婚約破棄追追放 神与スキルが謎のブリーダーだったので、王女から婚約破棄され公爵家から追放されました

克全

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第2章

第49話:簒奪者で独裁者

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 真の王家を滅ぼして王位を奪った現王家が王都から逃げ出した。
 俺を恐れた王を先頭に、現王家と首脳陣が慌てふためいて逃げ出した。
 港から船でタリファ王国に命からがら逃げ出した、思う壺である。

 タリファ王国に逃げ出した現王家は、西側諸国と激しい領地争いをしていた。
 大魔境や魔海に邪魔されない西側諸国に狙いを定めて侵略を繰り返していた。

 そんな恨まれる事ばかりしてきた西側諸国には亡命できない。
 それどころか船で沖合を通り抜ける事もできない。

 西側諸国も馬鹿じゃない、現王家が俺に追い込まれているのは知っている。
 現王家が逃げ出す事を想定して、逃がさないように国境で厳重な警備をしている。

 王も王族も首脳陣も、本当は逃げる事無く王都に居座りたかっただろう。
 だが、無敵のスライム騎士が現王家の騎士を次々と生け捕りにした。
 生け捕りにされた騎士は、狂信者以外は俺に下って臣下となった。

 中立だった貴族や成り上がりの騎士が、残らず王の籠城する城を囲んだのだ。
 毎日敵が増える、味方だった者が逃亡して翌日には城を囲む。
 今はまだ味方に留まっている者に、何時寝首を掻かれるか分からない。

 そういう恐怖が高まって、何もかも捨てて逃げるのは人として当然の事だろう。
 本当は城や王都に火を放って、俺に王城や王都を渡さず逃げたかっただろう。
 俺に城や王都を奪われるくらいなら、全て灰にしたかっただろう。

 しかし、そんな事を許す俺ではない、徹底した放火対策をした。
 寅さんの血を受け継ぐ卵や幼竜がいる王都を焼かせるものか!
 俺は竜達はもちろんスライムも動員して王都内の竜牧場を守った。

 火の粉による延焼が怖いので、王都だけでなく王城にもスライムを送り込んだ。
 王城を放火されては困るので、百の核を持つスライムを密かに潜入させた。

 案の定、腐れ簒奪王家は放火の混乱を利用して逃げようとしやがった。
 放火しようとする腐れ外道は、スライムに片っ端から消化吸収させた。

 城内に無数の成体スライムが現われ、もうどうにもならないと思ったのだろう。
 王をはじめとした王族、首脳陣はなりふり構わず城を捨てて逃げ出した。

 逃げ出せるように、わざと港までの逃走路を無防備にしてあった。
 絶対に勝てると分かっているが、卵や幼竜がいる王都を戦場にはできない。

 ★★★★★★

「現王家と首脳陣と血縁の者は皆殺しにする。
 俺に味方した者の中に血縁者がいる場合は名乗り出ろ、恩赦を与える」

「「「「「ありがたき幸せでございます」」」」」

 謁見の場に居並んだ、元アルへシラス王国の貴族や騎士が礼をとる。
 彼らの誇りに配慮して、この世界の標準的な臣下の礼にしてある。
 間違っても床に平伏させたり拝跪させたりしない。

 彼らが戦いを挑んできても全く怖くはないが、無用な争いは避けたい。
 必要なら断じて行うが、人殺しが好きな訳ではない。
 だからこそ、見せしめのような事は行わない。

 簒奪王家や首脳陣など簡単に殺せるのに、タリファ王国に逃がしたのも、卵や幼竜を戦いに巻き込みたくなかったのもあるが、俺が人殺しを好んでいないからだ。

 貴族や騎士、平民を支配する方法の一つに恐怖政治がある。
 簒奪王家や首脳陣を家族ごと皆殺しにして晒すのだ。
 そうすれば内心は憎んでいても表面上は従う、が、いつか破綻する愚かな行いだ。

「簒奪王家と家臣を亡命させたタリファ王国には宣戦布告を行う。
 我が名、新王クリスティアン・ベイルー・ジェフリーズの名で宣戦布告を行う」

「陛下、大魔境を突破されるのですか?」

 リヴァーデール男爵が確認してきた。
 爵位は男爵のままだが、元アルへシラス王国貴族や騎士の中で唯一の腹心だ。
 元冒険者ギルドのマスターも俺に接近しようとしたが、許さなかった。

