上 下
83 / 111
第三章

82話

しおりを挟む
 私は素直に助言に従う事にしました。
 祝詞はさっきオーロラが教えてくれたのを覚えています。
 正直驚きました。
 あまりに簡単に絶世の美男子が現れたからです。

(初めまして、我が最愛の主よ。
 私は土精霊のノームです)

 精霊ですが、おもってたよりガッチリとしています。
 長年風雪に耐えた農夫のような身体つきといえばいいでしょうか?
 髪も瞳も漆黒で、いかにも土精霊です。

(名をつけてやれ。
 精霊が固有の名を受け入れてくれれば、下級精霊から中級精霊に進化する。
 その精霊は下級ノームでも突出した力を持っているが、中級に進化すれば、よほどの相手でなければ負ける事はない)

 私にそんな力があるのでしょうか?
 正直信じられませんが、命の恩人が嘘をつくはずもありません。
 そんな面倒なことをしなくても、放っておけば私は死んでいたのです。

(分かりました。
 御助言ありがとうございます。
 この子に名前をつけさせて頂きます。
 この子の名前はダムエルにします。
 どうかな?)

(ありがとう、我が主。
 私は今日からダムエルです!)

 ダムエルが嬉しそうに名を受け入れてくれた途端、全身が光り輝きました!
 輝きがおさまると、ダムエルの姿が一変していました!
 元々オーロラの子供ノームのように、おとぎ話や伝説で語られる小さな姿ではなく、私の腰位の身長だったダムエルですが、それが今では私が見上げなければいけないくらいの、二〇〇センチはある大男に変化しています!

 顔は厳つくなっていますが、変化前の美男子の面影があります。
 あえていえば、若者が何度も実戦を潜り抜けて厳しさを身に付けた感じです。
 ですが一番の違いは、さっきは絹の服を着ていたのに、今はフルアーマープレートを装備しているのです。
 しかも片手に青龍円月刀をガッチリと握っているのです!

(あの、ダムエル。
 随分と姿形が変わっているのだけれど、本当にさっきの土精霊なの?)

(はい、私は主に仕える土精霊のノームに間違いありません。
 ですが主の御陰で強き力を得たので、それが姿形に表れたのです。
 主が望まれるのならば、ここに転がっている魔虎を捻り潰す事も簡単です)

(いえ、いいから。
 さっきも言ったけれど、そんな事は望んでいないから!
 それよりもこの火を消すことはできないかしら?
 このままでは多くの魔獣が火に巻かれて死んでしまうわ!)

(御任せ下さい!
 土で覆てしまえば火事を消すことができます)

(待て、ノーム。
 それでは多くの精霊力を使ってしまう事になり、この者に負担が大きい。
 他の精霊とも絆を結び、上手に精霊力を使う技を教えてやれ)
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完】あの、……どなたでしょうか?

桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー  爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」 見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は……… 「あの、……どなたのことでしょうか?」 まさかの意味不明発言!! 今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!! 結末やいかに!! ******************* 執筆終了済みです。

半月後に死ぬと告げられたので、今まで苦しんだ分残りの人生は幸せになります!

八代奏多
恋愛
 侯爵令嬢のレティシアは恵まれていなかった。  両親には忌み子と言われ冷遇され、婚約者は浮気相手に夢中。  そしてトドメに、夢の中で「半月後に死ぬ」と余命宣告に等しい天啓を受けてしまう。  そんな状況でも、せめて最後くらいは幸せでいようと、レティシアは努力を辞めなかった。  すると不思議なことに、状況も運命も変わっていく。  そしてある時、冷徹と有名だけど優しい王子様に甘い言葉を囁かれるようになっていた。  それを知った両親が慌てて今までの扱いを謝るも、レティシアは許す気がなくて……。  恵まれない令嬢が運命を変え、幸せになるお話。 ※「小説家になろう」「カクヨム」でも公開しております。

