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第2章
第44話:求愛
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ウギャアアアアオ!
愛竜の中で一番大きな寅さんよりも二回りも大きな竜が追って来た。
毒々しく赤い角が凶暴さを象徴しているようだ。
幾らでも生え変わる尻尾の先にある鋭利な棘で攻撃力の強さが分かる。
少しおかしい、確かに強い竜だが最強種とまでは言えない。
一頭で十頭の竜に挑んで来るほどの実力差はない。
俺がその気になれば、スライム達に酸弾攻撃をさせれば、確実に斃せる。
「クルルルルル!」
え、なに、求愛なの、追いかけてきている竜は寅さんに求愛しているの?!
寅さんの言葉に、一瞬パニックになってしまった。
直ぐに正気を取り戻したが、何をすれば良いのか、答えを出すまでに少し時間がかかってしまった。
「【ブリーディング・アイ】」
寅さんの繁殖相手として相応しいのか確かめてみた。
本能の正確さ、恐ろしさを身に染みて実感した。
事もあろうに、優良配合だった、初めて診る並配合以上の組み合わせだった。
良配合も見た事がなかったのに、いきなり優良配合が見つかるとは思わなかった。
レッドホーンが命懸けで寅さんを追いかけるはずだ!
「寅さん、あの子の求愛を受けて群れに入れろ。
子供を生んで育てるのは竜牧場だ、良いな」
「クルルルルル!」
「サクラ」
寅さんが了解してくれたので、サクラを呼んで乗り換えた。
レッドホーンが群れに入りたいのか、種だけ欲しいのか分からない。
求愛行動が激し過ぎて死傷するのは嫌だからな。
レッドホーンが寅さんに何か訴えて身体を動かしている。
求愛行動なのだろうが、サクラ達の事を気にしていない。
だったら群が離脱しても問題ないだろう、まずは乗竜をクランに届ける。
「サクラ、お前が指揮を取れ」
「クルルルルル!」
★★★★★★
俺はサクラを群のリーダーに変えて大魔境を突破した。
タリファ王国にいるクランメンバー達に乗竜を引き渡してトンボ返りした。
初期にクランに預けた乗竜は万全の状態だったが、二度の突破はさせない。
アルへシラス王国の竜牧場に戻ると、寅さんとレッドホーンがいた。
まだ使うつもりではなかった産卵育成厩舎にいた。
邪魔しないように彼らだけの世界を作って、俺は他の事に専念した。
寅さんとレッドホーンが交尾して産卵するまでに七十日かかる。
卵に栄養を与えるために食事の量が極端に増える。
レッドホーンだけでなく、寅さんも餌集めに協力する。
七十日後に卵を産み、温めて孵化させるのにも七十日かかる。
この間はレッドホーンがずっと卵を温める事になる。
母竜は餌を狩ることができないので、寅さんが狩って来ることになる。
竜の中には雄が子育てに協力しない種もいる。
そんな種は生む卵の数が多いし、孵化までの日数も短い。
産卵期にもの凄く狂暴になって、手あたり次第に襲って喰うようになる。
レッドホーンが雄と子育てする種で良かった。
そうでなかったら竜牧場に来てくれていない。
そもそも俺が近づく事も許してもらえなかった。
本来のレッドホーンは群れを作らない竜種だ。
繁殖育成期にだけ夫婦になり、子育てがひと息ついたら分かれる種だ。
夫婦以外の竜種が近づいたら、子供を守るために命懸けで戦う種だ。
そんなレッドホーンが俺の愛竜達が近づくのを許している。
寅さんがいる時限定だが、産卵育成厩舎に使づく事ができる。
多少は緊張しているが、襲って来るほどの敵意は持っていない。
繁殖期のレッドホーンは寅さんと常に一緒に行動する。
産卵までの七十日間は一緒に狩りをして食料を確保するのだが、寅さんは群の一番ボスなので、常に何頭かの竜が行動を共にする。
レッドホーンが本能的に嫌うのを恐れたが、その心配は杞憂だった。
自分のパートナーが群のボスだという事に満足しているようだった。
問題があるとしたら、他の愛竜達が子供を生みたがっている事だ。
寅さんとレッドホーンに触発されて、子供を生みたがっている。
だが、愛竜全頭が産卵育成に入ってしまうのは危険過ぎる。
雄の寅さんは、産卵育成中でも十分戦える。
だが雌のサクラ達は、産卵育成中はほとんど戦えない。
この危険な時期に、とても産卵育成させられない。
この国が本気で俺を殺しにかかってきたら、一時的に逃げる必要がある。
とても産卵や育成をさせられる状態ではないのだが、それは寅さんも同じだ。
優良配合で生まれる寅さんの子供を捨てて逃げられない!
