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第二章:出世
第28話:松平丹後守
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1626年4月6日:江戸松平丹後守上屋敷:柳生左門友矩13歳
「松平丹後守!
上様に対する謀叛の罪で捕らえる!」
三枝殿が、屋敷の奥深くに隠れていた松平丹後守を見つけ出して言い放たれた。
拙者が邪魔する者を悉く斬り捨ててここまできた。
屋敷の中は死屍累々だ。
「下がれ下郎!
大御所様の親任厚き余を謀叛人扱いしてただで済むと思っているのか?!」
「何の罪もない松平忠輝公を裏切り罠に嵌めた卑怯者が何を言う!
今回も私利私欲を満たすために上様を裏切り駿河大納言についたのであろう!
犬畜生にも劣る不忠者め!」
「お前達のような陰間に天下国家の何が分かる!
忠輝公の御蟄居を決められたのは大御所様だ。
大御所様に命じられて上使を務めたのは三弟だ。
忠輝公に仕えていたのは父と次弟だ
余は最初から最後まで大御所様に忠誠を誓っている」
「ほう、お前達親兄弟は、松平忠輝公を陥れた時は東照神君の意を借りたくせに、東照神君が後継者に定めた上様に謀叛するのか?
流石卑怯者は忠誠心を恥知らずに使う」
実際に忠輝公の流罪を決めたのは大御所様なのに、亡くなっておられた東照神君の遺命だと言って断行したのだな。
「黙れ陰間!
余は徳川家の忠臣として君側の奸を取り除こうとしただけだ」
「ほう、君側の奸ね。
大御所様が上様のために選ばれた小姓を君側の奸と言うか。
それは、大御所様を愚か者だと非難しているのだな」
「ち、違う、そんな事は申していない!
柳生の子倅が大御所様の目を欺くほどの妖童だっただけだ!」
「それが大御所様に人を見る目がないと非難しているのであろう。
これでよく分かった」
「何が分かったというのだ!?」
「今回の黒幕が大御所様ではないという事だ。
大御所様が黒幕なら、御自身が非難されるような事を理由にはされない。
大御所様を馬鹿にしている者、敬意を払っていない者が今回の黒幕だな。
お前はその方の力を得て、大御所様を蔑ろにしているのだ!」
「黙れ、黙れ、黙れ!
今回の件に黒幕などいない!
余が上様の事を想って君側の奸を取り除こうとしただけだ!」
「まあいい、今は好きに言っていろ。
上様に謀叛を企んだ者として、一族一門悉く捕らえ、老若男女を問わず地獄の拷問を繰り返して黒幕を白状させてくれる。
お前のような謀叛人を父に持った子供達が可哀想だ」
「おのれ卑怯者、女子供に手出しするなど、それでも武士か!」
「夜陰に乗じて、わずか五百石の旗本屋敷を四万石の大名が襲う。
宣戦布告もせずに騙し討ちにしようとする。
そのような卑怯下劣な者が、他人を非難するのか?
恥知らずにも程があるな」
「やかましい、陰間に礼を払う必要などないわ!」
「それは井伊家を馬鹿にしているのか?
藩祖井伊直政公が東照神君の寵童であられた事は有名だぞ?
この痴れ者が!
東照神君の御名をこれ以上貶めるなら、目の前で子供の指を斬り落とすぞ!」
「もはやこれまで、ぎゃ!」
拙者は素早く踏み込んで松平丹後守の右手を斬り飛ばした。
脇差に手をかけた右手の手首から先がぽろりと落ちた。
卑怯下劣な松平丹後守は自害して逃げようとした。
これから自分の所為で親兄弟、女房子供が拷問で苦しめられるというのにだ!
だがそう簡単に楽にさせたりはしない。
「ぎゃあああああ」
身分ある武士とは思えない、情けない悲鳴をあげて転げまわる。
このままでは血を流し過ぎて死んでしまう。
仕方がないので急いで押さえつけて右手を縛った。
「焼き鏝を用意しろ。
傷口を焼いて血を止めるのだ。
長生きさせる必要はない。
黒幕が誰なのか白状させられればいい」
「はっ!」
こういう事に慣れた裏柳生が素早く動いてくれる。
こんな時にも番士は全く役に立たない。
本来なら拙者ではなく番士が松平丹後守を捕らえなければいけないのにだ。
「三枝殿、これからどうされるのですか?」
「やりたくはないが、松平丹後守の妻妾と子供を捕らえなければならない。
その後の拷問を思うと胸が痛むよ」
「そうですね、できる事ならやりたくないですね。
どうしてもやらなければいけないのなら、手早く片付けたいですね」
「俺はこのような事に慣れていないのだ。
左門殿の手の者は色々と慣れているようだな。
申し訳ないが、任せてもいいだろうか?」
「いいですよ。
拙者も好きではありませんが、何事も経験ですから、教えてもらう事にします」
「そうか、そうだな、何事も経験だし、逃げる訳にはいかないな。
俺も同席させてもらって良いだろうか?」
「いいですよ、上様のために一緒に学びましょう」
「松平丹後守!
