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第二章
第58話:巫女
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(ウー、ニャッ、ウー、ニャッ、ウー)
俺は平身低頭サクラ母さんに謝った。
俺は最初サクラ母さんが孤児に無理を言ったのだと勘違いしていた。
だがそれは俺が勝手に思い込んでいただけだった。
孤児の子がここに来たのは彼女の強い意思だったのだ。
それなのに、俺は事情も聴かずにサクラを頭から叱ってしまった。
ずっと護ってもらっていたのに、主人顔をして叱ってしまったのだ。
「ごめんなさい、サクラ母さん。
全部俺が悪かったです、この通りです、許してください」
(ウー、ニャッ、ニャッ、ニャッ、ニャッ)
まだ少しご機嫌斜めだが、薬草を混ぜたマグロのすり身で許してくれた。
これから1カ月は食事に細心の注意を払わなければいけない。
マタタビと同じ効果のある薬草をどれくらい混ぜるかが大切だ。
サクラはたくさん混ぜてくれと言うが、身体の負担になってはいけない。
猫の身体で食べるのか、それともキングアイスタイガーの身体で食べるかで変わってくるが、両方の準備をしておこう。
不滅の存在になったとはいえ、油断してはいけない。
(ニャッ、ニャッ、ニャッ、ニャッ、ニャーーーン)
サクラ母さんの話しでは、俺達がこの世界に来る前は、1番年長の孤児達は、春になったら孤児院を出て1人で生きていく予定だったのだ。
そして全員が魔物と戦う軍に志願していたらしい。
家族を魔物に殺されて孤児になったのだから、当然の考えだと思う。
だが、北方に古代氷竜アリステアが現れて、ヴァロア王国と対等の軍事交易条約を締結した上に、王家直轄領を割譲することになって話が大きく変わったのだ。
国家間で結ばれる普通の領地割譲条約だと、住民も一緒に引き渡される。
俺とパーカー準男爵の領地は微妙だが、アリステアが強く言い張ったら竜国の領地にされるのは俺にも予測できる。
そうなると孤児達も竜国の民となってしまう。
春になったら孤児院を出て家族の仇を討とうとしていた孤児達には、とても受け入れられない話だろう。
現に孤児の代表はサクラに親の敵討ちがしたいとお願いしたらしい。
そしてサクラもそれを認めて、魔物と戦えるようにすると約束したらしい。
だが、サクラはとても母性が強いから、信用できないこの世界に人間に大切な子供を任せるはずがなく、最初から俺に預けるつもりだったのだ。
そして俺が飛竜の屍に憑依して魔物と戦った今が好機と判断して、この子を連れてきたという訳だ。
だが「後は任せるね」と言って直ぐに帰らないで欲しいな。
いきなり預けられても、何も考えていなかったし、準備もできていないのだ。
まあ、さっき考えていた通訳になってもらうのが1番いいかもしれない。
この子なら俺が竜に憑依しているとは想像もしないだろうから、正体がバレる心配が全くない。
(じゃあ、最初に俺の代わりに領民に話してもらおうか。
今日から君は俺の巫女で、俺の言葉を領民に伝えるのが仕事だからね)
俺は心話で少女に想いを伝えた。
俺は平身低頭サクラ母さんに謝った。
俺は最初サクラ母さんが孤児に無理を言ったのだと勘違いしていた。
だがそれは俺が勝手に思い込んでいただけだった。
孤児の子がここに来たのは彼女の強い意思だったのだ。
それなのに、俺は事情も聴かずにサクラを頭から叱ってしまった。
ずっと護ってもらっていたのに、主人顔をして叱ってしまったのだ。
「ごめんなさい、サクラ母さん。
全部俺が悪かったです、この通りです、許してください」
(ウー、ニャッ、ニャッ、ニャッ、ニャッ)
まだ少しご機嫌斜めだが、薬草を混ぜたマグロのすり身で許してくれた。
これから1カ月は食事に細心の注意を払わなければいけない。
マタタビと同じ効果のある薬草をどれくらい混ぜるかが大切だ。
サクラはたくさん混ぜてくれと言うが、身体の負担になってはいけない。
猫の身体で食べるのか、それともキングアイスタイガーの身体で食べるかで変わってくるが、両方の準備をしておこう。
不滅の存在になったとはいえ、油断してはいけない。
(ニャッ、ニャッ、ニャッ、ニャッ、ニャーーーン)
サクラ母さんの話しでは、俺達がこの世界に来る前は、1番年長の孤児達は、春になったら孤児院を出て1人で生きていく予定だったのだ。
そして全員が魔物と戦う軍に志願していたらしい。
家族を魔物に殺されて孤児になったのだから、当然の考えだと思う。
だが、北方に古代氷竜アリステアが現れて、ヴァロア王国と対等の軍事交易条約を締結した上に、王家直轄領を割譲することになって話が大きく変わったのだ。
国家間で結ばれる普通の領地割譲条約だと、住民も一緒に引き渡される。
俺とパーカー準男爵の領地は微妙だが、アリステアが強く言い張ったら竜国の領地にされるのは俺にも予測できる。
そうなると孤児達も竜国の民となってしまう。
春になったら孤児院を出て家族の仇を討とうとしていた孤児達には、とても受け入れられない話だろう。
現に孤児の代表はサクラに親の敵討ちがしたいとお願いしたらしい。
そしてサクラもそれを認めて、魔物と戦えるようにすると約束したらしい。
だが、サクラはとても母性が強いから、信用できないこの世界に人間に大切な子供を任せるはずがなく、最初から俺に預けるつもりだったのだ。
そして俺が飛竜の屍に憑依して魔物と戦った今が好機と判断して、この子を連れてきたという訳だ。
だが「後は任せるね」と言って直ぐに帰らないで欲しいな。
いきなり預けられても、何も考えていなかったし、準備もできていないのだ。
まあ、さっき考えていた通訳になってもらうのが1番いいかもしれない。
この子なら俺が竜に憑依しているとは想像もしないだろうから、正体がバレる心配が全くない。
(じゃあ、最初に俺の代わりに領民に話してもらおうか。
今日から君は俺の巫女で、俺の言葉を領民に伝えるのが仕事だからね)
俺は心話で少女に想いを伝えた。
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