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第1章
第14話:油とトムテ
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夜でも活動できるように明かりを手に入れる。
でも、だからといって、人間の国で買う必要はない。
俺のギフトなら明かりに使う材料を作れる。
「大地よ、巨樹が必要とする豊かな地となれ!」
俺が地面に手をついて命じると、凄まじい気配がやってきた。
空気から大地に何かが入っていくのが分かる。
地の底から力が湧き上がってくるのが分かる。
これまでたくさんの果実やナッツを実らせてくれた太郎樹たち。
だいじょうぶだとは思うが、巨大イモムシに葉を食べられて体調を崩したらいけないので、毎日十分な栄養が取れるようにする。
もう太郎樹たちからは果物もナッツも収穫しない。
自然と実るのは好いが、ギフトを使って強制的に実らせない。
必要な果物とナッツは、まだ手をつけてない大木に実らせる。
「美味しく食べられて油が搾れるオリーブを実らせろ」
「美味しく食べられて油が搾れるココナツを実らせろ」
「美味しく食べられて油が搾れるアルガンを実らせろ」
「美味しく食べられて油が搾れるアボカドを実らせろ」
「和ロウソクの材料になるハゼノ木の実を実らせろ」
俺は明かり用の油だけでなく、ついでに食用油も作る事にした。
菜種油や綿実油、ゴマ油や大豆油を手に入れるには畑仕事をしなければいけない。
頼めば手伝ってくれるだろうが、家事精霊には頼み難い。
家庭菜園程度なら家事の内に入れられるが、明かりに使うほどの量だと、とても家事とは言えない。
それでなくても、大量の果物の収穫を手伝ってもらっている。
これ以上の負担をかける訳にはいかない。
だから、油は果樹の実から搾れる物に限定した。
果樹作業がとても得意な金猿獣人族たちが収穫できる物に限定した。
酒の原料になる物は家事精霊たちに任せる。
あれだけ酒が好きなんだ、酒の原料なら家事精霊たちも嫌がらないだろう。
食用と明かり用に使う油の元は、金猿獣人族たちに任せる。
「私たちにも手伝わせてください。
料理に使う果実を収穫するのも、そこから油を搾るのも、家事の内です」
家事精霊たちの代表が言ってくれた。
「だけど、それは専業の農家さんがやる事だろう?」
「私たちが家事をお手伝いするのは貴族や大商人ではありません。
農家や小さな商家です。
家で使う物は、ほとんど自分たちで作ります。
だから気にしないでください、ただ……」
「ただ、なんだ、言いたい事があるなら全部言ってくれ」
「仕事が増えた分、妖精仲間を増やしたいです。
ここのお酒を飲みたい妖精はとても多いです。
最近では、私たちだけ狡いと文句を言ってくる妖精もいます。
代金を払う妖精には売っても良いと言われましたが、払えない者もいて……」
「分かった、家事を手伝える妖精なら受け入れる。
ただ、酒造りを手伝える者でないと、酒が足らなくなるぞ?」
「お任せください、果物の収穫が手伝える者に限定します」
「果物だけでなく、田畑の作業を手伝える者はいないか?」
「田畑の作業、農作業ですか、それならトムテがいます。
貧乏な奴が多いので、お酒が買えなくて文句を言っていた連中です。
トムテに手伝わせていいのなら、私たちも助かります」
「そうか、それなら俺も助かる、直ぐに連れて来られるか?」
俺がそう言うと、本当に直ぐに1人のトムテを連れて来た。
金猿獣人族の幼子たちと同じくらいの身長だが、だいじょうぶか?
「本当に働いてくれるのか、農作業は大変だぞ」
「まかせろ、農作業は得意だ」
垂れ下がるほど長いひげが生えている。
指は4本しかないのか?
