婚約者に固執する必要などなかったのですね、私は自由に生きる事にします。

克全

文字の大きさ
上 下
7 / 9
第一章

第7話:自問自答

しおりを挟む
「私は貴女の言う通りにやったわよ。
 だけどこのままでは戦争になってしまうのではありませんか。
 我が家と王家が内戦など起こしてしまっては、隣国に付け込まれたしまうのではありませんか、本当にこれでよかったのですか」

(大丈夫です、内戦など起こさせしませんから、安心してください。
 ただそのためには王家を圧倒する軍資金が必要になります。
 その軍資金を集めるために墓地に行ってください)

「墓地、墓地ですって!
 そんな気味の悪い所に行って何をしようというのですか」

(私に任せてくれれば大丈夫ですよ。
 その為にボスヴィル兄上に王都屋敷にいる兵士の半数を指揮して、護衛としてついてきてもらっているのです。
 何の心配もありませんから安心してください)

「ですが貴女の言う通りにしていると、段々大袈裟なことになっている気がするのですが、それは私の勘違いだというのですか」

(大袈裟にした方が実害が少なくて済むのですよ)

「おい、おい、おい、もういい加減独り言は止めろ。
 私は事情を知っているからまだいいが、家臣達が不信な顔をしている。
 どうしても話したい事があれば馬車で話せ、馬車で」

「申し訳ありません、兄上」

 ★★★★★★

「おお、おお、おお、庶民の共同墓地など気味が悪すぎますわ」

(四の五の文句を言わない。
 今から軍資金を創り出すから、クリステルは黙って待っていて)

「軍資金、軍資金といいいますが、墓地に盗賊の隠し金でもあるというのですか」

(魔術を使うから黙っていて、集中できないわ)

「おい、おい、おい、なんだこれは。
 いったいどうなっているんだ、クリステル」

「それが兄上、心の声が魔術を使って軍資金を創ると言いだして」

「おっと、止まったぞ。
 これがクリステルの言っている軍資金だというのか。
 信じられん、こんな大きなダイヤモンドがゴロゴロとできるなんて。
 いったいどれだけの価値があるというのだ」

(ちょっとクリステル、黙っていてと言ったでしょう。
 クリステルが話したせいで集中が途切れてしまったじゃないの。
 本当ならこの千倍はダイヤモンドを創り出すつもりだったのに)

「兄上、兄上、兄上、心の声が恐ろしい事を言っています。
 私が話したせいで集中が途切れてしまったと。
 本当ならこの千倍はダイヤモンドが創る出せたと言っています」

「なに、本当かクリステル。
 だったら黙っているのだクリステル。
 これだけのダイヤモンドがあれば、もはやバカン伯爵の金の力など一切恐れる必要がなくなる。
 それどころか王家と正面から戦っても負ける事はない。
 心の声がいいと言うまで黙っているのだ」
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

理想の『女の子』を演じ尽くしましたが、不倫した子は育てられないのでさようなら

赤羽夕夜
恋愛
親友と不倫した挙句に、黙って不倫相手の子供を生ませて育てさせようとした夫、サイレーンにほとほとあきれ果てたリリエル。 問い詰めるも、開き直り復縁を迫り、同情を誘おうとした夫には千年の恋も冷めてしまった。ショックを通りこして吹っ切れたリリエルはサイレーンと親友のユエルを追い出した。 もう男には懲り懲りだと夫に黙っていたホテル事業に没頭し、好きな物を我慢しない生活を送ろうと決めた。しかし、その矢先に距離を取っていた学生時代の友人たちが急にアピールし始めて……?

ダンスパーティーで婚約者から断罪された挙句に婚約破棄された私に、奇跡が起きた。

ねお
恋愛
 ブランス侯爵家で開催されたダンスパーティー。  そこで、クリスティーナ・ヤーロイ伯爵令嬢は、婚約者であるグスタフ・ブランス侯爵令息によって、貴族子女の出揃っている前で、身に覚えのない罪を、公開で断罪されてしまう。  「そんなこと、私はしておりません!」  そう口にしようとするも、まったく相手にされないどころか、悪の化身のごとく非難を浴びて、婚約破棄まで言い渡されてしまう。  そして、グスタフの横には小さく可憐な令嬢が歩いてきて・・・。グスタフは、その令嬢との結婚を高らかに宣言する。  そんな、クリスティーナにとって絶望しかない状況の中、一人の貴公子が、その舞台に歩み出てくるのであった。