どうせ逃げられないのなら、サクラ達を繁殖させても同じだ。
サクラ達が戦えないのは大きな痛手だが、それを補って余りあるスライムがいる。
できるだけ多くのスライムを成体にまで育てて、竜牧場の守りに使う。
……いや、無理だ、スライムも使い捨てにできない。
一頭のスライムも死なせたくない、誰も死なせないようにして守る方法……
百体のリトルスライムで一体の成体スライムにする。
その中に数の少ないリカバリースライムを一体含ませて、治癒能力を持たせる。
リカバリースライムが加わっている成体スライムだけでなく、一緒に戦っている他の成体スライムも治癒回復させられるので、戦闘継続能力が格段に高くなる。
女子供だけでなく、正規の騎士が相手でも互角以上に戦う事ができる。
しかも俺に育てたスライムは、本来は弱点である核が百個もある。
そうなると、哀しいのだが、弱点の核を破壊したと油断した所を逆襲できる。
まあ、身体に取り込んだ石や木で核を守るから、並の騎士には核を破壊されない。
そこまで考えて、サクラ達の繁殖相手に相応しい雄を大魔境で探した。
大魔境で探すだけでなく、戦える雄の繁殖竜を市場で探した。
約束していた大魔境突破を終えたので、突破を一時中断した。
愛竜の中で一番大きな寅さんよりも二回りも大きな竜が追って来た。
毒々しく赤い角が凶暴さを象徴しているようだ。
幾らでも生え変わる尻尾の先にある鋭利な棘で攻撃力の強さが分かる。
少しおかしい、確かに強い竜だが最強種とまでは言えない。
一頭で十頭の竜に挑んで来るほどの実力差はない。
俺がその気になれば、スライム達に酸弾攻撃をさせれば、確実に斃せる。
「クルルルルル!」
え、なに、求愛なの、追いかけてきている竜は寅さんに求愛しているの?!
寅さんの言葉に、一瞬パニックになってしまった。
直ぐに正気を取り戻したが、何をすれば良いのか、答えを出すまでに少し時間がかかってしまった。
「【ブリーディング・アイ】」
寅さんの繁殖相手として相応しいのか確かめてみた。
本能の正確さ、恐ろしさを身に染みて実感した。
事もあろうに、優良配合だった、初めて診る並配合以上の組み合わせだった。
良配合も見た事がなかったのに、いきなり優良配合が見つかるとは思わなかった。
レッドホーンが命懸けで寅さんを追いかけるはずだ!