耳はエルフのように尖っているな。
着ている服はボロボロだが、帽子だけは鮮やかな赤の新品だ。
「服がボロボロだが、何かこだわりがあるのか?」
「農作業をするのにきれいな服などいらない」
「家でくつろぐ時は、新しい着心地のいい服でも良いのだな?」
「ああ、ボロを着るのは農作業の時だけだ」
「だったら家事精霊にきれいな部屋着を作ってもらえ。
家はここと同じような家を直ぐに用意する」
「そうか、助かる。
だが服や家よりも酒だ、酒はどれくらい飲ませてくれる?」
「お前たちが原材料を集めて造った酒の1割、いや2割は飲んで良い」
「それは、イチロウが育てた果物を収穫した量の2割か?」
「果物だけではない、穀物もだ。
米や麦、イモからも酒を造る」
「なんだと、俺たちにはエールを飲ませる気か?!
ここを手伝ったら、特別なワインが飲めると聞いたぞ!」
「特別なワインも飲ませるが、特別な穀物の酒も飲ませてやる。
これまで誰も飲んだ事がない、特別な酒だ、嫌か?」
「……特別な酒、これまで誰も飲んだ事がない特別な酒……
本当にそんな酒を造れるのか?」
「ここの酒を1度も飲んだ事がないのか?」
「1度だけ飲んだ、有り金全部使って飲んだ、もの凄く美味かった!」
「俺はあの酒を造った男だぞ。
その俺が、これまで誰も飲んだ事のない酒を飲ませてやると言っている」
「……分かった、穀物を作るのも手伝ってやる。
家事よりも農作業の方が得意だから、本当はその方が良い。
まあ、1番得意なのは家畜の世話だが」
「ふむ、家畜の世話が1番得意なのか?
だったら馬の乳を材料にした酒を知っているか?」
「知っている、知っているが、もう飲みたくない。
あれしか知らなければ飲んでいただろうが、もう飲みたくない。
あれは酒精が弱いくせに恐ろしく臭いのだ。
ここのワインを1度飲んだら、あれは腐った水にしか思えない」
「そうか、分かった、だったら家畜を飼うのは止めよう」
でも、だからといって、人間の国で買う必要はない。
俺のギフトなら明かりに使う材料を作れる。
「大地よ、巨樹が必要とする豊かな地となれ!」
俺が地面に手をついて命じると、凄まじい気配がやってきた。
空気から大地に何かが入っていくのが分かる。
地の底から力が湧き上がってくるのが分かる。
これまでたくさんの果実やナッツを実らせてくれた太郎樹たち。
だいじょうぶだとは思うが、巨大イモムシに葉を食べられて体調を崩したらいけないので、毎日十分な栄養が取れるようにする。
もう太郎樹たちからは果物もナッツも収穫しない。
自然と実るのは好いが、ギフトを使って強制的に実らせない。
必要な果物とナッツは、まだ手をつけてない大木に実らせる。
「美味しく食べられて油が搾れるオリーブを実らせろ」
「美味しく食べられて油が搾れるココナツを実らせろ」
「美味しく食べられて油が搾れるアルガンを実らせろ」
「美味しく食べられて油が搾れるアボカドを実らせろ」
「和ロウソクの材料になるハゼノ木の実を実らせろ」
俺は明かり用の油だけでなく、ついでに食用油も作る事にした。
菜種油や綿実油、ゴマ油や大豆油を手に入れるには畑仕事をしなければいけない。
頼めば手伝ってくれるだろうが、家事精霊には頼み難い。
家庭菜園程度なら家事の内に入れられるが、明かりに使うほどの量だと、とても家事とは言えない。
それでなくても、大量の果物の収穫を手伝ってもらっている。
これ以上の負担をかける訳にはいかない。
だから、油は果樹の実から搾れる物に限定した。
果樹作業がとても得意な金猿獣人族たちが収穫できる物に限定した。
酒の原料になる物は家事精霊たちに任せる。
あれだけ酒が好きなんだ、酒の原料なら家事精霊たちも嫌がらないだろう。