聖女がいなくなった時……

四季
恋愛
国守りの娘と認定されたマレイ・クルトンは、十八を迎えた春、隣国の第一王子と婚約することになった。 しかし、いざ彼の国へ行くと、失礼な対応ばかりで……。

出生の秘密は墓場まで

しゃーりん
恋愛
20歳で公爵になったエスメラルダには13歳離れた弟ザフィーロがいる。 だが実はザフィーロはエスメラルダが産んだ子。この事実を知っている者は墓場まで口を噤むことになっている。 ザフィーロに跡を継がせるつもりだったが、特殊な性癖があるのではないかという恐れから、もう一人子供を産むためにエスメラルダは25歳で結婚する。 3年後、出産したばかりのエスメラルダに自分の出生についてザフィーロが確認するというお話です。

覚悟は良いですか、お父様? ―虐げられた娘はお家乗っ取りを企んだ婿の父とその愛人の娘である異母妹をまとめて追い出す―

Erin
恋愛
【完結済・全3話】伯爵令嬢のカメリアは母が死んだ直後に、父が屋敷に連れ込んだ愛人とその子に虐げられていた。その挙句、カメリアが十六歳の成人後に継ぐ予定の伯爵家から追い出し、伯爵家の血を一滴も引かない異母妹に継がせると言い出す。後を継がないカメリアには嗜虐趣味のある男に嫁がられることになった。絶対に父たちの言いなりになりたくないカメリアは家を出て復讐することにした。7/6に最終話投稿予定。

公爵令嬢は婚約破棄に感謝した。

見丘ユタ
恋愛
卒業パーティーのさなか、公爵令嬢マリアは公爵令息フィリップに婚約破棄を言い渡された。

義母の企みで王子との婚約は破棄され、辺境の老貴族と結婚せよと追放されたけど、結婚したのは孫息子だし、思いっきり歌も歌えて言うことありません!

もーりんもも
恋愛
義妹の聖女の証を奪って聖女になり代わろうとした罪で、辺境の地を治める老貴族と結婚しろと王に命じられ、王都から追放されてしまったアデリーン。 ところが、結婚相手の領主アドルフ・ジャンポール侯爵は、結婚式当日に老衰で死んでしまった。 王様の命令は、「ジャンポール家の当主と結婚せよ」ということで、急遽ジャンポール家の当主となった孫息子ユリウスと結婚することに。 ユリウスの結婚の誓いの言葉は「ふん。ゲス女め」。 それでもアデリーンにとっては、緑豊かなジャンポール領は楽園だった。 誰にも遠慮することなく、美しい森の中で、大好きな歌を思いっきり歌えるから! アデリーンの歌には不思議な力があった。その歌声は万物を癒し、ユリウスの心までをも溶かしていく……。

妹に婚約者を奪われ、屋敷から追放されました。でもそれが、私を虐げていた人たちの破滅の始まりでした

水上
恋愛
「ソフィア、悪いがお前との婚約は破棄させてもらう」 子爵令嬢である私、ソフィア・ベルモントは、婚約者である子爵令息のジェイソン・フロストに婚約破棄を言い渡された。 彼の隣には、私の妹であるシルビアがいる。 彼女はジェイソンの腕に体を寄せ、勝ち誇ったような表情でこちらを見ている。 こんなこと、許されることではない。 そう思ったけれど、すでに両親は了承していた。 完全に、シルビアの味方なのだ。 しかも……。 「お前はもう用済みだ。この屋敷から出て行け」 私はお父様から追放を宣言された。 必死に食い下がるも、お父様のビンタによって、私の言葉はかき消された。 「いつまで床に這いつくばっているのよ、見苦しい」 お母様は冷たい言葉を私にかけてきた。 その目は、娘を見る目ではなかった。 「惨めね、お姉さま……」 シルビアは歪んだ笑みを浮かべて、私の方を見ていた。 そうして私は、妹に婚約者を奪われ、屋敷から追放された。 途方もなく歩いていたが、そんな私に、ある人物が声を掛けてきた。 一方、私を虐げてきた人たちは、破滅へのカウントダウンがすでに始まっていることに、まだ気づいてはいなかった……。

処理中です...