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第一章

第7話:蘇生魔術

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「リサシテイション」

 俺は控室に入るなり蘇生魔術に使う呪文を唱えた。
 ラノベやアニメのご都合主義がここで使えるか試してみた。
 ゲームやラノベやアニメで見聞きした呪文を使う前に、自分が特許や著作権に触れないように考えた呪文を使ってみた。

 サクラを蘇らせたかった。
 俺を護ろうとしてくれたサクラを助けたい、その想いだけだった。
 日本では病気で死にかけていたサクラだ。
 病気なのに、反社のカツアゲから俺を助けようと爪を立て、蹴られて死んでしまったのに、幽体の状態でこの世界に来ても、俺を助けようとしてくれたサクラ。
 サクラを助ける事ができるのなら、どんな手段を使っても助けたかった。

「ニャオォ」

 とても喜んでくれている。
 今まで以上に強く身体をすり寄せて来て甘えてくれる。
 サクラとずっと一緒にいたかったのに、日本では病気で死にかけていた。
 老猫だったから、痛みに苦しんだり元気がなかったりした。
 魔術で不老不死にできるのなら、どんな手段であろうとやってみせる。
 まずは穏当に、頭と心に不老不死をイメージして呪文を唱えた。

「イモータリティ」

「ニャオォ、ニャオォ、ニャオォ、ニャオォ」

 俺の願望なのかもしれないが、サクラがとても元気になったように見える。
 もし本当に不老不死になってくれているのなら、これほどうれしい事はない。
 だが、不老不死には大きな欠点があるという事も読んだ事がある。
 永遠に生き続ける事の苦痛、家族が老いて先に死んでゆく苦痛に耐えられない。
 だが俺にはサクラがいてくれる。
 家族に裏切られた事が原因の人間不信で対人恐怖症なので、大切な人などいない。
 あるのは死の恐怖だけだから、何の問題もない。

「リサシテイション」

「イモータリティ」

 俺はちゃんとイメージを固めてから呪文を唱えた。
 幽体離脱で死んでいる身体を蘇らせる事と、不老不死の事をしっかりと想う。
 間違ったイメージを身体に与えるわけにはいかないから、必死で集中した。

「ステータスオープン」

 もう1度自分のステータスを確かめてみた。
 もうヌイグルミの中に入って動かしているような感覚はない。
 ステータスが変化していないか、固有スキルがなくなっていないか確かめてみたが、英雄である事もレベルが無限である事も変わっていない。

 うれしいような残念なような、微妙な気持ちだ。
 だが自分だけを見てもしかたがない。
 サクラの事も見ておかないと不安だ。
 自分だけが不老不死で、サクラが俺を残して死んでしまったら、永遠の命が本当に重荷になってしまうのだ。

「ステータスオープン」

『氏名:サクラ』
勇者召喚に巻き込まれて異世界にやってくる。
自分を庇って死んだ主人に強い愛情、独占欲を持っている。
後天的に魔術で不老不死を得るも、受けた年齢のままだ。
猫体:基礎/レベル無限
職業:英雄家畜/レベル無限
  :HP/無限/無限
  :MP/無限/無限
注 :英雄家畜職のHPとMPはレベルの3乗
「戦闘スキル」
牙:レベル10
爪:レベル10
「固有スキル」
幽体離脱:レベル無限
憑依  :レベル無限
不滅  :レベル無限
注   :身体と幽体が離脱した状態で異世界召喚された事で固有スキルを得た。

 不老不死になっていても若返るわけではないようだ。
 俺に強い愛情と独占欲を持ってくれていると言うのもうれしい。
 2人で仲良く永遠の命を楽しめるのなら、何の不安もない。

「猫屋敷さん、いいですか。
 俺達の方は話が終わりました」
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