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3章
60話
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いきなりの事でした。
ここにレナードが現れるとは思っていませんでした。
私達が集めた情報では、ドルイガ殿に勝つための修行をしていたはずです。
厳しい実戦訓練を自分に課すために、単騎で大魔境に向かっていたはずです。
とてもこんな短期間で戻って来れるはずがないのです。
ですが、現実として魔道具の映像にはレナードとドルイガ殿が映っています。
映せる範囲が限られていますので、屋敷の周囲全ての映像を映せる魔道具がある、執務の間に移動することにしました。
ですが油断した訳ではありません。
まだ見つかっていない隠れ家に、家族が一度に安全に転移できる魔道具を用意しています。
「凄まじい努力をしたようだな」
「はい、レナードには頭が下がります」
映像の魔道具を通じてみているので、とても限られた映像です。
ですがその映像に映し出されるレナードとドルイガ殿の戦闘は、ほぼ互角です。
私達が集めた情報では、レナードの方が明らかに弱かったはずです。
こんな短期間に縮められる実力差ではなかったはずです。
それが、互角に打ち合っているのです!
「ここでレナードが勝つようなら、皇国との工作は隠蔽しなければいけないな」
「その方が苦労のし甲斐がありますよ、貴男」
「ですが父上、母上。
互角の方が困ります。
レナードでもドルイガでも構いません。
確実に勝ってくれた方が、安全に全てを賭ける事ができます」
父上も母上も方針転換を口にしています。
デリラもそうなんですが、口にする事が情け容赦ありません。
私の安全を最優先にした考え方なのでしょうが、レナードの努力が台無しです。
「ねえデリラ。
少しはレナードの努力を認めてあげたら」
「それは無理です、御姉様。
レナードが本当に御姉様の事を愛しているのなら、一旦ドルイガに奪われても、確実に勝てるようになるまで待つべきでした。
それを中途半端な状態で戦うなんて、最低最悪です。
ここでドルイガを斃せなかったら、ドルイガも命懸けで修行するでしょう。
そうなったら、レナードがどれほど努力しても、二人の戦いは互角のまま平行線です。
そんな事になったら、ハント男爵家は方針が定まらず、御姉様が危険な目に会う事になってしまいます」
私の事を最優先に考えるデリラらしい結論です。
父上も母上も同じ考えのようです。
ですが私は、レナードの短慮を少し嬉しく思っています。
私をドルイガ殿の手に渡したくないという執着が嫌なら、デリラの想いも嫌になっていたでしょう。
私は妹としてデリラを心から愛していますし、レナードも幼馴染として貴族の結婚相手として好ましく思っています。
出来る事ならレナードに勝ってもらいたいのです。
ここにレナードが現れるとは思っていませんでした。
私達が集めた情報では、ドルイガ殿に勝つための修行をしていたはずです。
厳しい実戦訓練を自分に課すために、単騎で大魔境に向かっていたはずです。
とてもこんな短期間で戻って来れるはずがないのです。
ですが、現実として魔道具の映像にはレナードとドルイガ殿が映っています。
映せる範囲が限られていますので、屋敷の周囲全ての映像を映せる魔道具がある、執務の間に移動することにしました。
ですが油断した訳ではありません。
まだ見つかっていない隠れ家に、家族が一度に安全に転移できる魔道具を用意しています。
「凄まじい努力をしたようだな」
「はい、レナードには頭が下がります」
映像の魔道具を通じてみているので、とても限られた映像です。
ですがその映像に映し出されるレナードとドルイガ殿の戦闘は、ほぼ互角です。
私達が集めた情報では、レナードの方が明らかに弱かったはずです。
こんな短期間に縮められる実力差ではなかったはずです。
それが、互角に打ち合っているのです!
「ここでレナードが勝つようなら、皇国との工作は隠蔽しなければいけないな」
「その方が苦労のし甲斐がありますよ、貴男」
「ですが父上、母上。
互角の方が困ります。
レナードでもドルイガでも構いません。
確実に勝ってくれた方が、安全に全てを賭ける事ができます」
父上も母上も方針転換を口にしています。
デリラもそうなんですが、口にする事が情け容赦ありません。
私の安全を最優先にした考え方なのでしょうが、レナードの努力が台無しです。
「ねえデリラ。
少しはレナードの努力を認めてあげたら」
「それは無理です、御姉様。
レナードが本当に御姉様の事を愛しているのなら、一旦ドルイガに奪われても、確実に勝てるようになるまで待つべきでした。
それを中途半端な状態で戦うなんて、最低最悪です。
ここでドルイガを斃せなかったら、ドルイガも命懸けで修行するでしょう。
そうなったら、レナードがどれほど努力しても、二人の戦いは互角のまま平行線です。
そんな事になったら、ハント男爵家は方針が定まらず、御姉様が危険な目に会う事になってしまいます」
私の事を最優先に考えるデリラらしい結論です。
父上も母上も同じ考えのようです。
ですが私は、レナードの短慮を少し嬉しく思っています。
私をドルイガ殿の手に渡したくないという執着が嫌なら、デリラの想いも嫌になっていたでしょう。
私は妹としてデリラを心から愛していますし、レナードも幼馴染として貴族の結婚相手として好ましく思っています。
出来る事ならレナードに勝ってもらいたいのです。
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