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第一章
第7話:追討・イーサン王太子視点
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「陛下、どうか私にラミアの追討をお命じ下さい。
このまま逃がしては、あの悪女の事、何をしでかすか分かりません。
聖女カチュアが傷つけられるようなことがあれば、後々悔いを残しかねません」
「お前の気持ちは分からいでもないが、そこまでしなければいけないか?
ラミアは自らの行いを悔いてボードン公爵家から逃げ出したのだ。
王家もお前とラミアの婚約を破棄したし、ボードン公爵家はラミアを勘当した。
ここは情けをかけて逃がしてやっていいのではないか?
もうラミアには、平民として隠れ住むしか道はないのだ。
あのラミアなら、その方が恥辱を感じて罰になるのではないのか?」
「陛下、陛下はラミアの性悪さを分かっておられません。
聖女カチュア、こちらに来なさい」
「あの、でも、それは、恐れ多すぎます、殿下」
「いいからおいで、聖女カチュア。
これをご覧ください陛下、これはラミアが聖女カチュアに焼き鏝を当てた傷です。
これ火傷の数々は、ラミアが毎日繰り返し聖女カチュアを焼いた傷です。
あの悪女は、聖女を苦しめて愉悦を感じていたのです。
そのような者が、大人しく反省しているわけがないのです。
必ず逆恨みして、聖女カチュアに襲いかかります。
こちらが探し出して殺さねば、いつまでも不安に苦しまなければいけないのです」
「だがな、イーサン、有力貴族の中には、ラミアに同情する者もいるのだ。
ラミアが嫉妬に狂たのは、お前が婚約者のラミアを蔑ろにして、カチュアに愛をささやいたからで、本当に悪いのはイーサンだとな」
「何を申されるのですか、陛下!
まさかそのような世迷い事、信じられたわけではありますまいな!」
「よく聞けイーサン、世の中には立場というのもがあり、立場によって見方が違う。
有力貴族にとっては、お前行いの方が貴族を蔑ろにする悪行だったのだ。
どうしても聖女カチュアが好きだというのなら、表に出さずに隠すべきだった。
公爵令嬢の婚約者に色目を使う平民には、どのような懲罰を与えようと、それは貴族として当然の行為なのだ。
むしろ懲罰を与えない方が、貴族として威厳のない情けない事なのだ。
お前が王太子の立場で、平気で元公爵令嬢のラミアを殺すと申すのと、ラミアが公爵令嬢として平民のカチュアに罰を与えるのと、いったい何が違うというのだ?!」
国王陛下の厳しい言葉に愕然とした。
私が、私が悪かったと言うのか?
ラミアの悪行が、貴族としては当然の行為だと言うのか?
そもそもの原因が、私がカチュアを見初め愛し、ラミアを蔑ろにした事にあると、そう言うのか?
違う、違う、違う、断じて違う!
私とカチュアの愛は、純粋無垢の至高の愛なのだ。
地位や身分ではなく、魂が魅かれあった断ちがたい純愛なのだ。
それを証明するためには、王太子の地位を捨て、カチュアを妻に迎えるしかない。
だが、カチュアと安心して暮らすには、ラミアを殺さなければならない。
王太子の地位を返上する代わりに、ラミアの誅殺を認めてもらおう。
このまま逃がしては、あの悪女の事、何をしでかすか分かりません。
聖女カチュアが傷つけられるようなことがあれば、後々悔いを残しかねません」
「お前の気持ちは分からいでもないが、そこまでしなければいけないか?
ラミアは自らの行いを悔いてボードン公爵家から逃げ出したのだ。
王家もお前とラミアの婚約を破棄したし、ボードン公爵家はラミアを勘当した。
ここは情けをかけて逃がしてやっていいのではないか?
もうラミアには、平民として隠れ住むしか道はないのだ。
あのラミアなら、その方が恥辱を感じて罰になるのではないのか?」
「陛下、陛下はラミアの性悪さを分かっておられません。
聖女カチュア、こちらに来なさい」
「あの、でも、それは、恐れ多すぎます、殿下」
「いいからおいで、聖女カチュア。
これをご覧ください陛下、これはラミアが聖女カチュアに焼き鏝を当てた傷です。
これ火傷の数々は、ラミアが毎日繰り返し聖女カチュアを焼いた傷です。
あの悪女は、聖女を苦しめて愉悦を感じていたのです。
そのような者が、大人しく反省しているわけがないのです。
必ず逆恨みして、聖女カチュアに襲いかかります。
こちらが探し出して殺さねば、いつまでも不安に苦しまなければいけないのです」
「だがな、イーサン、有力貴族の中には、ラミアに同情する者もいるのだ。
ラミアが嫉妬に狂たのは、お前が婚約者のラミアを蔑ろにして、カチュアに愛をささやいたからで、本当に悪いのはイーサンだとな」
「何を申されるのですか、陛下!
まさかそのような世迷い事、信じられたわけではありますまいな!」
「よく聞けイーサン、世の中には立場というのもがあり、立場によって見方が違う。
有力貴族にとっては、お前行いの方が貴族を蔑ろにする悪行だったのだ。
どうしても聖女カチュアが好きだというのなら、表に出さずに隠すべきだった。
公爵令嬢の婚約者に色目を使う平民には、どのような懲罰を与えようと、それは貴族として当然の行為なのだ。
むしろ懲罰を与えない方が、貴族として威厳のない情けない事なのだ。
お前が王太子の立場で、平気で元公爵令嬢のラミアを殺すと申すのと、ラミアが公爵令嬢として平民のカチュアに罰を与えるのと、いったい何が違うというのだ?!」
国王陛下の厳しい言葉に愕然とした。
私が、私が悪かったと言うのか?
ラミアの悪行が、貴族としては当然の行為だと言うのか?
そもそもの原因が、私がカチュアを見初め愛し、ラミアを蔑ろにした事にあると、そう言うのか?
違う、違う、違う、断じて違う!
私とカチュアの愛は、純粋無垢の至高の愛なのだ。
地位や身分ではなく、魂が魅かれあった断ちがたい純愛なのだ。
それを証明するためには、王太子の地位を捨て、カチュアを妻に迎えるしかない。
だが、カチュアと安心して暮らすには、ラミアを殺さなければならない。
王太子の地位を返上する代わりに、ラミアの誅殺を認めてもらおう。
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