47 / 50
第2章
第46話:奇襲
しおりを挟む
本来なら聞こえてこないはずの人間の悲鳴が聞こえて来た。
アルへシラス王国にもタリファ王国の味方にも、近づくなと言ってある。
ここ、竜牧場に近づいたら問答無用で殺すと厳しく言ってある。
それでも近づいてくるという事は、敵に回ったという事だ。
俺を味方に置いておくよりも、殺した方が利があると判断したのだ。
あるいは、ここで殺しておかないと危険だと判断したかだ。
サクラ達が卵を産んで身動き取れないのは、アルへシラス王国しか知らない。
とはいえ、口止めしている訳ではないから情報は漏れやすい。
情報収集に力を入れているタリファ王国の商業ギルドは知っているかもしれない。
「来たか、思い上がった神与落ちの平民!
平民スキルしかないくせに、貴族位どころか王位を寄こせだと?!
身分をわきまえない増上慢、陛下に代わって成敗してくれる!」
俺を殺しにかかってきたのはアルへシラス王国だったか。
こうなる可能性は低いと思っていたから、以外だ。
まともな判断ができる王なら、タリファ王国を傀儡にする方を選ぶと思っていた。
「「「「「クルルルルル!」」」」」
敵の軍竜達が空濠に下り土塁を駆け上り土塀を飛び越えようとする。
「「「「「ウギャアアアアオ!」」」」」
俺の支配下に入った野生の竜達が雄叫びを上げて迎え撃つ。
アルへシラス王国は確実に俺を殺す気なのだろう。
王国が動員できる騎士をすべて投入してきたようだ。
目に見える範囲の騎士だけで五百騎はいる。
全国民合わせて三十万の国が動員できる騎士は、千騎が限界だ。
大魔境の豊かな恵みを活用したとしても、多く見積もっても二千騎が限界だろう。
敵対国への備えや内政に係わる者を考えれば、五百騎が動員限界だろう。
「寅さん、襲ってきた竜達を群れに加えるぞ。
俺の可愛いスライム達よ、手加減は無用だ、騎士を殺せ、皆殺しにしてしまえ」
プシュー
百頭のリトルスライムが融合した一頭の成体スライムが、一斉に酸弾を放つ。
敵の竜を避けて、騎乗する人間、騎士だけを狙って放つ。
完全武装の騎士とはいえ、面頬には目用と口用の穴が開いている。
「「「「「ギャアアアアア」」」」」
顔を焼かれた騎士が次々と落竜していく。
完全武装の重い身体で落馬すると、致命傷になる事が多い。
首の骨を折って死ぬ騎士が驚くほど多い。
「「「「「クルルルルル!」」」」」
「「「「「ウギャアアアアオ!」」」」」
寅さん、クラン竜、野生竜の威嚇に服従の姿勢をとる軍竜が次々と現れる。
主人の騎士を助けようとする竜もいるが、多くは逃げるか降伏だ。
調教が悪かったのか未熟だったのか、とても軍竜と言えないレベルだ。
軍事大国だから、戦争に次ぐ戦争で竜の死傷が多かったのだろうか?
威圧して降伏させようと、未熟な竜も軍竜と喧伝していたのか?
これでは張子の虎も同然で、実戦では大やけどする。
「ギャアアアアア、痛い、痛い、痛い」
「助けてくれ、許してくれ、命じられただけなんだ、ギャアアアアア」
「ギャアアアアア、喰うな、喰わないでくれ、頼む」
「許してくれ、お願いだ、助けてくれ、命じられたんだ、したかたなかったんだ」
スライムが落馬した騎士を取り込んで消化していく。
酸で皮膚を焼かれ徐々に消化吸収される、長い激痛の中で死んでいく。
いや、先に窒息死できるから、それほど長く苦しまない。
俺の可愛い竜達は人間を食べたりしない。
しっかりと調教しているので、人間を食べたりしない。
元野生竜も、ボスである寅さんより先に食べられないので、我慢している。
「よし、よし、よし、よく我慢したね、御褒美だよ」
頑張って戦ってくれた竜に御褒美の肉をあげる。
寅さんやクラン竜の荷籠には大量の肉を乗せてある。
褒美用と非常時に竜牧場を捨てて逃げるために……
駄目だ、逃げられない、サクラ達や子供を捨てて逃げられない!
