何十万人という犠牲者を出したのではないか?」
大躍進政策の失敗と文化大革命による内乱の犠牲者のことを予言しているなら、恐ろしくも正確な予言だ。
ただし、残念ながら犠牲者の数が誤っている。
数十万じゃない、桁が二つ違う。
数千万だ。四千万から八千万、調査した団体によって数字は異なるが、少なくとも何千万人もの犠牲者が出ている。それも、毛沢東一人のせいで、だ。
それだって、日本が中国をめちゃめちゃにしたせいだと、例の社会科教師は言っていた。だが……本当にそうだったんだろうか。
中国戦線での作戦行動中だったという瀧井氏は、中国兵を蹴散らし、現地避難民を保護・誘導している最中に、「何かの拍子に」足を踏み外し、気が付いたらこの世界にいたのだという。
しっかりと肩にかけていた九九式小銃とかいうのはこの世界に一緒に来たが、その時背負っていた老婆はどうなったのか、分からないそうだ。
戦闘を終えた後に、避難し、助けを求めてきた老婆を救助し、背負い、後方陣地へと避難させていたのだという。
だが、戦争中にそんなことがありえたのか?
背負っていた老婆? 意味が分からない。
だって、戦争中で、しかも敵である日本兵に助けを求めた、だぞ?
いくら何でも嘘だろうと思ったが、瀧井氏は大真面目に続けた。
「支那兵は本気で自分の国のために戦っているのか分からんところがあってな。国民党軍と共産党軍が鉢合わせたら、わしらをそっちのけで戦闘を始めるなんてこともある始末だった。あいつらは国民党軍と共産党軍でいがみ合って、その片手間にわしらと戦っておるようなもんだった。
――そりゃあ、強くもなれん」
ごく当たり前のことのように話す瀧井氏だが、ますます信じられない。
だって、目の前に共通の敵がいるんだぞ? いくら仲が悪くたって、その敵の目の前でいがみ合うか? 共倒れになるだけじゃないか。
「それは、日本がいるからでしょう? 日本がいなくなったら、自然に統一されたんじゃないんですか?」
「蒋介石と毛沢東が手を結ぶ? そんなこと、天地がひっくり返ってもあり得んかっただろう。お前さんの話だと、今の中国は共産党が支配しておるそうじゃないか。つまりそういうことだったということだ」
瀧井氏は、最初、日本の行く末を心配していた。
彼がこの世界に来たのは一九四三年だったそうだ。確か一九四三年というと、山本五十六とかいう軍人が撃墜された年だったか。
ワンショットライターとか呼ばれた、ちょっと撃たれたらすぐ燃える飛行機に乗っていたと、中学時代に社会の先生が言っていた。あんなもので移動するなんて馬鹿だと。
五十六という変わった名前とワンショットライターの名前がすごく印象的だったので、覚えている。
日本はアメリカに負けた、原子爆弾を落とされ三〇万人以上が殺されたと話した時には、やはりアメリカには勝てなかったかと、涙をこぼしていた。緒戦で勝っても、結局はそれを講和に利用することができなかったのだろうと。
「やはりと言うならどうして戦争などという悪事を働いたのですか?」
「戦争が悪――なるほど、そう受け止めているのか。気持ちは分からんでもない。だが、当時はどの国も、互いの生存権を掛けて戦っていたのだ。わしらも、もちろんアメリカもな」
戦争は悪ではない、外交の一手段に過ぎない――瀧井氏の言葉だが、戦争が外交? 何を馬鹿な。
「いいか、村田さんや。戦争が終わって平和な世の中しか知らんのであれば、当時のわしらがどれだけの思いで戦ったか、おそらく分かりはせんだろう。わしらは戦争のために戦争をしたんじゃない、日本の独立を守るために戦ったのだよ」
「アメリカ相手なら、百歩譲ってそれでもいいでしょう。ですが瀧井さんは中国戦線ですよね? そっちは完全に侵略行為じゃないですか」
「……それについては、否定はせんよ。だが、それでも、我らが帝国はそこに賭けるしかなかったのだ。欧米列強の帝国主義に立ち向かうために」
自衛のための戦争だったと言いたいらしい。
だが、中学の社会の先生は、忌々しげにこう言っていた。
なぜ自衛と言いながら、中国に、日本の軍隊がいたのだと。自衛なら、日本本土を守っていたはずじゃなかったのかと。
「――自衛のために、中国で虐殺を続けたわけですか?」
「支那事変以来、長くずるずると続くことになってはしまったが、わしらも無用な虐殺などせんかったぞ。考えてもみろ、占領したあとは支那人となんとか手を結んでいかねばならんのだ。
むしろ、国共軍のほうがえげつなかった。ろくに戦う訓練もしとらんかったんだろう、質の低い兵たちは、わしらと衝突すると、武器を捨てて逃げ出す者も多かった。するとどうなるか、分かるか?」
「……戦線が崩壊し、あなたたちが前進するだけでしょう?」
「違う。督戦隊という、味方を背後から撃つための部隊がいてな。逃げる味方を撃ち殺すわけだ。死にたくなければ戦えと。
塹壕には、足を鎖で縛られ、逃げることもできんかった者たちもいた。あいつらは、末端の兵を人間と思っていなかったし、農民も味方だとは思っていなかった。
食料と兵士を補充するための、軍の餌くらいにしか思っていなかったんだろう」
