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1話
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「御嬢様、大変でございます。
王太子殿下から使者が来られました!」
「応接間に案内してください。
私も直ぐに参ります」
城代が少し慌てた様子で取次に来ました。
私は直ぐに上使を迎えるのに相応しい衣服に着替え、急いで応接間に参りました。
王太子殿下の婚約者として相応しい対応が求められると思っていたからです。
ですが、違いました。
その時には既に私は王太子殿下の婚約者ではなかったのです。
いえ、伯爵令嬢でさえなかったのです。
「フラヴィア!
上意である!
畏まって聞け!」
「はい!」
使者がとてもいかめしい表情をしています。
今までとは全く違います。
今までの使者は、醜いくらいに私におもねった態度をとっていました。
将来の王妃に媚び諂おうとしていたのです。
その時は吐き気がするほど嫌でしたが、ここまで態度が違うと、戸惑うどころか恐怖を感じてしまいます。
「王都においてカーライル伯爵の謀反が発覚した。
すでにカーライル伯爵も正室のキャーラも処刑された。
フラヴィアは王太子殿下の婚約者であったので、特別な計らいで命は許される。
王太子殿下に御慈悲に感謝しろ!
抵抗しても無駄である。
神妙に城地を明け渡せ!」
「おのれ!
伯爵閣下を謀ったな!
王太子との婚約話と偽って王都に誘い出し、騙し討ちしたのであろう!」
「抵抗するか!
抵抗すればせっかく許されたフラヴィアも処刑されるぞ!
フラヴィアを殺されたくなければ、大人しく城地を明け渡せ!」
私が父上と母上の死を聞かされ、呆然自失に陥っている間に、王太子の使者と私を護る女騎士フランチェスカが口論をしていました。
カーライル伯爵家は、元々は辺境に独立独歩する領主でした。
誰にも臣従せず、魔境からの恵みを得る豊かな独立領でした。
それが、ハミルトン王家から予想外の使者が来て、私を王太子の正室に迎えるから、臣従しろと言ってきたのです。
ですが最初は相手にしませんでした。
ハミルトン王家の思惑が分からなかったからです。
その当時私は僅か三歳で、王太子も六歳でしかありませんでしたから。
しかしハミルトン王家は執拗だったそうです。
何度断っても諦めず、再三再四使者を送ってきたそうです。
豊かな魔境を手に入れようと、私の持参金の一部である台所領に魔境を加えろと言ってくるかと警戒したそうですが、持参金も台所領もカーライル伯爵家に任せると誓約証まで届けてきたそうです。
十年もの年月をかけて、父上と母上の警戒を解き私と王太子の婚約を結び、さらに三年もの年月をかけて父上と母上を油断させ、王都に呼びだして謀反の汚名を着せて殺したのです!
そう思うと、ふつふつと心の奥底から怒りがわきあがって来ました。
父上と母上は、ハミルトン王家を牽制するために私を領地に残したのですが、ハミルトン王家は私を深窓の令嬢と勘違いしたようです。
父上も母上も私も失敗しました。
王太子の婚約者に相応しいようにと猫をかぶっていた事を忘れていました。
私の能力を見せつけていたら、彼らもこのような愚かな事はしなかったでしょう。
私達が迂闊だったのですが、だからと言って父母を殺された怒りが消えてなくなるわけではありません!
怒りのまま、ハミルトン王家を滅ぼしてあげましょう!
王太子殿下から使者が来られました!」
「応接間に案内してください。
私も直ぐに参ります」
城代が少し慌てた様子で取次に来ました。
私は直ぐに上使を迎えるのに相応しい衣服に着替え、急いで応接間に参りました。
王太子殿下の婚約者として相応しい対応が求められると思っていたからです。
ですが、違いました。
その時には既に私は王太子殿下の婚約者ではなかったのです。
いえ、伯爵令嬢でさえなかったのです。
「フラヴィア!
上意である!
畏まって聞け!」
「はい!」
使者がとてもいかめしい表情をしています。
今までとは全く違います。
今までの使者は、醜いくらいに私におもねった態度をとっていました。
将来の王妃に媚び諂おうとしていたのです。
その時は吐き気がするほど嫌でしたが、ここまで態度が違うと、戸惑うどころか恐怖を感じてしまいます。
「王都においてカーライル伯爵の謀反が発覚した。
すでにカーライル伯爵も正室のキャーラも処刑された。
フラヴィアは王太子殿下の婚約者であったので、特別な計らいで命は許される。
王太子殿下に御慈悲に感謝しろ!
抵抗しても無駄である。
神妙に城地を明け渡せ!」
「おのれ!
伯爵閣下を謀ったな!
王太子との婚約話と偽って王都に誘い出し、騙し討ちしたのであろう!」
「抵抗するか!
抵抗すればせっかく許されたフラヴィアも処刑されるぞ!
フラヴィアを殺されたくなければ、大人しく城地を明け渡せ!」
私が父上と母上の死を聞かされ、呆然自失に陥っている間に、王太子の使者と私を護る女騎士フランチェスカが口論をしていました。
カーライル伯爵家は、元々は辺境に独立独歩する領主でした。
誰にも臣従せず、魔境からの恵みを得る豊かな独立領でした。
それが、ハミルトン王家から予想外の使者が来て、私を王太子の正室に迎えるから、臣従しろと言ってきたのです。
ですが最初は相手にしませんでした。
ハミルトン王家の思惑が分からなかったからです。
その当時私は僅か三歳で、王太子も六歳でしかありませんでしたから。
しかしハミルトン王家は執拗だったそうです。
何度断っても諦めず、再三再四使者を送ってきたそうです。
豊かな魔境を手に入れようと、私の持参金の一部である台所領に魔境を加えろと言ってくるかと警戒したそうですが、持参金も台所領もカーライル伯爵家に任せると誓約証まで届けてきたそうです。
十年もの年月をかけて、父上と母上の警戒を解き私と王太子の婚約を結び、さらに三年もの年月をかけて父上と母上を油断させ、王都に呼びだして謀反の汚名を着せて殺したのです!
そう思うと、ふつふつと心の奥底から怒りがわきあがって来ました。
父上と母上は、ハミルトン王家を牽制するために私を領地に残したのですが、ハミルトン王家は私を深窓の令嬢と勘違いしたようです。
父上も母上も私も失敗しました。
王太子の婚約者に相応しいようにと猫をかぶっていた事を忘れていました。
私の能力を見せつけていたら、彼らもこのような愚かな事はしなかったでしょう。
私達が迂闊だったのですが、だからと言って父母を殺された怒りが消えてなくなるわけではありません!
怒りのまま、ハミルトン王家を滅ぼしてあげましょう!
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