60 / 83
第二章
第55話:勘違い
しおりを挟む
俺は飛竜の屍に憑依すると、空を飛んで目的地に向かった。
古代氷竜アリステアが人間の身体を見守ってくれているので何の心配もない。
問題があるとすれば、俺が高所恐怖症だという事だけだ。
早く目的の貴族領に行かなければいけないので、しかたなく飛竜の屍を選んだが、高く飛ぶのが怖いので、地上すれすれを移動するしかなかった。
超高速移動ほど早くはないが、早馬とは比較にならないくらい高速で移動することができるので、真田君達が我慢の限界を超える前に現場に着くことができた。
俺が現場で最初にやった事は、魔物をぶち殺す事だった。
問題になっている貴族など何時でも殺すことができる。
貴族を殺している間に、民が魔物に殺されてしまう方が大問題だからだ。
俺が直接魔物と戦うのはこれが初めてだった。
多少は心理的に抵抗があるかと思ったが、全く問題なく斃せた。
俺の竜体が気に食わないのか、ワラワラ集まってくる魔物をひたすら叩き潰した。
咬み殺すのは心理的に気持ち悪かったので、身体に比べれば比較的小さく短い両腕だけで斃した。
だが両腕だけでは無数に集まってくる魔物に対処しきれず、人間の身体の時には使った事のない、尻尾も使って魔物をぶち殺すことにした。
最初はぎこちない使い方だったが、何度も使っているうちに徐々に慣れて来て、両腕よりもはるかに多くの魔物を1度にぶち殺せるようになった。
腕は竜体によじ登ってくる魔物にだけ使うようにして、尻尾で薙ぎ払い、両足で踏み潰す方が効率的だと分かったのは、2時間ほど魔物を殺し続けた後だった。
結局、目的地周辺の魔物をあらかた殺すのに半日もかかってしまった。
命の危険を感じるような事は全くなかったが、竜体に無数の魔物が這い上ってくるのは、虫唾が走るくらい気持ちが悪かった。
頭だけで分かっていた真田君達の苦労が、僅かだが本当に分かった気がした。
1度手助けするのも2度手助けするのも、そう変わりがないと思うので、これからは定期的に魔物潰しをしてあげる心算だが、先にやらなければいけない事がある。
俺は魔物を斃してからこの地の領主がいる城を襲った。
色々考えたのだが、何も言わずにひたすら城を壊した。
下手に話すと古代氷竜アリステアとの関係や、ヴァロア王国との関係を疑われてしまうかもしれないので、何も言わずに壊しまくった。
中心にある城を半分壊したころに、領主と家臣達が逃げだした。
俺は結局ヘタレで、人間を殺すことができなかった。
見えない所から遠距離魔術を放てば殺せたかもしれないが、竜に憑依しているとはいえ、手足で直接人間を殺すのは心理的に抵抗感が強すぎた。
そこまではよかったのだが、問題は領民だった。
「おお、古代氷竜アリステア様じゃ。
古代氷竜アリステア様が私達を哀れに想い助けに来て下れたぞ」
「ありがとうございます、アリステア様」
「私達も北の楽園にお連れください」
「子供達が腹を空かせております、どうか食べ物をお恵み下さい」
こんな小さい身体の飛竜なのに、アリステアと勘違いしている。
これはどうすればいいのだろうか……
古代氷竜アリステアが人間の身体を見守ってくれているので何の心配もない。
問題があるとすれば、俺が高所恐怖症だという事だけだ。
早く目的の貴族領に行かなければいけないので、しかたなく飛竜の屍を選んだが、高く飛ぶのが怖いので、地上すれすれを移動するしかなかった。
超高速移動ほど早くはないが、早馬とは比較にならないくらい高速で移動することができるので、真田君達が我慢の限界を超える前に現場に着くことができた。
俺が現場で最初にやった事は、魔物をぶち殺す事だった。
問題になっている貴族など何時でも殺すことができる。
貴族を殺している間に、民が魔物に殺されてしまう方が大問題だからだ。
俺が直接魔物と戦うのはこれが初めてだった。
多少は心理的に抵抗があるかと思ったが、全く問題なく斃せた。
俺の竜体が気に食わないのか、ワラワラ集まってくる魔物をひたすら叩き潰した。
咬み殺すのは心理的に気持ち悪かったので、身体に比べれば比較的小さく短い両腕だけで斃した。
だが両腕だけでは無数に集まってくる魔物に対処しきれず、人間の身体の時には使った事のない、尻尾も使って魔物をぶち殺すことにした。
最初はぎこちない使い方だったが、何度も使っているうちに徐々に慣れて来て、両腕よりもはるかに多くの魔物を1度にぶち殺せるようになった。
腕は竜体によじ登ってくる魔物にだけ使うようにして、尻尾で薙ぎ払い、両足で踏み潰す方が効率的だと分かったのは、2時間ほど魔物を殺し続けた後だった。
結局、目的地周辺の魔物をあらかた殺すのに半日もかかってしまった。
命の危険を感じるような事は全くなかったが、竜体に無数の魔物が這い上ってくるのは、虫唾が走るくらい気持ちが悪かった。
頭だけで分かっていた真田君達の苦労が、僅かだが本当に分かった気がした。
1度手助けするのも2度手助けするのも、そう変わりがないと思うので、これからは定期的に魔物潰しをしてあげる心算だが、先にやらなければいけない事がある。
俺は魔物を斃してからこの地の領主がいる城を襲った。
色々考えたのだが、何も言わずにひたすら城を壊した。
下手に話すと古代氷竜アリステアとの関係や、ヴァロア王国との関係を疑われてしまうかもしれないので、何も言わずに壊しまくった。
中心にある城を半分壊したころに、領主と家臣達が逃げだした。
俺は結局ヘタレで、人間を殺すことができなかった。
見えない所から遠距離魔術を放てば殺せたかもしれないが、竜に憑依しているとはいえ、手足で直接人間を殺すのは心理的に抵抗感が強すぎた。
そこまではよかったのだが、問題は領民だった。
「おお、古代氷竜アリステア様じゃ。
古代氷竜アリステア様が私達を哀れに想い助けに来て下れたぞ」
「ありがとうございます、アリステア様」
「私達も北の楽園にお連れください」
「子供達が腹を空かせております、どうか食べ物をお恵み下さい」
こんな小さい身体の飛竜なのに、アリステアと勘違いしている。
これはどうすればいいのだろうか……
1
お気に入りに追加
474
あなたにおすすめの小説
最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした
新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。
「もうオマエはいらん」
勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。
ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。
転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。
勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)
転生者は冒険者となって教会と国に復讐する!