上様に対する謀叛の罪で捕らえる!」
三枝殿が、屋敷の奥深くに隠れていた松平丹後守を見つけ出して言い放たれた。
拙者が邪魔する者を悉く斬り捨ててここまできた。
屋敷の中は死屍累々だ。
「下がれ下郎!
大御所様の親任厚き余を謀叛人扱いしてただで済むと思っているのか?!」
「何の罪もない松平忠輝公を裏切り罠に嵌めた卑怯者が何を言う!
今回も私利私欲を満たすために上様を裏切り駿河大納言についたのであろう!
犬畜生にも劣る不忠者め!」
「お前達のような陰間に天下国家の何が分かる!
忠輝公の御蟄居を決められたのは大御所様だ。
大御所様に命じられて上使を務めたのは三弟だ。
忠輝公に仕えていたのは父と次弟だ
余は最初から最後まで大御所様に忠誠を誓っている」
「ほう、お前達親兄弟は、松平忠輝公を陥れた時は東照神君の意を借りたくせに、東照神君が後継者に定めた上様に謀叛するのか?
流石卑怯者は忠誠心を恥知らずに使う」
実際に忠輝公の流罪を決めたのは大御所様なのに、亡くなっておられた東照神君の遺命だと言って断行したのだな。
「黙れ陰間!
余は徳川家の忠臣として君側の奸を取り除こうとしただけだ」
「ほう、君側の奸ね。
大御所様が上様のために選ばれた小姓を君側の奸と言うか。
それは、大御所様を愚か者だと非難しているのだな」
「ち、違う、そんな事は申していない!
柳生の子倅が大御所様の目を欺くほどの妖童だっただけだ!」
「それが大御所様に人を見る目がないと非難しているのであろう。
これでよく分かった」
「何が分かったというのだ!?」
「今回の黒幕が大御所様ではないという事だ。
大御所様が黒幕なら、御自身が非難されるような事を理由にはされない。
大御所様を馬鹿にしている者、敬意を払っていない者が今回の黒幕だな。
お前はその方の力を得て、大御所様を蔑ろにしているのだ!」
「黙れ、黙れ、黙れ!
今回の件に黒幕などいない!
余が上様の事を想って君側の奸を取り除こうとしただけだ!」
「まあいい、今は好きに言っていろ。
上様に謀叛を企んだ者として、一族一門悉く捕らえ、老若男女を問わず地獄の拷問を繰り返して黒幕を白状させてくれる。
お前のような謀叛人を父に持った子供達が可哀想だ」
「おのれ卑怯者、女子供に手出しするなど、それでも武士か!」
「夜陰に乗じて、わずか五百石の旗本屋敷を四万石の大名が襲う。
宣戦布告もせずに騙し討ちにしようとする。
そのような卑怯下劣な者が、他人を非難するのか?
恥知らずにも程があるな」
「やかましい、陰間に礼を払う必要などないわ!」
「それは井伊家を馬鹿にしているのか?
藩祖井伊直政公が東照神君の寵童であられた事は有名だぞ?
この痴れ者が!
東照神君の御名をこれ以上貶めるなら、目の前で子供の指を斬り落とすぞ!」
「もはやこれまで、ぎゃ!」
拙者は素早く踏み込んで松平丹後守の右手を斬り飛ばした。
脇差に手をかけた右手の手首から先がぽろりと落ちた。
卑怯下劣な松平丹後守は自害して逃げようとした。
これから自分の所為で親兄弟、女房子供が拷問で苦しめられるというのにだ!
だがそう簡単に楽にさせたりはしない。
「ぎゃあああああ」
身分ある武士とは思えない、情けない悲鳴をあげて転げまわる。
このままでは血を流し過ぎて死んでしまう。
仕方がないので急いで押さえつけて右手を縛った。
「焼き鏝を用意しろ。
傷口を焼いて血を止めるのだ。
長生きさせる必要はない。
黒幕が誰なのか白状させられればいい」
「はっ!」
こういう事に慣れた裏柳生が素早く動いてくれる。
こんな時にも番士は全く役に立たない。
本来なら拙者ではなく番士が松平丹後守を捕らえなければいけないのにだ。
「三枝殿、これからどうされるのですか?」
「やりたくはないが、松平丹後守の妻妾と子供を捕らえなければならない。
その後の拷問を思うと胸が痛むよ」
「そうですね、できる事ならやりたくないですね。
どうしてもやらなければいけないのなら、手早く片付けたいですね」
「俺はこのような事に慣れていないのだ。
左門殿の手の者は色々と慣れているようだな。
申し訳ないが、任せてもいいだろうか?」
「いいですよ。
拙者も好きではありませんが、何事も経験ですから、教えてもらう事にします」
「そうか、そうだな、何事も経験だし、逃げる訳にはいかないな。
俺も同席させてもらって良いだろうか?」
「いいですよ、上様のために一緒に学びましょう」
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