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第一章
第18話:アリステアの変心
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館には一瞬で戻ることができた。
幽体はとても便利な存在で、強く想った場所に超高速移動できる。
それは空間を飛び超える転移とは違って、本当の意味で信じられないくらの速さで移動するのだと理解できた。
まあ、そんな事はどうでもいい事で、早く移動できるなら何でもいい。
それがサクラ流の考え方だ。
古代氷竜の中で魂が溶け合った影響か、サクラの考え方に近づいた気がする。
そのお陰か、以前よりも心が軽い気がする。
心だけでなく、何をするのも億劫で身体が鉛のように重かったのだが、そんな重みをあまり感じなくなっている。
そんな今までとは少し違う俺が最初にしたのが、寝小便した跡始末だと言うのは、何かの罰なのだろうか。
寝小便で臭く重くなった毛布と毛皮を、換気を兼ねて木の扉を開けて窓から干して、寝小便でもう使えないくらい濡れてしまった藁ベッドの藁を入れ替える。
村人に寝小便をした毛布と毛皮を見られなければいいのだが。
「ニャオォ」
お腹が空いた、寒いと訴えるサクラのために、消えかけている暖炉に細く刻んだ薪を追加して火勢を強くする。
塩抜きのために前日に煮ておいた干肉を、小さく刻んでサクラに与える。
自分が食べる大麦粥を温めて食べるが、余りの不味さに吐き出しそうになってしまったのを、何とか必死で飲み下す。
こちらに来てから、いや、この十数年、不味いなどと思った事はなかった。
食べ物が美味しいとか不味いとか思えたのは、家族に騙される前だ。
あの時以降、食べる物に味など感じなかった。
まだ死ねない、弟と母を見下せるようになるまでは死ねないという想いだけで、全く味のしない食事を飲み下していた。
サクラと出会ってからは、サクラを残しては死ねないという想いで、味のない食事に栄養も考えるようになった。
サクラがいてくれなかったら、栄養を考えずに病気になって孤独死していたかもしれないと今になって思う。
味を感じることができるようになったのはうれしいが、そうなると大麦粥だけの食事は苦痛になってしまう。
「ニャーーーン、ニャーーーン、ニャーーーン」
味覚が復活しただけでなく、空腹感まで復活してしまい、美味しいモノが食べたいという想いと、麦粥しかないという現実に苦しみ、空腹を抱えてなかなか眠れなかった俺が、ようやくまどろんだ頃にサクラに起こされてしまった。
また幽体離脱して夜の散歩に行こうというお誘いだ。
それも直ぐに古代氷竜の身体に入りたいというお誘いだった。
まあ、幽体のなれば空腹に苦しみがなくなるのでむしろ好都合だ。
それに、1日でも早く子供を産みたいというサクラの気持ちも分かる。
猫の身体ではなく古代竜の身体だから、子猫ではなく卵なのだがな。
だがそれは悪い事だけではない。
猫の身体なら相手となる雄がいなければ子供を産めないが、古代氷竜は単性生殖で卵を産んで子孫を残すことができるのだ。
「申し訳ない、この通りだ、謝るから身体を譲る約束はなかった事にしてくれ」
古代氷竜が巨大な身体を縮めるようにして頭を下げている。
俺には古代氷竜の気持ちが分かるような気がする。
俺もサクラと魂を融合させた事で心と身体が軽くなったのだ。
古代氷竜も同じように心が軽くなり、生きる事に倦んでいた気持ちが変わり、生き続けたいと思うようになったのだろう。
「ウー」
「サクラ、そんなに怒ってやるな。
アリステアも心から悪いと思って頭を下げているんだから、許してやれ。
俺がサクラを若返らせる魔術を考えて、子供を産めるようにするから」
俺がそう言ってサクラをなだめたが、サクラの怒りはなかなか収まらなかった。
「ウー」
「サクラ殿がネコヤシキ殿を護れる身体が欲しいと言うのは分かった。
我と同じ強さとはいかないが、近くにちょうどいい身体が沢山転がっている。
それに憑依してくれれば、生きた古代竜以外なら誰にも負けない。
