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第二章

第77話:多頭魔物

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 真田君達が魔物を狩っている。
 もう直ぐ日本に帰れる喜びからか、それとも異世界を離れる寂寥感からか、力を抑える事なく思いっきり暴れ回っている。
 確かに斃しても黒い瘴気になって何も残さず消滅する魔物は、ゲームのように何の罪悪感もなく斃す事ができるから、とても痛快だ。
 真田君達のように理性と優しさを持つ人間でも、罪悪感を感じずに斃せる。

 大陸にある大半の国は竜帝国の属国になっているから、俺が責任を持って魔物を狩っているから、それほど強大な魔物は残っていない。
 決してサクラが本能のままに狩りつくしたわけではない。
 それにどれほど狩っても次々と魔物が湧いてくる。
 今回真田君達に魔物を狩っている場所は、前回魔物を狩ってから1番日数が経っている森だった。
 
「そいつは俺が狩らしてもらうぜ、一朗」

 本多君がキングアイスタイガーに匹敵する大きさの魔物に突っ込んで行く。
 心優しく責任感のある真田君は背後についてフォローをしている。
 中小の魔物は矢沢さんが嬉々として範囲魔術で皆殺しにしている。
 霧隠さんは少し投げやりな感じだが、それでも何時でも回復魔術をかけられるように準備をしている。

 俺がどうしているかといえば、大型の火竜に憑依して4人を見守っている。
 今回の狩りはヴァロア王国から遠く離れているので、ずっと真田君達を護っていた直衛達はついてきていない。
 真田君達なら4人でも大丈夫だとは思うのだが、心配性な所のある俺には、彼らだけで狩りをさせる気にはなれなかった。
 そこで竜に憑依して不測の事態に備えることにしたのだ。

「ギャアアアアアオ」

 真田君達の顔に満足感が浮かびだした頃、不意に森が陥没して、全長50メートルほどの巨大な魔物が現れた。
 亀のような形だが、扁平の身体からは8つの頭と8つの脚が生えているのだ。
 しかもその頭から毒の瘴気を吐いてきた。
 俺は即座に斃す態勢に整えたのだが、魔物のブレスを見事に躱した真田君と本多君の不敵な表情を見て、グッと我慢した。
 2人は強敵の登場に喜んでいたのだ。

「ちぃ、突いても斬って全く弱らねぇぞ」

 本多君が吐き捨てるように言うが、顔はまだ笑っている。

「歯ごたえのある魔物に出会えてよかったじゃないか」

 真田君も同じように不敵な笑みを浮かべている。
 全力で戦えるんのがうれしいようだ。

「2人とも魔力回復ポーションを飲んでおきなさいよ。
 最初から飛ばし過ぎて魔力が少ないんでしょう。
 何かあってもみなみは知らないからね」

 霧隠さんが呆れたような口調で注意した。

「私が注意を引くから、その間に一気飲みしなさい」

 先に最上級魔力回復ポーションを一気飲みした矢沢さんが、1体しかいない敵に対して最大級の範囲魔術を放った。
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