まだ孵化もしていない卵の状態だけど、愛竜達の子供だ!
見殺しにして自分だけ逃げるなんて絶対にできない!
「皆殺しにしろ、一人も逃げすな!
剣と鎧、装備は溶かすな、食べるのは人間だけにしろ。
剣や鎧、装備は石や木のように、核を守るために使え」
スライム達が俺の言った事を直ぐに理解してくれる。
取り込んだ騎士達だけを消化吸収して、武器や防具はそのままにする。
核を鎧の中に入れて、奇襲されても核が破壊されないようにする。
スライムに知能などない、というのが定説だったが、明らかに間違いだ。
馬鹿な人間よりも賢いのは一目瞭然だ。
ただ、賢いのが俺が調教したスライムだけの可能性もある。
スライム達が賢いと思ったのは融合してからだ。
核一つで一体のスライムだった時は、賢いとは思わなかった。
三人寄れば文殊の知恵ではないが、百頭が融合する事で知能が生まれたのか?
俺が何も言わないのに、鎧で核を守るだけでなく武器で攻撃できるようになった。
スライム独特の水滴体や液状体、粘状体ではなく人型を取り出したのだ。
人型をとる事で、武器を振るえるようになっている。
ただ、人間に偽装する気はないようで、スライム体が鎧の外にもある。
水分でしかない核以外のスライム体で、鎧を包み守っている。
確かにこの方が鎧に加わる攻撃力を減少させられる。
「よく考えたな、そのやり方の方が核を守れるぞ。
ただ、敵を騙す時には鎧の中に隠れるんだ。
元々の身体を全部鎧の中に収めて、人間の振りをして奇襲するんだ。
襲って来た連中を皆殺しにしたら、王都に攻め込むから練習しような」
アルへシラス王国にもタリファ王国の味方にも、近づくなと言ってある。
ここ、竜牧場に近づいたら問答無用で殺すと厳しく言ってある。
それでも近づいてくるという事は、敵に回ったという事だ。
俺を味方に置いておくよりも、殺した方が利があると判断したのだ。
あるいは、ここで殺しておかないと危険だと判断したかだ。
サクラ達が卵を産んで身動き取れないのは、アルへシラス王国しか知らない。
とはいえ、口止めしている訳ではないから情報は漏れやすい。
情報収集に力を入れているタリファ王国の商業ギルドは知っているかもしれない。
「来たか、思い上がった神与落ちの平民!
平民スキルしかないくせに、貴族位どころか王位を寄こせだと?!
身分をわきまえない増上慢、陛下に代わって成敗してくれる!」
俺を殺しにかかってきたのはアルへシラス王国だったか。
こうなる可能性は低いと思っていたから、以外だ。
まともな判断ができる王なら、タリファ王国を傀儡にする方を選ぶと思っていた。
「「「「「クルルルルル!」」」」」
敵の軍竜達が空濠に下り土塁を駆け上り土塀を飛び越えようとする。
「「「「「ウギャアアアアオ!」」」」」
俺の支配下に入った野生の竜達が雄叫びを上げて迎え撃つ。
アルへシラス王国は確実に俺を殺す気なのだろう。
王国が動員できる騎士をすべて投入してきたようだ。
目に見える範囲の騎士だけで五百騎はいる。
全国民合わせて三十万の国が動員できる騎士は、千騎が限界だ。
大魔境の豊かな恵みを活用したとしても、多く見積もっても二千騎が限界だろう。
敵対国への備えや内政に係わる者を考えれば、五百騎が動員限界だろう。
「寅さん、襲ってきた竜達を群れに加えるぞ。
俺の可愛いスライム達よ、手加減は無用だ、騎士を殺せ、皆殺しにしてしまえ」
プシュー
百頭のリトルスライムが融合した一頭の成体スライムが、一斉に酸弾を放つ。
敵の竜を避けて、騎乗する人間、騎士だけを狙って放つ。
完全武装の騎士とはいえ、面頬には目用と口用の穴が開いている。
「「「「「ギャアアアアア」」」」」
顔を焼かれた騎士が次々と落竜していく。
完全武装の重い身体で落馬すると、致命傷になる事が多い。
首の骨を折って死ぬ騎士が驚くほど多い。
「「「「「クルルルルル!」」」」」
「「「「「ウギャアアアアオ!」」」」」
寅さん、クラン竜、野生竜の威嚇に服従の姿勢をとる軍竜が次々と現れる。
主人の騎士を助けようとする竜もいるが、多くは逃げるか降伏だ。
調教が悪かったのか未熟だったのか、とても軍竜と言えないレベルだ。
軍事大国だから、戦争に次ぐ戦争で竜の死傷が多かったのだろうか?