もしその身体で勝てないような相手がいたのなら、我が助けにいく。
それで許してはもらえないだろうか」
幽体はとても便利な存在で、強く想った場所に超高速移動できる。
それは空間を飛び超える転移とは違って、本当の意味で信じられないくらの速さで移動するのだと理解できた。
まあ、そんな事はどうでもいい事で、早く移動できるなら何でもいい。
それがサクラ流の考え方だ。
古代氷竜の中で魂が溶け合った影響か、サクラの考え方に近づいた気がする。
そのお陰か、以前よりも心が軽い気がする。
心だけでなく、何をするのも億劫で身体が鉛のように重かったのだが、そんな重みをあまり感じなくなっている。
そんな今までとは少し違う俺が最初にしたのが、寝小便した跡始末だと言うのは、何かの罰なのだろうか。
寝小便で臭く重くなった毛布と毛皮を、換気を兼ねて木の扉を開けて窓から干して、寝小便でもう使えないくらい濡れてしまった藁ベッドの藁を入れ替える。
村人に寝小便をした毛布と毛皮を見られなければいいのだが。
「ニャオォ」
お腹が空いた、寒いと訴えるサクラのために、消えかけている暖炉に細く刻んだ薪を追加して火勢を強くする。
塩抜きのために前日に煮ておいた干肉を、小さく刻んでサクラに与える。
自分が食べる大麦粥を温めて食べるが、余りの不味さに吐き出しそうになってしまったのを、何とか必死で飲み下す。
こちらに来てから、いや、この十数年、不味いなどと思った事はなかった。
食べ物が美味しいとか不味いとか思えたのは、家族に騙される前だ。
あの時以降、食べる物に味など感じなかった。
まだ死ねない、弟と母を見下せるようになるまでは死ねないという想いだけで、全く味のしない食事を飲み下していた。
サクラと出会ってからは、サクラを残しては死ねないという想いで、味のない食事に栄養も考えるようになった。
サクラがいてくれなかったら、栄養を考えずに病気になって孤独死していたかもしれないと今になって思う。
味を感じることができるようになったのはうれしいが、そうなると大麦粥だけの食事は苦痛になってしまう。
「ニャーーーン、ニャーーーン、ニャーーーン」
味覚が復活しただけでなく、空腹感まで復活してしまい、美味しいモノが食べたいという想いと、麦粥しかないという現実に苦しみ、空腹を抱えてなかなか眠れなかった俺が、ようやくまどろんだ頃にサクラに起こされてしまった。
また幽体離脱して夜の散歩に行こうというお誘いだ。
それも直ぐに古代氷竜の身体に入りたいというお誘いだった。
まあ、幽体のなれば空腹に苦しみがなくなるのでむしろ好都合だ。
それに、1日でも早く子供を産みたいというサクラの気持ちも分かる。
猫の身体ではなく古代竜の身体だから、子猫ではなく卵なのだがな。
だがそれは悪い事だけではない。
猫の身体なら相手となる雄がいなければ子供を産めないが、古代氷竜は単性生殖で卵を産んで子孫を残すことができるのだ。
「申し訳ない、この通りだ、謝るから身体を譲る約束はなかった事にしてくれ」
古代氷竜が巨大な身体を縮めるようにして頭を下げている。
俺には古代氷竜の気持ちが分かるような気がする。
俺もサクラと魂を融合させた事で心と身体が軽くなったのだ。
古代氷竜も同じように心が軽くなり、生きる事に倦んでいた気持ちが変わり、生き続けたいと思うようになったのだろう。
「ウー」
「サクラ、そんなに怒ってやるな。
アリステアも心から悪いと思って頭を下げているんだから、許してやれ。
俺がサクラを若返らせる魔術を考えて、子供を産めるようにするから」
俺がそう言ってサクラをなだめたが、サクラの怒りはなかなか収まらなかった。
「ウー」
「サクラ殿がネコヤシキ殿を護れる身体が欲しいと言うのは分かった。
我と同じ強さとはいかないが、近くにちょうどいい身体が沢山転がっている。
それに憑依してくれれば、生きた古代竜以外なら誰にも負けない。
もしその身体で勝てないような相手がいたのなら、我が助けにいく。
それで許してはもらえないだろうか」
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