「いや、いきなり襲ったりはしない、それでは余計な犠牲者が出る。
 犠牲者を出してしまったら、今後の戦いに悪影響が出る」

「前王家、簒奪王家の方針を引き継がれる気ですか?」

「引き継ぎたい訳ではないが、相手がいる事であろう?
 こちらがどう思おうと、隣国の方針によって、俺のやれる事は限られる。
 簒奪王家に何度も侵攻され、多くの家臣や民を失った隣国だ。
 王が俺に代わったからと言って、素直に和平に応じるとは限らない。
 王家が変わっても、この国に対する恨みは残る、少なくとも賠償を求めてくる」

「賠償金を支払う気はないのですね?」

「俺がやっていない事だぞ、賠償金を払う訳がないだろう」

「大魔境突破の奇襲をされず、正々堂々と宣戦布告をされる理由は何ですか?
 それも、アンドレア王女やゲオルクが追い出して死んだと発表した、クリスティアン・ベイルー・ジェフリーズ陛下の名で宣戦布告される理由は何ですか?」

「決まっているじゃないか、内乱を、内部粛清を期待しているのだ。
 無能だ、貴族スキルではないと言って平民落ちさせた俺が軍事大国を奪ったのだ。
 大魔境で野垂れ死にしたと、国の名で発表した俺が生きて軍事大国を奪ったのだ。
 アンドレアやゲオルクに不満を持っている者が決起するのではないか?」

「それではタリファ王国が内乱で疲弊するのではありませんか?」

「それがどうした、俺は困らんよ」

「しかしながら、以前の話では、陛下が傀儡王に成ってタリファ王国を治める。
 できるだけ損害をださす、次の戦で使えるようにすると言われていましたが?」

「そうだな、以前は俺を傀儡王にしてタリファ王国を属国化する提案をしていた。
 だがその過程でも、ジェフリーズ王家を滅ぼす戦いはある。
 今回もジェフリーズ王家を滅ぼす戦いがあるだけだ、何の違いもない」

「そうですね、傀儡王の時でも多少の戦いはありましたね。
 簒奪王家が逃げ出した、今回のような無血開城は滅多にありません」

「それに、傀儡王の提案をした時は、アルへシラス王国の戦力だけで圧倒する作戦だったが、今はそこに俺の戦力と実績と名声が加わる。
 前回は明らかな傀儡国家だったが、今回は対等の連合であり合併だ。
 傀儡国家にされるなら戦う忠臣の中にも、俺に従う者がいるであろう?」

「そうですね、これだけの数のタリファ王国貴族が陛下に従っているのです。
 ジェフリーズ王家を滅ぼす戦いは、戦いらしい戦いもなく終わるでしょう」

「勘違いしているようだが、俺に従う騎士はタリファ王国貴族ではない。
 俺が独力で集めた一騎当千の強者、冒険者や傭兵達だ。
 戦いが起こるか起こらないかは、はっきりとは言い切れない。
 まあ、十中八九戦いにならないと思うがな」

「率直に伺いますが、陛下はどうしたいのですか?
 タリファ王国と戦いたいのですか?
 アンドレア王女やゲオルクを殺して晒したいのですか?」

「どちらでも構わない、戦いを挑んで来たら首を刎ねて晒す。
 逃げるのなら好きに逃がして無血でタリファ王国を併合する。
 タリファ王国の貴族や平民がアンドレアやゲオルクの首を持ってきたら、受け取って褒美を与える、当たり前のことを当たり前に行うだけだ」

 できれば首実験はやりたくない。
 生け捕りにして連れてきたら、この手で処刑しなければならない。
 まあ、でも、大丈夫だろう、あの二人の性格なら間違いなく逃げる。

 逃げられたとしても、死ぬまで俺を恐れて生きる事になる。
 恨みを晴らすなんて何時でもできる、生きている間ずっと恐怖に震えろ。
 あんなどうでもいい奴らは、本気で殺したくなった時に殺せばいい。

 そんな事よりも大事な事がある、王として国を豊かにしなければいけない。
 いや、嘘だ、建前は止めよう、俺は竜とスライムの調教がしたいのだ。
 少なくとも、竜達の卵が全部孵って幼竜を終えるまでは専念したいのだ!
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みんなの感想(1件)

蒼月丸
2024.09.20 蒼月丸

面白そうなのでお気に入り登録しました!
お互い書籍化目指して頑張りましょう!

克全
2024.09.20 克全

蒼月丸さんコメントありがとうございます。

お互い頑張りましょう。

解除

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