威圧して降伏させようと、未熟な竜も軍竜と喧伝していたのか?
これでは張子の虎も同然で、実戦では大やけどする。
「ギャアアアアア、痛い、痛い、痛い」
「助けてくれ、許してくれ、命じられただけなんだ、ギャアアアアア」
「ギャアアアアア、喰うな、喰わないでくれ、頼む」
「許してくれ、お願いだ、助けてくれ、命じられたんだ、したかたなかったんだ」
スライムが落馬した騎士を取り込んで消化していく。
酸で皮膚を焼かれ徐々に消化吸収される、長い激痛の中で死んでいく。
いや、先に窒息死できるから、それほど長く苦しまない。
俺の可愛い竜達は人間を食べたりしない。
しっかりと調教しているので、人間を食べたりしない。
元野生竜も、ボスである寅さんより先に食べられないので、我慢している。
「よし、よし、よし、よく我慢したね、御褒美だよ」
頑張って戦ってくれた竜に御褒美の肉をあげる。
寅さんやクラン竜の荷籠には大量の肉を乗せてある。
褒美用と非常時に竜牧場を捨てて逃げるために……
駄目だ、逃げられない、サクラ達や子供を捨てて逃げられない!
まだ孵化もしていない卵の状態だけど、愛竜達の子供だ!
見殺しにして自分だけ逃げるなんて絶対にできない!
「皆殺しにしろ、一人も逃げすな!
剣と鎧、装備は溶かすな、食べるのは人間だけにしろ。
剣や鎧、装備は石や木のように、核を守るために使え」
スライム達が俺の言った事を直ぐに理解してくれる。
取り込んだ騎士達だけを消化吸収して、武器や防具はそのままにする。
核を鎧の中に入れて、奇襲されても核が破壊されないようにする。
スライムに知能などない、というのが定説だったが、明らかに間違いだ。
馬鹿な人間よりも賢いのは一目瞭然だ。
ただ、賢いのが俺が調教したスライムだけの可能性もある。
スライム達が賢いと思ったのは融合してからだ。
核一つで一体のスライムだった時は、賢いとは思わなかった。
三人寄れば文殊の知恵ではないが、百頭が融合する事で知能が生まれたのか?
俺が何も言わないのに、鎧で核を守るだけでなく武器で攻撃できるようになった。
スライム独特の水滴体や液状体、粘状体ではなく人型を取り出したのだ。
人型をとる事で、武器を振るえるようになっている。
ただ、人間に偽装する気はないようで、スライム体が鎧の外にもある。
水分でしかない核以外のスライム体で、鎧を包み守っている。
確かにこの方が鎧に加わる攻撃力を減少させられる。
「よく考えたな、そのやり方の方が核を守れるぞ。
ただ、敵を騙す時には鎧の中に隠れるんだ。
元々の身体を全部鎧の中に収めて、人間の振りをして奇襲するんだ。
襲って来た連中を皆殺しにしたら、王都に攻め込むから練習しような」
75
お気に入りに追加
317
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢と呼ばれて追放されましたが、先祖返りの精霊種だったので、神殿で崇められる立場になりました。母国は加護を失いましたが仕方ないですね。
蒼衣翼
恋愛
古くから続く名家の娘、アレリは、古い盟約に従って、王太子の妻となるさだめだった。
しかし、古臭い伝統に反発した王太子によって、ありもしない罪をでっち上げられた挙げ句、国外追放となってしまう。
自分の意思とは関係ないところで、運命を翻弄されたアレリは、憧れだった精霊信仰がさかんな国を目指すことに。
そこで、自然のエネルギーそのものである精霊と語り合うことの出来るアレリは、神殿で聖女と崇められ、優しい青年と巡り合った。
一方、古い盟約を破った故国は、精霊の加護を失い、衰退していくのだった。
※カクヨムさまにも掲載しています。
婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪
naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。
「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」
まっ、いいかっ!