悪役令嬢はざまぁされるその役を放棄したい

みゅー
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢に転生していたルビーは、このままだとずっと好きだった王太子殿下に自分が捨てられ、乙女ゲームの主人公に“ざまぁ”されることに気づき、深い悲しみに襲われながらもなんとかそれを乗り越えようとするお話。 切ない話が書きたくて書きました。 転生したら推しに捨てられる婚約者でした、それでも推しの幸せを祈りますのスピンオフです。

嫌われ王妃の一生 ~ 将来の王を導こうとしたが、王太子優秀すぎません? 〜

悠月 星花
恋愛
嫌われ王妃の一生 ~ 後妻として王妃になりましたが、王太子を亡き者にして処刑になるのはごめんです。将来の王を導こうと決心しましたが、王太子優秀すぎませんか? 〜 嫁いだ先の小国の王妃となった私リリアーナ。 陛下と夫を呼ぶが、私には見向きもせず、「処刑せよ」と無慈悲な王の声。 無視をされ続けた心は、逆らう気力もなく項垂れ、首が飛んでいく。 夢を見ていたのか、自身の部屋で姉に起こされ目を覚ます。 怖い夢をみたと姉に甘えてはいたが、現実には先の小国へ嫁ぐことは決まっており……

【短編】悪役令嬢と蔑まれた私は史上最高の遺書を書く

とによ
恋愛
婚約破棄され、悪役令嬢と呼ばれ、いじめを受け。 まさに不幸の役満を食らった私――ハンナ・オスカリウスは、自殺することを決意する。 しかし、このままただで死ぬのは嫌だ。なにか私が生きていたという爪痕を残したい。 なら、史上最高に素晴らしい出来の遺書を書いて、自殺してやろう! そう思った私は全身全霊で遺書を書いて、私の通っている魔法学園へと自殺しに向かった。 しかし、そこで謎の美男子に見つかってしまい、しまいには遺書すら読まれてしまう。 すると彼に 「こんな遺書じゃダメだね」 「こんなものじゃ、誰の記憶にも残らないよ」 と思いっきりダメ出しをされてしまった。 それにショックを受けていると、彼はこう提案してくる。 「君の遺書を最高のものにしてみせる。その代わり、僕の研究を手伝ってほしいんだ」 これは頭のネジが飛んでいる彼について行った結果、彼と共に歴史に名を残してしまう。 そんなお話。

婚約者の妹を虐めていたと虚偽の発言をされた私は……

マルローネ
恋愛
伯爵令嬢のミリーは侯爵であるボイドに婚約破棄をされてしまう。その理由は……ボイドの妹であるシエナを虐めていたからだった。しかし、それは完全に嘘であったがボイドは信じず、妹の言葉を100%信じる始末だった。 ミリーの味方は彼女の幼馴染ということになるが……。

とある悪役令嬢は婚約破棄後に必ず処刑される。けれど彼女の最期はいつも笑顔だった。

三月叶姫
恋愛
私はこの世界から嫌われている。 みんな、私が死ぬ事を望んでいる――。 とある悪役令嬢は、婚約者の王太子から婚約破棄を宣言された後、聖女暗殺未遂の罪で処刑された。だが、彼女は一年前に時を遡り、目を覚ました。 同じ時を繰り返し始めた彼女の結末はいつも同じ。 それでも、彼女は最期の瞬間は必ず笑顔を貫き通した。 十回目となった処刑台の上で、ついに貼り付けていた笑顔の仮面が剥がれ落ちる。 涙を流し、助けを求める彼女に向けて、誰かが彼女の名前を呼んだ。 今、私の名前を呼んだのは、誰だったの? ※こちらの作品は他サイトにも掲載しております

婚約破棄してたった今処刑した悪役令嬢が前世の幼馴染兼恋人だと気づいてしまった。

風和ふわ
恋愛
タイトル通り。連載の気分転換に執筆しました。 ※なろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ、pixivに投稿しています。

処理中です...