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第一章

第1話:婚約破棄・レイティア視点

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「カリュー辺境伯家令嬢レイティア、お前は私の婚約者と言う地位を利用して、逆らう事にできない下位貴族令嬢に無理難題を言って苦しめたな。
 私の名前を使っての非道許し難い、この場で婚約を解消する」

 あら、あら、あら、ウィリアム王太子殿下がとんでもない事を言いだされました。
 私には全く思い当たる事はないのですが、知らず知らずのうちに虐めていたのでしょうか、もしそうなら謝らなければいけませんね。
 でも、まあ、謝るのも面倒ですし、このまま罰を受ければいいですね。

「何も言わないという事は認めるというのだな。
 ならばこのまま私が国王陛下に成り代わって裁きを下してやる。
 カリュー辺境伯家令嬢レイティア。
 そなたの行った虐めで多くの令嬢が心を痛め社交もできない状態になった。
 そのような品性下劣な女を私の婚約者にしてはいられない。
 このまま王都に置いてまた多くの令嬢を傷つけさせる訳にはいけない。
 婚約を破棄したうえで王家領から追放する。
 即日王都から出ていけ」

 あら、その程度ですませてくれるのですか。
 それはとてもありがたい事です。
 多くの貴族令嬢を傷つけてこの程度の処分なら王太子の温情ですね。
 本来なら御礼を申し上げるべきなのですが、面倒ですね。
 このまま出て行かせていただきましょう。

「ふん、田舎貴族は本当に礼儀作法がなっていないな。
 悪事に対する詫びも言わなければ、私の温情に対する礼も言わぬ。
 皆者、笑え、田舎貴族を笑てやれ」

 あら、私の事は何を言ってもいいですが、家を悪く言われるのは嫌ですね。
 それに、家の事を悪く言われたら父上と兄上達が怒られるでしょうね。
 父上と兄上達が怒るとただではすみません。
 王太子殿下達に御忠告すべきでしょうか。
 でも、お話するのは面倒ですわね。
 全ては運命ですから、運命に身を任せる方がいいでしょうね。

 私も運命に身を任せていたらこんな風にいい結果になりました。
 責任が重く一挙手一投足が注目される王太子殿下の婚約者は嫌だったのです。
 何か雰囲気の悪い王都には居たくなかったのです。
 嫌だというのも面倒だったので、なすが儘にしていたのですが、こうなりました。
 王太子殿下から婚約を破棄してもらえました。
 王都から追放してもらえました。

 王太子殿下や取り巻きの方々は死にたかったのかもしれません。
 父上と兄上達を怒らせるというのは、そう言う事だとしか思えません。
 だとしたら私が何か言うだけ野暮と言うモノです。
 そもそも何か話すのはとても面倒です。
 黙って王宮から出て行けるのならそれが一番ですわね。
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