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第一章:プロローグ
第6話:独立
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1624年2月2日:柳生左門家江戸屋敷:柳生左門友矩11歳
「これで左門もひとかどの武士だな!」
「全て兄上のお陰です。
兄上が上様を脅かし、父上に口添えしてくださったお陰です。
そうでなければ、これほど立派な屋敷は拝領できませんでした」
「俺に感謝する必要などない。
自分の身と柳生家の将来のためにやった事だ。
戦国も終わったというのに、親兄弟で殺し合う事などないからな」
「そうですね、父上や兄上と殺し合うのは拙者も嫌です。
とはいえ、父上が真実を知ったらただでは済みませんよね?」
「ああ、あの父上の事だ、俺もお前も殺される可能性が高い」
「ですが兄上や拙者よりも堀田殿の方が遥かに上様に悪影響を与えています。
父上は拙者たちを殺すよりも前に堀田殿を殺すべきです」
「父上は俺達の事よりも、柳生家を守る事を一番に考えている。
春日局や稲葉家の力を考えて、堀田殿には手出ししないだろう」
「それは卑怯ではありませんか?」
「卑怯も生き残るための大切な術、詐術だ。
東照神君はもちろん、豊太閤も総見院も多くの詐術を使って天下を取った。
戦国乱世を生き残った父上に卑怯などと言う愚かな言葉はない」
「以前にも兄上からそのような話しを聞きましたが、納得できません」
「納得できようができまいが、無駄死にしたくなければ受け入れろ。
父上は俺達を殺してでも柳生家を守る。
それだけの覚悟があるから、柳生家を継いだのだ。
そうでなければ伯父上達を押しのけて家督は継いでいない」
「伯父上達を押しのけて家督を継いだ父上なら、私達を殺してでも家を守る。
兄上の考えは変わらないのですね?」
「変わらぬ。
俺達が死んでも主膳がいる。
俺達二人を殺した後なら、流石に上様も自重される。
父上も上様の興味が他の者に向かうようにするはずだ。
あの父上の事だ、主膳の顔を焼いてでも上様の興味から外すぞ」
「本当に父上はそこまでやる人なのですか?」
「ああ、俺は長男だからな、特に色々と仕込まれた。
側にいて色々な謀略を仕掛ける姿も見ている。
父上に俺達を殺す決断をさせない、それが何より大切だ」
「とは申されても、拙者には何も方法が浮かびません」
「堀田が仕掛けてこない限り此方からは手出ししない、それだけでいい。
上様や春日局には俺から話しを通しておく。
それで春日局や稲葉一門とは争わなくてすむ。
後は上様の病気を父上に知られなければいい。
普通に寵愛を受けていると思わせるのだ」
「それが分かりません」
「左門は何も考えなくていい。
父上に呼び出されない限り、家に戻らなければいいのだ。
もう左門は独立した一家の主なのだ。
父親とはいえ、他家の当主を呼びつける事などできない」
「余計な事を気取られないように、独立させてくださったのは知っています。
それほど警戒しなければ、父上に感じ取られてしまうのですね?」
「ああ、父上も伊達に戦国乱世を生き延びたわけではない。
異変を感じとる嗅覚は驚くほど鋭い。
俺も何かある時はここに逃げ込ませてもらう。
もう上様からお相手を命じられる事はないと思うが、念のためだ」
「何時でも使ってください。
屋敷で働く者達を集められたのも兄上のお陰ですから」
「父上に頼むと自ら密偵を引き入れるのと同じだからない。
俺が自分の目で確かめ、父上の手の者ではないと確認した連中だ。
安心して召し使うがいい」
「これで左門もひとかどの武士だな!」
「全て兄上のお陰です。
兄上が上様を脅かし、父上に口添えしてくださったお陰です。
そうでなければ、これほど立派な屋敷は拝領できませんでした」
「俺に感謝する必要などない。
自分の身と柳生家の将来のためにやった事だ。
戦国も終わったというのに、親兄弟で殺し合う事などないからな」
「そうですね、父上や兄上と殺し合うのは拙者も嫌です。
とはいえ、父上が真実を知ったらただでは済みませんよね?」
「ああ、あの父上の事だ、俺もお前も殺される可能性が高い」
「ですが兄上や拙者よりも堀田殿の方が遥かに上様に悪影響を与えています。
父上は拙者たちを殺すよりも前に堀田殿を殺すべきです」
「父上は俺達の事よりも、柳生家を守る事を一番に考えている。
春日局や稲葉家の力を考えて、堀田殿には手出ししないだろう」
「それは卑怯ではありませんか?」
「卑怯も生き残るための大切な術、詐術だ。
東照神君はもちろん、豊太閤も総見院も多くの詐術を使って天下を取った。
戦国乱世を生き残った父上に卑怯などと言う愚かな言葉はない」
「以前にも兄上からそのような話しを聞きましたが、納得できません」
「納得できようができまいが、無駄死にしたくなければ受け入れろ。
父上は俺達を殺してでも柳生家を守る。
それだけの覚悟があるから、柳生家を継いだのだ。
そうでなければ伯父上達を押しのけて家督は継いでいない」
「伯父上達を押しのけて家督を継いだ父上なら、私達を殺してでも家を守る。
兄上の考えは変わらないのですね?」
「変わらぬ。
俺達が死んでも主膳がいる。
俺達二人を殺した後なら、流石に上様も自重される。
父上も上様の興味が他の者に向かうようにするはずだ。
あの父上の事だ、主膳の顔を焼いてでも上様の興味から外すぞ」
「本当に父上はそこまでやる人なのですか?」
「ああ、俺は長男だからな、特に色々と仕込まれた。
側にいて色々な謀略を仕掛ける姿も見ている。
父上に俺達を殺す決断をさせない、それが何より大切だ」
「とは申されても、拙者には何も方法が浮かびません」
「堀田が仕掛けてこない限り此方からは手出ししない、それだけでいい。
上様や春日局には俺から話しを通しておく。
それで春日局や稲葉一門とは争わなくてすむ。
後は上様の病気を父上に知られなければいい。
普通に寵愛を受けていると思わせるのだ」
「それが分かりません」
「左門は何も考えなくていい。
父上に呼び出されない限り、家に戻らなければいいのだ。
もう左門は独立した一家の主なのだ。
父親とはいえ、他家の当主を呼びつける事などできない」
「余計な事を気取られないように、独立させてくださったのは知っています。
それほど警戒しなければ、父上に感じ取られてしまうのですね?」
「ああ、父上も伊達に戦国乱世を生き延びたわけではない。
異変を感じとる嗅覚は驚くほど鋭い。
俺も何かある時はここに逃げ込ませてもらう。
もう上様からお相手を命じられる事はないと思うが、念のためだ」
「何時でも使ってください。
屋敷で働く者達を集められたのも兄上のお陰ですから」
「父上に頼むと自ら密偵を引き入れるのと同じだからない。
俺が自分の目で確かめ、父上の手の者ではないと確認した連中だ。
安心して召し使うがいい」
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