婚約破棄追追放 神与スキルが謎のブリーダーだったので、王女から婚約破棄され公爵家から追放されました

克全

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第2章

第46話:奇襲

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 本来なら聞こえてこないはずの人間の悲鳴が聞こえて来た。
 アルへシラス王国にもタリファ王国の味方にも、近づくなと言ってある。
 ここ、竜牧場に近づいたら問答無用で殺すと厳しく言ってある。

 それでも近づいてくるという事は、敵に回ったという事だ。
 俺を味方に置いておくよりも、殺した方が利があると判断したのだ。
 あるいは、ここで殺しておかないと危険だと判断したかだ。

 サクラ達が卵を産んで身動き取れないのは、アルへシラス王国しか知らない。
 とはいえ、口止めしている訳ではないから情報は漏れやすい。
 情報収集に力を入れているタリファ王国の商業ギルドは知っているかもしれない。

「来たか、思い上がった神与落ちの平民!
 平民スキルしかないくせに、貴族位どころか王位を寄こせだと?!
 身分をわきまえない増上慢、陛下に代わって成敗してくれる!」

 俺を殺しにかかってきたのはアルへシラス王国だったか。
 こうなる可能性は低いと思っていたから、以外だ。
 まともな判断ができる王なら、タリファ王国を傀儡にする方を選ぶと思っていた。

 「「「「「クルルルルル!」」」」」

 敵の軍竜達が空濠に下り土塁を駆け上り土塀を飛び越えようとする。

 「「「「「ウギャアアアアオ!」」」」」

 俺の支配下に入った野生の竜達が雄叫びを上げて迎え撃つ。

 アルへシラス王国は確実に俺を殺す気なのだろう。
 王国が動員できる騎士をすべて投入してきたようだ。
 目に見える範囲の騎士だけで五百騎はいる。

 全国民合わせて三十万の国が動員できる騎士は、千騎が限界だ。
 大魔境の豊かな恵みを活用したとしても、多く見積もっても二千騎が限界だろう。
 敵対国への備えや内政に係わる者を考えれば、五百騎が動員限界だろう。

「寅さん、襲ってきた竜達を群れに加えるぞ。
 俺の可愛いスライム達よ、手加減は無用だ、騎士を殺せ、皆殺しにしてしまえ」

 プシュー

 百頭のリトルスライムが融合した一頭の成体スライムが、一斉に酸弾を放つ。
 敵の竜を避けて、騎乗する人間、騎士だけを狙って放つ。
 完全武装の騎士とはいえ、面頬には目用と口用の穴が開いている。

 「「「「「ギャアアアアア」」」」」

 顔を焼かれた騎士が次々と落竜していく。
 完全武装の重い身体で落馬すると、致命傷になる事が多い。
 首の骨を折って死ぬ騎士が驚くほど多い。

 「「「「「クルルルルル!」」」」」
 「「「「「ウギャアアアアオ!」」」」」

 寅さん、クラン竜、野生竜の威嚇に服従の姿勢をとる軍竜が次々と現れる。
 主人の騎士を助けようとする竜もいるが、多くは逃げるか降伏だ。
 調教が悪かったのか未熟だったのか、とても軍竜と言えないレベルだ。

 軍事大国だから、戦争に次ぐ戦争で竜の死傷が多かったのだろうか?
 威圧して降伏させようと、未熟な竜も軍竜と喧伝していたのか?
 これでは張子の虎も同然で、実戦では大やけどする。

「ギャアアアアア、痛い、痛い、痛い」
「助けてくれ、許してくれ、命じられただけなんだ、ギャアアアアア」
「ギャアアアアア、喰うな、喰わないでくれ、頼む」
「許してくれ、お願いだ、助けてくれ、命じられたんだ、したかたなかったんだ」

 スライムが落馬した騎士を取り込んで消化していく。
 酸で皮膚を焼かれ徐々に消化吸収される、長い激痛の中で死んでいく。
 いや、先に窒息死できるから、それほど長く苦しまない。

 俺の可愛い竜達は人間を食べたりしない。
 しっかりと調教しているので、人間を食べたりしない。
 元野生竜も、ボスである寅さんより先に食べられないので、我慢している。

「よし、よし、よし、よく我慢したね、御褒美だよ」

 頑張って戦ってくれた竜に御褒美の肉をあげる。
 寅さんやクラン竜の荷籠には大量の肉を乗せてある。
 褒美用と非常時に竜牧場を捨てて逃げるために……

 駄目だ、逃げられない、サクラ達や子供を捨てて逃げられない!
 まだ孵化もしていない卵の状態だけど、愛竜達の子供だ!
 見殺しにして自分だけ逃げるなんて絶対にできない!

「皆殺しにしろ、一人も逃げすな!
 剣と鎧、装備は溶かすな、食べるのは人間だけにしろ。
 剣や鎧、装備は石や木のように、核を守るために使え」

 スライム達が俺の言った事を直ぐに理解してくれる。
 取り込んだ騎士達だけを消化吸収して、武器や防具はそのままにする。
 核を鎧の中に入れて、奇襲されても核が破壊されないようにする。

 スライムに知能などない、というのが定説だったが、明らかに間違いだ。
 馬鹿な人間よりも賢いのは一目瞭然だ。
 ただ、賢いのが俺が調教したスライムだけの可能性もある。

 スライム達が賢いと思ったのは融合してからだ。
 核一つで一体のスライムだった時は、賢いとは思わなかった。
 三人寄れば文殊の知恵ではないが、百頭が融合する事で知能が生まれたのか?

 俺が何も言わないのに、鎧で核を守るだけでなく武器で攻撃できるようになった。
 スライム独特の水滴体や液状体、粘状体ではなく人型を取り出したのだ。
 人型をとる事で、武器を振るえるようになっている。

 ただ、人間に偽装する気はないようで、スライム体が鎧の外にもある。
 水分でしかない核以外のスライム体で、鎧を包み守っている。
 確かにこの方が鎧に加わる攻撃力を減少させられる。

「よく考えたな、そのやり方の方が核を守れるぞ。
 ただ、敵を騙す時には鎧の中に隠れるんだ。
 元々の身体を全部鎧の中に収めて、人間の振りをして奇襲するんだ。
 襲って来た連中を皆殺しにしたら、王都に攻め込むから練習しような」
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