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第三章
71話
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リリアンはシーモア公爵家の上司同僚に、私の出発準備を依頼していました。
厳選した使者を、王都にも、王都までの旅程に存在する貴族家や代官にも送り、私の受け入れ準備を依頼しました。
私の願いを受け入れてくれた、明らかな誘いでした。
刺客を誘き寄せ、始末する作戦です。
私は気を引き締めました。
私の願いを聞き入れてくれた、リリアンや戦闘侍女が一番危険なのです。
最低限彼女達の足を引っ張らないようにしなければいけません。
出来る事なら、支援がしたいです。
まあ、実際に働くのはムク達なのですが、ムク達は私のパートナーなので、私も頑張った事にしてもらいます。
実際にビルバイン城を出発するまでには、予想外に二ケ月もの長い時間がかかってしまいました。
理由は、父上や兄上まで、旅程に存在する貴族家や代官に危険がないか不正がないかを調べる、巡察使を派遣したからです。
当然の事ですが、大騒動となりました。
巡察使が派遣された時点では、まだ国王陛下も王太子殿下も、媚薬の影響を取り除くために離宮で御静養中でした。
王妃殿下の承認を受けた父上が、国王陛下や王太子殿下の暗殺未遂を疑われたくない、ラトランド侯爵家派やマールバラ伯爵家派の賛成を受けて、臨時宰相として王国政治の全権を持っていました。
全ての派閥の承認や賛成を受けた父上の権力は絶大でした。
旅程上の貴族家や代官の不正が次々と暴かれました。
各派閥も、暗殺未遂犯と関連付けられるのを恐れ、摘発された者達を見捨て、全く庇いませんでした。
貴族家は取り潰され、王家の直轄領とされ、シーモア公爵家派の役人が代官として送られました。
不正で解任や召し放ちされた代官の代わりも、シーモア公爵家派の役人が送られました。
しかしこれは危険な兆候でもあります。
権力が集中すればするほど、妬み恨まれるものです。
父上は少しの失敗であろうと許されない立場になっています。
そして失敗が許されないのは、父上個人だけではないのです。
シーモア公爵家全体が、失敗も不正も絶対に許されないのです。
後継者である兄上はもちろん、家族である私や母上、リリアン達のような家臣達も、失敗も不正も許されません。
だからこそ、リリアンは隙を作ったのかもしれません。
嵌め手を使われて、シーモア公爵家の誰かが失敗させられる前に、調略で裏切り者が現れる前に、誘いをかけて敵に悪事を働かせるのです。
その点私は極上の餌だったのでしょう。
シーモア公爵の娘で、元王太子殿下の婚約者で、王太子殿下の執心で一度外れた婚約者の候補に再び選ばれた私は、籠絡して味方につけるにしても、汚名を着せてシーモア公爵を苦境に陥らせるにしても、最適の存在に映ったのでしょう。
厳選した使者を、王都にも、王都までの旅程に存在する貴族家や代官にも送り、私の受け入れ準備を依頼しました。
私の願いを受け入れてくれた、明らかな誘いでした。
刺客を誘き寄せ、始末する作戦です。
私は気を引き締めました。
私の願いを聞き入れてくれた、リリアンや戦闘侍女が一番危険なのです。
最低限彼女達の足を引っ張らないようにしなければいけません。
出来る事なら、支援がしたいです。
まあ、実際に働くのはムク達なのですが、ムク達は私のパートナーなので、私も頑張った事にしてもらいます。
実際にビルバイン城を出発するまでには、予想外に二ケ月もの長い時間がかかってしまいました。
理由は、父上や兄上まで、旅程に存在する貴族家や代官に危険がないか不正がないかを調べる、巡察使を派遣したからです。
当然の事ですが、大騒動となりました。
巡察使が派遣された時点では、まだ国王陛下も王太子殿下も、媚薬の影響を取り除くために離宮で御静養中でした。
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全ての派閥の承認や賛成を受けた父上の権力は絶大でした。
旅程上の貴族家や代官の不正が次々と暴かれました。
各派閥も、暗殺未遂犯と関連付けられるのを恐れ、摘発された者達を見捨て、全く庇いませんでした。
貴族家は取り潰され、王家の直轄領とされ、シーモア公爵家派の役人が代官として送られました。
不正で解任や召し放ちされた代官の代わりも、シーモア公爵家派の役人が送られました。
しかしこれは危険な兆候でもあります。
権力が集中すればするほど、妬み恨まれるものです。
父上は少しの失敗であろうと許されない立場になっています。
そして失敗が許されないのは、父上個人だけではないのです。
シーモア公爵家全体が、失敗も不正も絶対に許されないのです。
後継者である兄上はもちろん、家族である私や母上、リリアン達のような家臣達も、失敗も不正も許されません。
だからこそ、リリアンは隙を作ったのかもしれません。
嵌め手を使われて、シーモア公爵家の誰かが失敗させられる前に、調略で裏切り者が現れる前に、誘いをかけて敵に悪事を働かせるのです。
その点私は極上の餌だったのでしょう。
シーモア公爵の娘で、元王太子殿下の婚約者で、王太子殿下の執心で一度外れた婚約者の候補に再び選ばれた私は、籠絡して味方につけるにしても、汚名を着せてシーモア公爵を苦境に陥らせるにしても、最適の存在に映ったのでしょう。
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