食用と明かり用に使う油の元は、金猿獣人族たちに任せる。
「私たちにも手伝わせてください。
料理に使う果実を収穫するのも、そこから油を搾るのも、家事の内です」
家事精霊たちの代表が言ってくれた。
「だけど、それは専業の農家さんがやる事だろう?」
「私たちが家事をお手伝いするのは貴族や大商人ではありません。
農家や小さな商家です。
家で使う物は、ほとんど自分たちで作ります。
だから気にしないでください、ただ……」
「ただ、なんだ、言いたい事があるなら全部言ってくれ」
「仕事が増えた分、妖精仲間を増やしたいです。
ここのお酒を飲みたい妖精はとても多いです。
最近では、私たちだけ狡いと文句を言ってくる妖精もいます。
代金を払う妖精には売っても良いと言われましたが、払えない者もいて……」
「分かった、家事を手伝える妖精なら受け入れる。
ただ、酒造りを手伝える者でないと、酒が足らなくなるぞ?」
「お任せください、果物の収穫が手伝える者に限定します」
「果物だけでなく、田畑の作業を手伝える者はいないか?」
「田畑の作業、農作業ですか、それならトムテがいます。
貧乏な奴が多いので、お酒が買えなくて文句を言っていた連中です。
トムテに手伝わせていいのなら、私たちも助かります」
「そうか、それなら俺も助かる、直ぐに連れて来られるか?」
俺がそう言うと、本当に直ぐに1人のトムテを連れて来た。
金猿獣人族の幼子たちと同じくらいの身長だが、だいじょうぶか?
「本当に働いてくれるのか、農作業は大変だぞ」
「まかせろ、農作業は得意だ」
垂れ下がるほど長いひげが生えている。
指は4本しかないのか?
耳はエルフのように尖っているな。
着ている服はボロボロだが、帽子だけは鮮やかな赤の新品だ。
「服がボロボロだが、何かこだわりがあるのか?」
「農作業をするのにきれいな服などいらない」
「家でくつろぐ時は、新しい着心地のいい服でも良いのだな?」
「ああ、ボロを着るのは農作業の時だけだ」
「だったら家事精霊にきれいな部屋着を作ってもらえ。
家はここと同じような家を直ぐに用意する」
「そうか、助かる。
だが服や家よりも酒だ、酒はどれくらい飲ませてくれる?」
「お前たちが原材料を集めて造った酒の1割、いや2割は飲んで良い」
「それは、イチロウが育てた果物を収穫した量の2割か?」
「果物だけではない、穀物もだ。
米や麦、イモからも酒を造る」
「なんだと、俺たちにはエールを飲ませる気か?!
ここを手伝ったら、特別なワインが飲めると聞いたぞ!」
「特別なワインも飲ませるが、特別な穀物の酒も飲ませてやる。
これまで誰も飲んだ事がない、特別な酒だ、嫌か?」
「……特別な酒、これまで誰も飲んだ事がない特別な酒……
本当にそんな酒を造れるのか?」
「ここの酒を1度も飲んだ事がないのか?」
「1度だけ飲んだ、有り金全部使って飲んだ、もの凄く美味かった!」
「俺はあの酒を造った男だぞ。
その俺が、これまで誰も飲んだ事のない酒を飲ませてやると言っている」
「……分かった、穀物を作るのも手伝ってやる。
家事よりも農作業の方が得意だから、本当はその方が良い。
まあ、1番得意なのは家畜の世話だが」
「ふむ、家畜の世話が1番得意なのか?
だったら馬の乳を材料にした酒を知っているか?」
「知っている、知っているが、もう飲みたくない。
あれしか知らなければ飲んでいただろうが、もう飲みたくない。
あれは酒精が弱いくせに恐ろしく臭いのだ。
ここのワインを1度飲んだら、あれは腐った水にしか思えない」
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