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第一章
第2話:信用問題
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「おい、お前、直ぐに俺達を帰すんだ。
さもないと叩きのめすぞ」
学生のリーダーは時間がない事を悟って焦ったようだ。
手に持っていた竹刀を偉そうな奴に突き出した。
それを見た騎士や魔術士が即座に戦闘態勢に入った。
今までは想定外の出来事に茫然自失となっていたのに凄い立ち直りだ。
普段から厳しい鍛錬をしているのだろう。
だが学生達も負けてはいない。
残る3人も手に持っていた竹刀と薙刀を構えている。
「お前達は動くな!
その方を我々に治させていただけないだろうか。
これからの事は時間をかけて相談させてもらうとして、死にかけている方を助けるのが先だと思うのだが」
偉そうな奴も危機慣れしているようだ。
自分達の手落ちに慌てる事なく、今すべきことを理解している。
こいつらには勇者というものが必要で、学生達に嫌われるわけにはいかない。
仲間かもしれない俺を死なせるのは最悪の状況だろう。
だが、俺は既に身体から離れてしまっている。
口を切って血が出ているくらいなら何とかなるが、あの吐血量を考えると内臓が破裂しているかもしれない。
「本当か、本当にお前達のこの人が助けられるのか」
この学生達は本当にいい子達なのだな。
見も知らぬ俺のために100人を超す反社の連中に立ち向かってくれた。
そして今はどこかもわからない場所に連れてこられた状況で、完全武装の騎士や魔術士に囲まれているのに、一歩も引かずに俺を護ろうとしてくれている。
母や弟という家族、伯母達という親族に騙されて人間不信になった俺には、まぶし過ぎて正視できないほど神々しい子供達だ。
「やってみなければ分からないが、全力は尽くさせてもらう。
治癒術士、直ぐに治して差し上げろ」
「「「「「はっ」」」」」
治癒術士と呼ばれた連中が俺の身体に近づいてくる。
とても有難い事に、学生達が俺の身体を治癒術士が傷つけないか監視してくれる。
見も知らない俺のためにここまでしてくれるのを見て涙が流れそうになる。
(ミャアアアァオ)
愛猫のサクラが身体をすり寄せてくる。
分かっていた事だけど、サクラも殺されていた。
反社の連中から命がけで護ろうとしたけれど、力が足らなかった。
でも、心許せるサクラと一緒に死ねるのは悪い事じゃない。
「サイモン王孫殿下、息をしていません。
心臓も止まっています。
これではハイヒールを使っても無駄です」
「黙れ、我らの誠意を見せるのだ。
ハイヒールでもスーパーヒールでも使える限りの手を使え。
おい、お前、国宝の最上級回復薬をとってこい」
サイモン王孫と呼ばれた偉そうな奴が偉そうな態度を変えずに命令を下している。
最上級回復薬という国宝級の薬を使って誠意を見せようとしている。
だが、ラノベやアニメの常識から言えば、回復薬で死んだ人間は蘇らない。
死者の蘇生は神や上位精霊に術士が願って初めてかなうものだ。
それも選ばれた術士にしかできないのが常識だ。
「殿下、それはいくらなんでも無理でございます。
我らごときに国宝をとってくる事などできません。
どうしても必要だと申されるのなら、殿下が国王陛下に願いでるしかありません」
騎士団でもよほど地位が高い人間なのだろう。
素人の俺でも見分けがつくくらい、他の騎士とは質の違う鎧とサーコートに身を包んだ騎士が、サイモン王孫をたしなめている。
「しかたがない、私が取ってくる。
後の事は頼んだぞ、パーソン公爵」
「お任せください、王孫殿下」
サイモン王孫という奴は、諫言した騎士とは違う、魔術士の服装をした人間にそう言うと、大魔法陣の部屋から足早に出て行った。
急いでそれに従う側近連中の姿を滑稽だと思う俺は性格が悪いのかな。
さもないと叩きのめすぞ」
学生のリーダーは時間がない事を悟って焦ったようだ。
手に持っていた竹刀を偉そうな奴に突き出した。
それを見た騎士や魔術士が即座に戦闘態勢に入った。
今までは想定外の出来事に茫然自失となっていたのに凄い立ち直りだ。
普段から厳しい鍛錬をしているのだろう。
だが学生達も負けてはいない。
残る3人も手に持っていた竹刀と薙刀を構えている。
「お前達は動くな!
その方を我々に治させていただけないだろうか。
これからの事は時間をかけて相談させてもらうとして、死にかけている方を助けるのが先だと思うのだが」
偉そうな奴も危機慣れしているようだ。
自分達の手落ちに慌てる事なく、今すべきことを理解している。
こいつらには勇者というものが必要で、学生達に嫌われるわけにはいかない。
仲間かもしれない俺を死なせるのは最悪の状況だろう。
だが、俺は既に身体から離れてしまっている。
口を切って血が出ているくらいなら何とかなるが、あの吐血量を考えると内臓が破裂しているかもしれない。
「本当か、本当にお前達のこの人が助けられるのか」
この学生達は本当にいい子達なのだな。
見も知らぬ俺のために100人を超す反社の連中に立ち向かってくれた。
そして今はどこかもわからない場所に連れてこられた状況で、完全武装の騎士や魔術士に囲まれているのに、一歩も引かずに俺を護ろうとしてくれている。
母や弟という家族、伯母達という親族に騙されて人間不信になった俺には、まぶし過ぎて正視できないほど神々しい子供達だ。
「やってみなければ分からないが、全力は尽くさせてもらう。
治癒術士、直ぐに治して差し上げろ」
「「「「「はっ」」」」」
治癒術士と呼ばれた連中が俺の身体に近づいてくる。
とても有難い事に、学生達が俺の身体を治癒術士が傷つけないか監視してくれる。
見も知らない俺のためにここまでしてくれるのを見て涙が流れそうになる。
(ミャアアアァオ)
愛猫のサクラが身体をすり寄せてくる。
分かっていた事だけど、サクラも殺されていた。
反社の連中から命がけで護ろうとしたけれど、力が足らなかった。
でも、心許せるサクラと一緒に死ねるのは悪い事じゃない。
「サイモン王孫殿下、息をしていません。
心臓も止まっています。
これではハイヒールを使っても無駄です」
「黙れ、我らの誠意を見せるのだ。
ハイヒールでもスーパーヒールでも使える限りの手を使え。
おい、お前、国宝の最上級回復薬をとってこい」
サイモン王孫と呼ばれた偉そうな奴が偉そうな態度を変えずに命令を下している。
最上級回復薬という国宝級の薬を使って誠意を見せようとしている。
だが、ラノベやアニメの常識から言えば、回復薬で死んだ人間は蘇らない。
死者の蘇生は神や上位精霊に術士が願って初めてかなうものだ。
それも選ばれた術士にしかできないのが常識だ。
「殿下、それはいくらなんでも無理でございます。
我らごときに国宝をとってくる事などできません。
どうしても必要だと申されるのなら、殿下が国王陛下に願いでるしかありません」
騎士団でもよほど地位が高い人間なのだろう。
素人の俺でも見分けがつくくらい、他の騎士とは質の違う鎧とサーコートに身を包んだ騎士が、サイモン王孫をたしなめている。
「しかたがない、私が取ってくる。
後の事は頼んだぞ、パーソン公爵」
「お任せください、王孫殿下」
サイモン王孫という奴は、諫言した騎士とは違う、魔術士の服装をした人間にそう言うと、大魔法陣の部屋から足早に出て行った。
急いでそれに従う側近連中の姿を滑稽だと思う俺は性格が悪いのかな。
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