よい異世界召喚に巻き込まれましたが、殺された後でした。

克全

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第二章

第68話:報復

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 腹が立つ、腹が立つ、腹が立つ、腹が立つ!
 リード伯爵の独断専行は許し難い。
 俺が1番苦手な責任を背負わせようとしている事は、絶対に許せない。
 本当なら責任を放棄して北方に引き籠ってやるところだ。
 全責任をリード伯爵に押し付けて、知らんぷりしてやるところだ。

 だが、リード伯爵の気持ちが分かってしまうのだ。
 できるだけ多くの人間を助けたいという想いが分かってしまうのだ。
 俺の怒りを買って殺されることになっても、敵だったコンラディン王国の民まで助けようとしている心根が分かってしまうのだ。
 しかも、助けてあげたいと思っていたヴィクトリア王女が、うれし涙を流すのを見てしまったら、無責任に逃げだす事などできなくなってしまった。

 だからといって、やられっぱなしで終わる気はない。
 人間嫌いの元対人恐怖症であろうと、交渉すべき時には頑張る。
 実際問題、リード伯爵やヴィクトリア王女とは多少は交渉できた。
 相手が男のアーサー王の変わっても交渉できるはずだ。
 最悪直接会わずに、遠くから心話で交渉すれば顔を見なくてすむ。
 家臣達が居並ぶ場に行かなくてもいい。
 うん、そうしよう、それがいい。

(アーサー王、リード伯爵が我との約束を破って一方的に言霊を変えさせた。
 この裏切りは本来なら万死に値するところだ。
 だが、彼女が多くの民を助けたいと思ってやった事だと理解はしている。
 だからリード伯爵を殺す事も、主人であるアーサー王を殺す事もしない。
 だが全ての責任は取ってもらう。
 今日からリード伯爵は我の家臣になってもらう。
 我の家臣となって、領地を治めてもらう。
 逆らう事は絶対に許さぬ。
 この事は古代氷竜アリステア殿とも話しあって納得してもらっている。
 よいな、分かったな、直ぐに人の世界の手続きを終わらせよ)

 俺は一方的に言い放ってやった。
 アーサー王の返事を聞くこともなく、城外から言うだけ言ってやった。
 後は好きにすればいい。
 逆らいたければ逆らえばいい。
 逆らうならもう援助をしないだけだ。
 攻め込んできたら睡魔の魔術で死ぬまで眠らせてやるだけだ。
 まあ、絶対に逆らわないのは分かっているけど。

 これで少しは怒りの虫が収まる。
 自由闊達で武に生きるリード伯爵が1番苦手な、政治をやらせるのだ。
 苦手で嫌いな政治で俺を騙したのだから、リード伯爵は一生政治に苦しめばいい。
 俺が支配下に置いた元コンラディン王国領は全部リード伯爵に統治させる。
 問題は残ったコンラディン王家直轄領と王都だな。
 
 あれだけ喜びの涙を流していたんだから、これ以上政治をやらせるのは酷だ。
 責任感から逃れたい気持ちは、俺が誰よりも分かっている。
 さっさと両親を目覚めさせてやろう。
 別にリード伯爵の軍が王家直轄領を通過する前でも構わない。
 直ぐに治しに行ってやろう。
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