持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!
そんな事も分からないから婚約破棄になるんです。仕方無いですよね?
ノ木瀬 優
恋愛
事あるごとに人前で私を追及するリチャード殿下。
「私は何もしておりません! 信じてください!」
婚約者を信じられなかった者の末路は……
10歳で記憶喪失になったけど、チート従魔たちと異世界ライフを楽しみます(リメイク版)
犬社護
ファンタジー
10歳の咲耶(さや)は家族とのキャンプ旅行で就寝中、豪雨の影響で発生した土石流に巻き込まれてしまう。
意識が浮上して目覚めると、そこは森の中。
彼女は10歳の見知らぬ少女となっており、その子の記憶も喪失していたことで、自分が異世界に転生していることにも気づかず、何故深い森の中にいるのかもわからないまま途方に暮れてしまう。
そんな状況の中、森で知り合った冒険者ベイツと霊鳥ルウリと出会ったことで、彼女は徐々に自分の置かれている状況を把握していく。持ち前の明るくてのほほんとしたマイペースな性格もあって、咲耶は前世の知識を駆使して、徐々に異世界にも慣れていくのだが、そんな彼女に転機が訪れる。それ以降、これまで不明だった咲耶自身の力も解放され、様々な人々や精霊、魔物たちと出会い愛されていく。
これは、ちょっぴり天然な《咲耶》とチート従魔たちとのまったり異世界物語。
○○○
旧版を基に再編集しています。
第二章(16話付近)以降、完全オリジナルとなります。
旧版に関しては、8月1日に削除予定なのでご注意ください。
この作品は、ノベルアップ+にも投稿しています。
転生者は力を隠して荷役をしていたが、勇者パーティーに裏切られて生贄にされる。
克全
ファンタジー
第6回カクヨムWeb小説コンテスト中間選考通過作
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門日間ランキング51位
2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門週間ランキング52位
【完結】お花畑ヒロインの義母でした〜連座はご勘弁!可愛い息子を連れて逃亡します〜
himahima
恋愛
夫が少女を連れ帰ってきた日、ここは前世で読んだweb小説の世界で、私はざまぁされるお花畑ヒロインの義母に転生したと気付く。
えっ?!遅くない!!せめてくそ旦那と結婚する10年前に思い出したかった…。
ざまぁされて取り潰される男爵家の泥舟に一緒に乗る気はありませんわ!
★恋愛ランキング入りしました!
読んでくれた皆様ありがとうございます。
連載希望のコメントをいただきましたので、
連載に向け準備中です。
*他サイトでも公開中
日間総合ランキング2位に入りました!
王族に婚約破棄させたらそりゃそうなるよね? ……って話
ノ木瀬 優
恋愛
ぽっと出のヒロインが王族に婚約破棄させたらこうなるんじゃないかなって話を書いてみました。
完全に勢いで書いた話ですので、お気軽に読んで頂けたらなと思います。
固有スキルガチャで最底辺からの大逆転だモ~モンスターのスキルを使えるようになった俺のお気楽ダンジョンライフ~
うみ
ファンタジー
恵まれない固有スキルを持って生まれたクラウディオだったが、一人、ダンジョンの一階層で宝箱を漁ることで生計を立てていた。
いつものように一階層を探索していたところ、弱い癖に探索者を続けている彼の態度が気に入らない探索者によって深層に飛ばされてしまう。
モンスターに襲われ絶体絶命のピンチに機転を利かせて切り抜けるも、ただの雑魚モンスター一匹を倒したに過ぎなかった。
そこで、クラウディオは固有スキルを入れ替えるアイテムを手に入れ、大逆転。
モンスターの力を吸収できるようになった彼は深層から無事帰還することができた。
その後、彼と同じように深層に転移した探索者の手助けをしたり、彼を深層に飛ばした探索者にお灸をすえたり、と彼の生活が一変する。
稼いだ金で郊外で隠居生活を送ることを目標に今日もまたダンジョンに挑むクラウディオなのであった。
『箱を開けるモ』
「餌は待てと言ってるだろうに」
とあるイベントでくっついてくることになった生意気なマーモットと共に。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる