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第三章:謀略
第32話:疱瘡
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1626年12月5日:江戸柳生但馬守家上屋敷:柳生左門友矩13歳
「今日集まってもらったのは他でもない、上様の味方を作る件だ」
兄上と拙者を家の呼び寄せた父上が真剣な口調で話される。
「味方ですか?
また弱味を見つけて脅迫するのですか?」
兄上が父上を揶揄う。
「ふん、こちらから脅すわけではない。
向こうが勝手に襲かな選択をするのだ。
武家諸法度通りなら厳罰に処すところを、特別に温情を与えるだけだ。
それに、今回は脅迫する必要もない」
どこかの大名が墓穴を掘ったのかな?
謀略は性に合わないから、二人の話しを聞くだけにしておこう。
「父上が罠をしかけて陥れたわけではないのですね?」
「そのような事はしていない。
非道な行いなどしたら、上様の評判が地に落ちてしまう。
謀略を仕掛ける相手は、先に謀略を仕掛けてきた奴だけだ」
「大御台所様と駿河大納言様には謀略を仕掛けるのですか?」
「やられたままにしておいては、向こうがつけあがる。
上様を狙った者は、誰であろうと容赦せん。
既に夜も眠れないほどの恐怖を味わっているだろう。
そろそろ狂気に囚われて愚かな行動を始める頃だ」
父上の目が座っている。
大御所様に斬りつけた事によほど腹を立てているのだろう。
父上が最初に剣術指南役になったのは大御所様だったからな。
「そっちの話しは父上に任せます。
俺も左門もそういう事は苦手ですから。
それで、誰をどのように味方に付けるのですか?」
「まずは大大名が死ぬことからはなそう」
「父上が仕掛けた訳でもないのに大大名が死ぬのですか?」
「蒲生下野守殿が疱瘡にかかられたそうだ。
十中八九亡くなられるだろう」
「確かに疱瘡は恐ろしい病ですが、絶対に亡くなられるとは限りませんが?」
「十の内八か九は亡くなられるのだ。
亡くなられた時の事を考えておくのが側近の役目だ」
「それは確かに父上の申される通りですが、蒲生下野守殿には御舎弟がおられたのではありませんか?
御舎弟に跡を継いでいただくだけでしょう?」
「長弟は独立して四万石の大名と成っている。
武家諸法度では、一度独立した者に本家を継ぐ資格はない。
浅野家に生まれた異父弟は、そもそも蒲生家の血を引いていないし、広島藩を継ぐ予定になっている」
「父上、蒲生下野守殿の母君は東照神君の御息女ですよね。
蒲生下野守殿と御舎弟は東照神君の外孫ではありませんか。
こういう場合は特別に跡を継ぐことが許されるのではありませんか?」
「東照神君の外孫など掃いて捨てるほどおられる。
特別にお情けをかけるかどうかは、上様に忠誠を誓うかどうかで決める。
それに、忠誠を誓っても役に立たなければ意味がない。
蒲生家は家臣の力が強く何度も問題を起こしている。
特別に情けをかけるにしても、獅子身中の虫を潰す形でなければ意味がない」
「確かに、上様の治世を邪魔するような存在では意味がありませんね」
「いざという時に戦えないような者に、六十万石もの大領を預ける訳にはいかぬ」
「父上の申される通りですね。
では、蒲生家が上様よりも駿河大納言様に味方するようなら潰す。
上様に味方するとしても、獅子身中の虫を排除するために潰す。
そういう事ですか?」
「そうだ、手の者に内部を調べさせている。
駿河大納言様や大御台所様に近づいている者がいないか調べさせている。
疑わし者を排除しなければ、御舎弟であろうと跡は継がせない」
「それでいいと思いますが、問題は大御所様が介入する事ですね。
東照神君の外孫だから配慮しろと言われたら、上様も厳しくはできません。
それでなくても大御所様の面目を潰す形で、正之様を独立した大名に取立て、忠輝公の罪を解いて大名に復帰させているのですから」
「それが分かっているから、お前達に来てもらったのだ。
大御所様が強く介入してきた場合に、上様がどう考えられるか。
何処まで上様を抑えてこちらの献策を聞いていただけるか。
小姓として上様にお願いできる事を聞いておきたい」
父上が衆道の力も考慮して策を弄するとは思ってもいなかった。
よほど腹を据えて総目付の役目を願い出たのだな。
それならば、拙者も腹を据えて答えなければいけない。
「今日集まってもらったのは他でもない、上様の味方を作る件だ」
兄上と拙者を家の呼び寄せた父上が真剣な口調で話される。
「味方ですか?
また弱味を見つけて脅迫するのですか?」
兄上が父上を揶揄う。
「ふん、こちらから脅すわけではない。
向こうが勝手に襲かな選択をするのだ。
武家諸法度通りなら厳罰に処すところを、特別に温情を与えるだけだ。
それに、今回は脅迫する必要もない」
どこかの大名が墓穴を掘ったのかな?
謀略は性に合わないから、二人の話しを聞くだけにしておこう。
「父上が罠をしかけて陥れたわけではないのですね?」
「そのような事はしていない。
非道な行いなどしたら、上様の評判が地に落ちてしまう。
謀略を仕掛ける相手は、先に謀略を仕掛けてきた奴だけだ」
「大御台所様と駿河大納言様には謀略を仕掛けるのですか?」
「やられたままにしておいては、向こうがつけあがる。
上様を狙った者は、誰であろうと容赦せん。
既に夜も眠れないほどの恐怖を味わっているだろう。
そろそろ狂気に囚われて愚かな行動を始める頃だ」
父上の目が座っている。
大御所様に斬りつけた事によほど腹を立てているのだろう。
父上が最初に剣術指南役になったのは大御所様だったからな。
「そっちの話しは父上に任せます。
俺も左門もそういう事は苦手ですから。
それで、誰をどのように味方に付けるのですか?」
「まずは大大名が死ぬことからはなそう」
「父上が仕掛けた訳でもないのに大大名が死ぬのですか?」
「蒲生下野守殿が疱瘡にかかられたそうだ。
十中八九亡くなられるだろう」
「確かに疱瘡は恐ろしい病ですが、絶対に亡くなられるとは限りませんが?」
「十の内八か九は亡くなられるのだ。
亡くなられた時の事を考えておくのが側近の役目だ」
「それは確かに父上の申される通りですが、蒲生下野守殿には御舎弟がおられたのではありませんか?
御舎弟に跡を継いでいただくだけでしょう?」
「長弟は独立して四万石の大名と成っている。
武家諸法度では、一度独立した者に本家を継ぐ資格はない。
浅野家に生まれた異父弟は、そもそも蒲生家の血を引いていないし、広島藩を継ぐ予定になっている」
「父上、蒲生下野守殿の母君は東照神君の御息女ですよね。
蒲生下野守殿と御舎弟は東照神君の外孫ではありませんか。
こういう場合は特別に跡を継ぐことが許されるのではありませんか?」
「東照神君の外孫など掃いて捨てるほどおられる。
特別にお情けをかけるかどうかは、上様に忠誠を誓うかどうかで決める。
それに、忠誠を誓っても役に立たなければ意味がない。
蒲生家は家臣の力が強く何度も問題を起こしている。
特別に情けをかけるにしても、獅子身中の虫を潰す形でなければ意味がない」
「確かに、上様の治世を邪魔するような存在では意味がありませんね」
「いざという時に戦えないような者に、六十万石もの大領を預ける訳にはいかぬ」
「父上の申される通りですね。
では、蒲生家が上様よりも駿河大納言様に味方するようなら潰す。
上様に味方するとしても、獅子身中の虫を排除するために潰す。
そういう事ですか?」
「そうだ、手の者に内部を調べさせている。
駿河大納言様や大御台所様に近づいている者がいないか調べさせている。
疑わし者を排除しなければ、御舎弟であろうと跡は継がせない」
「それでいいと思いますが、問題は大御所様が介入する事ですね。
東照神君の外孫だから配慮しろと言われたら、上様も厳しくはできません。
それでなくても大御所様の面目を潰す形で、正之様を独立した大名に取立て、忠輝公の罪を解いて大名に復帰させているのですから」
「それが分かっているから、お前達に来てもらったのだ。
大御所様が強く介入してきた場合に、上様がどう考えられるか。
何処まで上様を抑えてこちらの献策を聞いていただけるか。
小姓として上様にお願いできる事を聞いておきたい」
父上が衆道の力も考慮して策を弄するとは思ってもいなかった。
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