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第一章

第3話:愛人探し

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 私は本気で愛人を探そうと知恵を絞って考えました。
 自分が惨めにならない相手、恥をかかない相手、そう考えると愛人を探すのも一苦労ですが、意趣返しのためですから止める事などできません。
 寝食を忘れて探したとまでは言いませんが、あれほど持て余していた時間、退屈な時間が無くなるくらいには真剣に考えました。

「私ももう十八歳です、そろそろ社交デビューしていいのではありませんか?
 ヘレス侯爵家の正室として、ピエールの役に立つように社交しなければいけないのではありませんか?」

 私はご機嫌伺いに来たピエールの家臣、後宮総取締のライラに話してみました。
 後宮、これもおかしな話です。
 確かに貴族が多くの側室を持つのは普通の事ですが、普通王家から正妻をもらったら、側室を持つのは遠慮するモノです。
 ピエールも最初は王家に遠慮して後宮を設けようとはしませんでした。
 まあ、外に側室を置いていますから、形だけの遠慮です。

 それを、両親と国王と王妃がピエールに配慮して、私の住処として後宮を整えて欲しいと命じたのですから、笑ってしまいます。
 自分の娘を嫁がせておいて、側室を置けという事で、君臣の間が上手く行っているように周辺諸国に見せかけようとしたのです。
 私の寝室には一度も訪れず、外の妾宅で寝泊まりしているのは公然の事です。
 周辺諸国はビスコー王家を嘲笑っていたことでしょう。
 ただ、今では、同情しているかもしれませんね。

「それは大変結構な事でございます。
 侯爵閣下が奥方様の心身を御心配され、再三再四好きになさるように申し出ておられるにもかかわらず、ことごとく邪魔する者がございますからね。
 承りました、このライラが御約束いたしましょう。
 では早速王都に向かう準備をさせていただきます」

 私が言い出した事ではありますが、ここまで露骨に領地から追い出しにかかられては、少々腹が立ってしまいます。
 確かに私は、王家がピエールに押し付けた厄介者です。
 忠烈無比のピエールの家臣から見れば、主君が愛する人を正室にできないようにした、極悪人にしか見えないでしょう。
 ですが、私だって好きでここに来たわけではないのです。
 こんなに惨めな思いなど、私だってしたくはないのです。

「いえ、王都ではなくこの城で社交がやりたいわ。
 私が王侯貴族と会えたのは、この城での婚約披露宴と結婚披露宴だけだわ。
 それに、私は八歳で王都を離れたから、王都に行っても知り合いがいないの。
 それでは寂し過ぎるから、この城で社交をやりたいわ」

 つい、意地悪な事を言ってしまいました。
 王都で社交をしようとしても、ピエールは来てくれないでしょう。
 愛人を探すのならその方が好都合でしょうが、それでは私が惨め過ぎます。
 せめて社交デビューだけは、ピエールに横にいてもらわないと。
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