よい異世界召喚に巻き込まれましたが、殺された後でした。

克全

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第二章

第43話:インスリン

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 俺はアリステアに協力してもらって製薬を続けていた。
 最初はサメとクジラの部位単体を原材料に試していが、単体材料だけでは限界があるので、2つ原材料を混ぜ合わせて、完全治癒のポーションの開発を進めていた。
 軟骨と想いを組み合わせる事で、関節症クル病の障害を完治させられた事と、クジラ肝油から各種のビタミン欠乏症に対応できるポーション作れたからだ。

「ニャーーーン、ニャーーーン、ニャーーーン、ニャーーーン」

 心話でサクラから「やって欲しい事があるから直ぐに来て」と呼ばれた。
 キングアイスタイガーに身体では野太い声だが、心話は元の猫声だ。
 俺としては直接野太い声で話しかけられるより、元の猫声の方がうれしい。
 そんな事は心の中に止めて、製薬など後回しにして直ぐに孤児院に駆けつけた。
 サクラからお願いされたら断る選択肢はない。

「ニャオ、ニャオォ、ニャオ、ニャオォ、ニャオ、ニャオォ」

 サクラが言うには、子供が病気なのだそうだ。
 しかもその病気を治す薬を創れと言う。
 サクラなら自分で治してあげられるし、俺も魔術で治せる。
 それをわざわざ俺に薬を創れと言うのは、俺が製薬に力を入れているから、やる気が出るように協力をしてくれているのだろう。

 その親心には応えなければいけないので、病気だと言われているこの症状を直接間接に聞いてまわったのだが、どう考えても糖尿病だった。
 患者さんは、貧しいこの国でも特に恵まれない立場だった孤児の1人だ。
 食べ過ぎによる2型糖尿病のはずがない。
 どう考えても先天的な膵臓の異常か、ウイルス感染などから後天的に膵臓に異常をきたした、1型糖尿病だと思われた。

 俺は直ぐにクジラの膵臓とサメの膵臓を原材料にインスリンを創り出した。
 インスリンを作るだけならとても簡単だった。
 だが、今俺が創り出そうとしているのは、障害を完治させるポーションだ。
 ならば俺が創り出すべきは、膵臓を完全に元通りに治すポーションだ。
 だから今回も確認の意味もあって、膵臓が完璧に健康な状態に戻るように思い願って製薬も魔術を使ってみた。

 それなりの製薬レベルと魔力は必要だが、膵臓完治ポーションの製薬に成功した。
 ヴァロア王国が豊かな国なら、2型糖尿病患者も金持ちも多いから、膵臓完治ポーションも高値で数多く売れるだろう。
 だが数は少なくても膵臓完治ポーションが必要な人はいるので、そんな人のためにそれなりの数のポーションを作った。
 
 俺はそのポーションを使って弟な完治させた。
 サクラが大切に育てている孤児は、全員俺の弟妹なのだ。
 もちろん膵臓完治ポーションは事前に鑑定魔術で効能を確認してある。
 
「パーカー準男爵、この2つの薬はこの国ではそれほど必要とされないですが、豊かな国では高値で数多く売れるでしょう。
 ただし、治す事のできる患者さんは限られています。
 不要な方に売るのは詐欺と同じです。
 私が説明した症状を確かめたうえで処方してください」

「分かりました、お任せください、ネコヤシキ様」

 俺は狭心症治療ポーション、高脂血症治療ポーション、膵臓完治ポーションを輸出用に王都に送った。
 もちろん委託販売用なので、売れるまで代価はもらわない。
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