克全
ファンタジー
東洋医学従事者でアマチュア作家でもあった男が異世界に転生した。リアムと名付けられた赤子は、生まれて直ぐに極貧の両親に捨てられてしまう。捨てられたのはメタトロン教の孤児院だったが、この世界の教会孤児院は神官達が劣情のはけ口にしていた。神官達に襲われるのを嫌ったリアムは、3歳にして孤児院を脱走して大魔境に逃げ込んだ。前世の知識と創造力を駆使したリアムは、スライムを従魔とした。スライムを知識と創造力、魔力を総動員して最強魔獣に育てたリアムは、前世での唯一の後悔、子供を作ろうと10歳にして魔境を出て冒険者ギルドを訪ねた。
アルファポリスオンリー
勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。
克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。
追放された回復術師は、なんでも『回復』できて万能でした
新緑あらた
ファンタジー
死闘の末、強敵の討伐クエストを達成した回復術師ヨシュアを待っていたのは、称賛の言葉ではなく、解雇通告だった。
「ヨシュア……てめえはクビだ」
ポーションを湯水のように使える最高位冒険者になった彼らは、今まで散々ポーションの代用品としてヨシュアを利用してきたのに、回復術師は不要だと考えて切り捨てることにしたのだ。
「ポーションの下位互換」とまで罵られて気落ちしていたヨシュアだったが、ブラックな労働をしいるあのパーティーから解放されて喜んでいる自分に気づく。
危機から救った辺境の地方領主の娘との出会いをきっかけに、彼の世界はどんどん広がっていく……。
一方、Sランク冒険者パーティーはクエストの未達成でどんどんランクを落としていく。
彼らは知らなかったのだ、ヨシュアが彼らの傷だけでなく、状態異常や武器の破損など、なんでも『回復』していたことを……。
異世界で魔法が使えるなんて幻想だった!〜街を追われたので馬車を改造して車中泊します!〜え、魔力持ってるじゃんて?違います、電力です!
あるちゃいる
ファンタジー
山菜を採りに山へ入ると運悪く猪に遭遇し、慌てて逃げると崖から落ちて意識を失った。
気が付いたら山だった場所は平坦な森で、落ちたはずの崖も無かった。
不思議に思ったが、理由はすぐに判明した。
どうやら農作業中の外国人に助けられたようだ。
その外国人は背中に背負子と鍬を背負っていたからきっと近所の農家の人なのだろう。意外と流暢な日本語を話す。が、言葉の意味はあまり理解してないらしく、『県道は何処か?』と聞いても首を傾げていた。
『道は何処にありますか?』と言ったら、漸く理解したのか案内してくれるというので着いていく。
が、行けども行けどもどんどん森は深くなり、不審に思い始めた頃に少し開けた場所に出た。
そこは農具でも置いてる場所なのかボロ小屋が数軒建っていて、外国人さんが大声で叫ぶと、人が十数人ゾロゾロと小屋から出てきて、俺の周りを囲む。
そして何故か縄で手足を縛られて大八車に転がされ……。
⚠️超絶不定期更新⚠️
最弱スキルも9999個集まれば最強だよね(完結)
排他的経済水域
ファンタジー
12歳の誕生日
冒険者になる事が憧れのケインは、教会にて
スキル適性値とオリジナルスキルが告げられる
強いスキルを望むケインであったが、
スキル適性値はG
オリジナルスキルも『スキル重複』というよくわからない物
友人からも家族からも馬鹿にされ、
尚最強の冒険者になる事をあきらめないケイン
そんなある日、
『スキル重複』の本来の効果を知る事となる。
その効果とは、
同じスキルを2つ以上持つ事ができ、
同系統の効果のスキルは効果が重複するという
恐ろしい物であった。
このスキルをもって、ケインの下剋上は今始まる。
HOTランキング 1位!(2023年2月21日)
ファンタジー24hポイントランキング 3位!(2023年2月21日)
アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~
明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!!
『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。
無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。
破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。
「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」
【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?
異世界ハズレモノ英雄譚〜無能ステータスと言われた俺が、ざまぁ見せつけながらのし上がっていくってよ!〜
mitsuzoエンターテインメンツ
ファンタジー
【週三日(月・水・金)投稿 基本12:00〜14:00】
異世界にクラスメートと共に召喚された瑛二。
『ハズレモノ』という聞いたこともない称号を得るが、その低スペックなステータスを見て、皆からハズレ称号とバカにされ、それどころか邪魔者扱いされ殺されそうに⋯⋯。
しかし、実は『超チートな称号』であることがわかった瑛二は、そこから自分をバカにした者や殺そうとした者に対して、圧倒的な力を隠しつつ、ざまぁを展開していく。
そして、そのざまぁは図らずも人類の命運を握るまでのものへと発展していくことに⋯⋯。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる