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第一章
第30話:食欲
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「うっまああああい。
美味いのう、本当に美味い。
こんな美味い料理を食べたのは、生まれて初めてだ。
もっと作ってくれ、揚げたては舌が焼けるほど美味いから、どんどん脂で揚げてくれ、ネコヤシキ殿」
古代氷竜アリステア殿が、心から俺の料理を称賛してくれているのは分かる。
50000年生きて来て1番美味しいと言ってくれるのもうれしい。
だが、人間の姿では沢山食べれないと嘘を言うのは止めて欲しい。
揚げても揚げても満腹してくれず、ずっと食べ続けている。
これが1度に大量に作れる揚げ物でなかったら、俺が食べられなかった。
揚げ物だから何とか俺も一緒に食べられた。
確かに美味かった。
味が分かるようになってから初めて食べた揚げ物だ。
美味しくないわけがないのだが、それでも感動するくらい美味しかった。
竜田揚げとクジラカツは最初から考えていたが、2種を揚げている途中でメンチカツも食べたくなって、孤児院用に大量に用意していたミンチにライ麦パン粉にまぶしてあげたのだが、とんでもなく美味しかった。
俺が手持ちする食料の中では、クジラの赤身と脂身は1番大量にある。
脂身で揚げ脂を作り、赤身と脂身を混ぜて美味しいミンチを作る。
ハンバーグと同じくらい簡単に早く大量に作ることができる。
人数の多い孤児院にはもってこいの料理だ。
脂でカロリーが補給できるなら、冬が厳しいと聞く北方にはうってつけの料理で、早速孤児院の子達にも作ってあげよう。
「のう、ネコヤシキ殿。
物は相談なのじゃが、この料理を毎日食べさせてはもらえんか。
代価にこの村の人々が使う暖炉の火は全部我の魔力で賄おうではないか。
悪い話しではないと思うのだが、いかがだろうか。
いや、なにもネコヤシキ殿とサクラ殿のクジラを使う事はない。
我が狩ったクジラ肉を村人に提供するから、な、いいであろう」
確かに悪い話しではない。
いや、むしろ俺にはこれほど都合のいい話はない。
本当なら俺が統治しなければいけない村を、アリステアが統治してくれるのだ。
苦手な対人交渉をアリステアがしてくれるのだ。
俺が村人に求める事があれば、アリステアに言えばいい。
古代氷竜に逆らう馬鹿な人間はこの世界には誰1人いないだろう。
などと考えていた俺が馬鹿だったと思い知ったのは、直ぐ後だった。
竜田揚げや唐揚げ、クジラカツやメンチカツを作ろうと思えば、穀物を粉末にしたモノやパンが必要なのだが、北方に余分な穀物など1粒もない。
穀物を手に入れようと思ったら、代価を渡して購入するしかないのだが、貧しい北方に民には代価にできるモノなど何もない。
普通なら諦めるしかないのだが、今は彼らの後ろにアリステアがいる。
そもそも穀物が必要なのは、アリステアが揚げ物を食べたがったのが原因なのだ。
揚げ物を作るのに必要な穀物を手に入れるために、代価に莫大な量を持っているクジラ肉と塩を渡すのは当然の事だった。
それと、俺は人間の虚栄心と防衛を本能を忘れてしまっていた。
今まで貧しく弱い立場だった北方の人達は、古代氷竜アリステアに選ばれた事を誇りに思い、自慢しないはずがなかったのだ。
誰かに理不尽に見下されたり襲われたりしないように、自分達の後ろには古代氷竜アリステアがいると言って、御守りに使う事も思いつかなかった。
それだけではなく、北方からほんの少し南に行っただけの村々も貧しかったのだ。
その事が直ぐに大問題になってしまったのだ。
美味いのう、本当に美味い。
こんな美味い料理を食べたのは、生まれて初めてだ。
もっと作ってくれ、揚げたては舌が焼けるほど美味いから、どんどん脂で揚げてくれ、ネコヤシキ殿」
古代氷竜アリステア殿が、心から俺の料理を称賛してくれているのは分かる。
50000年生きて来て1番美味しいと言ってくれるのもうれしい。
だが、人間の姿では沢山食べれないと嘘を言うのは止めて欲しい。
揚げても揚げても満腹してくれず、ずっと食べ続けている。
これが1度に大量に作れる揚げ物でなかったら、俺が食べられなかった。
揚げ物だから何とか俺も一緒に食べられた。
確かに美味かった。
味が分かるようになってから初めて食べた揚げ物だ。
美味しくないわけがないのだが、それでも感動するくらい美味しかった。
竜田揚げとクジラカツは最初から考えていたが、2種を揚げている途中でメンチカツも食べたくなって、孤児院用に大量に用意していたミンチにライ麦パン粉にまぶしてあげたのだが、とんでもなく美味しかった。
俺が手持ちする食料の中では、クジラの赤身と脂身は1番大量にある。
脂身で揚げ脂を作り、赤身と脂身を混ぜて美味しいミンチを作る。
ハンバーグと同じくらい簡単に早く大量に作ることができる。
人数の多い孤児院にはもってこいの料理だ。
脂でカロリーが補給できるなら、冬が厳しいと聞く北方にはうってつけの料理で、早速孤児院の子達にも作ってあげよう。
「のう、ネコヤシキ殿。
物は相談なのじゃが、この料理を毎日食べさせてはもらえんか。
代価にこの村の人々が使う暖炉の火は全部我の魔力で賄おうではないか。
悪い話しではないと思うのだが、いかがだろうか。
いや、なにもネコヤシキ殿とサクラ殿のクジラを使う事はない。
我が狩ったクジラ肉を村人に提供するから、な、いいであろう」
確かに悪い話しではない。
いや、むしろ俺にはこれほど都合のいい話はない。
本当なら俺が統治しなければいけない村を、アリステアが統治してくれるのだ。
苦手な対人交渉をアリステアがしてくれるのだ。
俺が村人に求める事があれば、アリステアに言えばいい。
古代氷竜に逆らう馬鹿な人間はこの世界には誰1人いないだろう。
などと考えていた俺が馬鹿だったと思い知ったのは、直ぐ後だった。
竜田揚げや唐揚げ、クジラカツやメンチカツを作ろうと思えば、穀物を粉末にしたモノやパンが必要なのだが、北方に余分な穀物など1粒もない。
穀物を手に入れようと思ったら、代価を渡して購入するしかないのだが、貧しい北方に民には代価にできるモノなど何もない。
普通なら諦めるしかないのだが、今は彼らの後ろにアリステアがいる。
そもそも穀物が必要なのは、アリステアが揚げ物を食べたがったのが原因なのだ。
揚げ物を作るのに必要な穀物を手に入れるために、代価に莫大な量を持っているクジラ肉と塩を渡すのは当然の事だった。
それと、俺は人間の虚栄心と防衛を本能を忘れてしまっていた。
今まで貧しく弱い立場だった北方の人達は、古代氷竜アリステアに選ばれた事を誇りに思い、自慢しないはずがなかったのだ。
誰かに理不尽に見下されたり襲われたりしないように、自分達の後ろには古代氷竜アリステアがいると言って、御守りに使う事も思いつかなかった。
それだけではなく、北方からほんの少し南に行っただけの村々も貧しかったのだ。
その事が直ぐに大問題になってしまったのだ。
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