「寅さん、あの子の求愛を受けて群れに入れろ。
子供を生んで育てるのは竜牧場だ、良いな」
「クルルルルル!」
「サクラ」
寅さんが了解してくれたので、サクラを呼んで乗り換えた。
レッドホーンが群れに入りたいのか、種だけ欲しいのか分からない。
求愛行動が激し過ぎて死傷するのは嫌だからな。
レッドホーンが寅さんに何か訴えて身体を動かしている。
求愛行動なのだろうが、サクラ達の事を気にしていない。
だったら群が離脱しても問題ないだろう、まずは乗竜をクランに届ける。
「サクラ、お前が指揮を取れ」
「クルルルルル!」
★★★★★★
俺はサクラを群のリーダーに変えて大魔境を突破した。
タリファ王国にいるクランメンバー達に乗竜を引き渡してトンボ返りした。
初期にクランに預けた乗竜は万全の状態だったが、二度の突破はさせない。
アルへシラス王国の竜牧場に戻ると、寅さんとレッドホーンがいた。
まだ使うつもりではなかった産卵育成厩舎にいた。
邪魔しないように彼らだけの世界を作って、俺は他の事に専念した。
寅さんとレッドホーンが交尾して産卵するまでに七十日かかる。
卵に栄養を与えるために食事の量が極端に増える。
レッドホーンだけでなく、寅さんも餌集めに協力する。
七十日後に卵を産み、温めて孵化させるのにも七十日かかる。
この間はレッドホーンがずっと卵を温める事になる。
母竜は餌を狩ることができないので、寅さんが狩って来ることになる。
竜の中には雄が子育てに協力しない種もいる。
そんな種は生む卵の数が多いし、孵化までの日数も短い。
産卵期にもの凄く狂暴になって、手あたり次第に襲って喰うようになる。
レッドホーンが雄と子育てする種で良かった。
そうでなかったら竜牧場に来てくれていない。
そもそも俺が近づく事も許してもらえなかった。
本来のレッドホーンは群れを作らない竜種だ。
繁殖育成期にだけ夫婦になり、子育てがひと息ついたら分かれる種だ。
夫婦以外の竜種が近づいたら、子供を守るために命懸けで戦う種だ。
そんなレッドホーンが俺の愛竜達が近づくのを許している。
寅さんがいる時限定だが、産卵育成厩舎に使づく事ができる。
多少は緊張しているが、襲って来るほどの敵意は持っていない。
繁殖期のレッドホーンは寅さんと常に一緒に行動する。
産卵までの七十日間は一緒に狩りをして食料を確保するのだが、寅さんは群の一番ボスなので、常に何頭かの竜が行動を共にする。
レッドホーンが本能的に嫌うのを恐れたが、その心配は杞憂だった。
自分のパートナーが群のボスだという事に満足しているようだった。
問題があるとしたら、他の愛竜達が子供を生みたがっている事だ。
寅さんとレッドホーンに触発されて、子供を生みたがっている。
だが、愛竜全頭が産卵育成に入ってしまうのは危険過ぎる。
雄の寅さんは、産卵育成中でも十分戦える。
だが雌のサクラ達は、産卵育成中はほとんど戦えない。
この危険な時期に、とても産卵育成させられない。
この国が本気で俺を殺しにかかってきたら、一時的に逃げる必要がある。
とても産卵や育成をさせられる状態ではないのだが、それは寅さんも同じだ。
優良配合で生まれる寅さんの子供を捨てて逃げられない!
どうせ逃げられないのなら、サクラ達を繁殖させても同じだ。
サクラ達が戦えないのは大きな痛手だが、それを補って余りあるスライムがいる。
できるだけ多くのスライムを成体にまで育てて、竜牧場の守りに使う。
……いや、無理だ、スライムも使い捨てにできない。
一頭のスライムも死なせたくない、誰も死なせないようにして守る方法……
百体のリトルスライムで一体の成体スライムにする。
その中に数の少ないリカバリースライムを一体含ませて、治癒能力を持たせる。
リカバリースライムが加わっている成体スライムだけでなく、一緒に戦っている他の成体スライムも治癒回復させられるので、戦闘継続能力が格段に高くなる。
女子供だけでなく、正規の騎士が相手でも互角以上に戦う事ができる。
しかも俺に育てたスライムは、本来は弱点である核が百個もある。
そうなると、哀しいのだが、弱点の核を破壊したと油断した所を逆襲できる。
まあ、身体に取り込んだ石や木で核を守るから、並の騎士には核を破壊されない。
そこまで考えて、サクラ達の繁殖相手に相応しい雄を大魔境で探した。
大魔境で探すだけでなく、戦える雄の繁殖竜を市場で探した。
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