そんな話、聞いた事もない。日本は三光作戦と称して、街を焼き尽くし、盗み尽くし、犯し尽くす、そういう戦い方で中国人を虐殺してきたと、社会の先生は言っていた。
「それは――わしらじゃない。やつらが、自分でやったのだ。
国民党軍も共産党軍も、それはひどいもんだった。民の街を焼き、民から略奪し、女を犯しては無残に殺した。そして、わしらがやったのだと宣伝しておったようだな」
……そんな馬鹿な。自分の国の国民に、自分たちが被害を与えてなんの得があるっていうんだ。
「……信じられんという顔をしておるな。まさに前線のわしらが、それを感じておったよ。奴らは、わしらの行動を妨害するために、川の堤防を切って何万人もの自国民を平気で見殺しにしたりした。
わしらは、そういう相手と戦い、むしろ中国の民を保護して回ったりもしたものだ」
……嘘だ、どこに自国民の生活を破壊し、自国民を虐殺して回る軍があるというんだ。ありえない。
「やつらはそうしていたぞ。特に共産党ゲリラの悪質さには手を焼いたものだった」
淡々と語る瀧井氏の話は、俺の中では衝撃に衝撃を重ねるものだった。
にわかには信じがたかったが、この世界にやってきて、いまさら俺に嘘をついて何になるというのだろう。
むしろ、俺の中学時代の社会の教師は、いったいどこから、中国軍は正義の軍で、勇気に溢れ品行方正な中国国民の味方、日本軍は邪悪で悪辣、盗み殺し犯し、妊婦の腹を裂くなど残虐なことを平然と行う人類の敵、という話を仕入れ、当時中学生だった俺たちに教えていたのだろう。
「妊婦の腹を裂くだと? それは通州《つうしゅう》事件だろう。むしろ支那の連中――特に非正規軍の奴らが好みそうなやり口だ。あの事件を知ったときには、実にむごたらしく殺された邦人の無念を思って、涙したものだ」
……通州事件? 聞いたことがない。南京大虐殺の間違いじゃないのか。
「南京攻略のことか? 虐殺も何も、軍人が互いの作戦のために命をかけて戦った、ただそれだけだ」
瀧井氏は、しかめっ面になって続けた。
「確かに支那兵は、最後には内部争いで勝手に崩壊してしまったところはあったようだが、それでも首都防衛をかけて、皇軍と必死に戦ったのだ。それを虐殺など、一方的にこちらが殺戮できたほど弱かったようなことを言って貶めるのは、感心せんな」
……え? そっち?
言い訳するかと思ったら、むしろ俺が中国を悪く言ったみたいな扱いだ。
「い、いや、民間人だって相当に殺されたって聞いていますよ! 逃げないように長い一本の針金で何万人も縛られて、機関銃でまとめて撃ち殺されたって――」
俺の言葉に、瀧井氏は、笑った。愚かな幼子の、微笑ましい失敗を笑うように。
「何万人もの支那人が、一本の針金で縛られる、だと? 一人三十秒で縛られるとして、一体何時間かけたのだ? その間、支那人は大人しく待っていたというのか? 殺されるとわかっていれば、普通、抵抗しないか? 支那の同胞が、何万人もいるんだぞ?
そもそも、何万人もの人間を縛ることができる一本の針金だと? 仮に一人につき二メートル程度だとして、何キロメートルの針金なのかね? 君は鉄というものの重さを、理解しておるのかね? その何トンもの重さになる針金の束を、どこから調達してきたのかね?」
……言われて気づく。確かに、変だ……?
「さらに、何万人もの人間を、機関銃で殺す? 何時間かかると思っているのかね、そんな無駄弾を、どこから調達したのかね。
皇軍の兵は確かに精強だったが、弾がなくては戦えん。南京制圧後も作戦行動が控えていたのに、そんなくだらない弾の使い方などできるものか」
……いや……でも、そうやって聞いて……。
しかし、あの戦争で実際に戦った人間にきっぱりと否定されると、なにか、俺が今まで学んできたことに、致命的な誤りがあったようにも思えてきてしまう。
……いや、でも、それでも……。
「わしらは皇軍の自負もあったし、アメリカやイギリスなどの新聞記者の監視もあった。腐っても民間人に手など出すものか」
瀧井氏はそこまで話し終えると、カップを手に取り、傾けた。
俺も、一口すする。ぬるくなった白湯は、うまいものではなかった。
「共産党軍が中国を支配したというなら、どうせやつらのことだ。民を民とも思わぬ無茶な政策でもやって、たくさんの犠牲者を出したのではないか?
わしらと戦っている間にも数万、ひょっとすると数十万人の民間人を死に追いやったやつらだ。何十万人という犠牲者を出したのではないか?」
大躍進政策の失敗と文化大革命による内乱の犠牲者のことを予言しているなら、恐ろしくも正確な予言だ。
ただし、残念ながら犠牲者の数が誤っている。
数十万じゃない、桁が二つ違う。
数千万だ。四千万から八千万、調査した団体によって数字は異なるが、少なくとも何千万人もの犠牲者が出ている。それも、毛沢東一人のせいで、だ。
それだって、日本が中国をめちゃめちゃにしたせいだと、例の社会科教師は言っていた。だが……本当にそうだったんだろうか。
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