婚約破棄追追放 神与スキルが謎のブリーダーだったので、王女から婚約破棄され公爵家から追放されました

克全

文字の大きさ
上 下
45 / 50
第2章

第44話:求愛

しおりを挟む
 ウギャアアアアオ!

 愛竜の中で一番大きな寅さんよりも二回りも大きな竜が追って来た。
 毒々しく赤い角が凶暴さを象徴しているようだ。
 幾らでも生え変わる尻尾の先にある鋭利な棘で攻撃力の強さが分かる。

 少しおかしい、確かに強い竜だが最強種とまでは言えない。
 一頭で十頭の竜に挑んで来るほどの実力差はない。
 俺がその気になれば、スライム達に酸弾攻撃をさせれば、確実に斃せる。

 「クルルルルル!」

 え、なに、求愛なの、追いかけてきている竜は寅さんに求愛しているの?!
 寅さんの言葉に、一瞬パニックになってしまった。

 直ぐに正気を取り戻したが、何をすれば良いのか、答えを出すまでに少し時間がかかってしまった。

「【ブリーディング・アイ】」

 寅さんの繁殖相手として相応しいのか確かめてみた。
 本能の正確さ、恐ろしさを身に染みて実感した。

 事もあろうに、優良配合だった、初めて診る並配合以上の組み合わせだった。
 良配合も見た事がなかったのに、いきなり優良配合が見つかるとは思わなかった。
 レッドホーンが命懸けで寅さんを追いかけるはずだ!

「寅さん、あの子の求愛を受けて群れに入れろ。
 子供を生んで育てるのは竜牧場だ、良いな」

「クルルルルル!」

「サクラ」

 寅さんが了解してくれたので、サクラを呼んで乗り換えた。
 レッドホーンが群れに入りたいのか、種だけ欲しいのか分からない。
 求愛行動が激し過ぎて死傷するのは嫌だからな。

 レッドホーンが寅さんに何か訴えて身体を動かしている。
 求愛行動なのだろうが、サクラ達の事を気にしていない。
 だったら群が離脱しても問題ないだろう、まずは乗竜をクランに届ける。

「サクラ、お前が指揮を取れ」

「クルルルルル!」

 ★★★★★★

 俺はサクラを群のリーダーに変えて大魔境を突破した。
 タリファ王国にいるクランメンバー達に乗竜を引き渡してトンボ返りした。
 初期にクランに預けた乗竜は万全の状態だったが、二度の突破はさせない。

 アルへシラス王国の竜牧場に戻ると、寅さんとレッドホーンがいた。
 まだ使うつもりではなかった産卵育成厩舎にいた。
 邪魔しないように彼らだけの世界を作って、俺は他の事に専念した。

 寅さんとレッドホーンが交尾して産卵するまでに七十日かかる。
 卵に栄養を与えるために食事の量が極端に増える。
 レッドホーンだけでなく、寅さんも餌集めに協力する。

 七十日後に卵を産み、温めて孵化させるのにも七十日かかる。
 この間はレッドホーンがずっと卵を温める事になる。
 母竜は餌を狩ることができないので、寅さんが狩って来ることになる。

 竜の中には雄が子育てに協力しない種もいる。
 そんな種は生む卵の数が多いし、孵化までの日数も短い。
 産卵期にもの凄く狂暴になって、手あたり次第に襲って喰うようになる。

 レッドホーンが雄と子育てする種で良かった。
 そうでなかったら竜牧場に来てくれていない。
 そもそも俺が近づく事も許してもらえなかった。

 本来のレッドホーンは群れを作らない竜種だ。
 繁殖育成期にだけ夫婦になり、子育てがひと息ついたら分かれる種だ。
 夫婦以外の竜種が近づいたら、子供を守るために命懸けで戦う種だ。

 そんなレッドホーンが俺の愛竜達が近づくのを許している。
 寅さんがいる時限定だが、産卵育成厩舎に使づく事ができる。
 多少は緊張しているが、襲って来るほどの敵意は持っていない。

 繁殖期のレッドホーンは寅さんと常に一緒に行動する。
 産卵までの七十日間は一緒に狩りをして食料を確保するのだが、寅さんは群の一番ボスなので、常に何頭かの竜が行動を共にする。

 レッドホーンが本能的に嫌うのを恐れたが、その心配は杞憂だった。
 自分のパートナーが群のボスだという事に満足しているようだった。
 
 問題があるとしたら、他の愛竜達が子供を生みたがっている事だ。
 寅さんとレッドホーンに触発されて、子供を生みたがっている。
 だが、愛竜全頭が産卵育成に入ってしまうのは危険過ぎる。

 雄の寅さんは、産卵育成中でも十分戦える。
 だが雌のサクラ達は、産卵育成中はほとんど戦えない。
 この危険な時期に、とても産卵育成させられない。

 この国が本気で俺を殺しにかかってきたら、一時的に逃げる必要がある。
 とても産卵や育成をさせられる状態ではないのだが、それは寅さんも同じだ。
 優良配合で生まれる寅さんの子供を捨てて逃げられない!

 どうせ逃げられないのなら、サクラ達を繁殖させても同じだ。
 サクラ達が戦えないのは大きな痛手だが、それを補って余りあるスライムがいる。
 できるだけ多くのスライムを成体にまで育てて、竜牧場の守りに使う。

 ……いや、無理だ、スライムも使い捨てにできない。
 一頭のスライムも死なせたくない、誰も死なせないようにして守る方法……

 百体のリトルスライムで一体の成体スライムにする。
 その中に数の少ないリカバリースライムを一体含ませて、治癒能力を持たせる。

 リカバリースライムが加わっている成体スライムだけでなく、一緒に戦っている他の成体スライムも治癒回復させられるので、戦闘継続能力が格段に高くなる。
 女子供だけでなく、正規の騎士が相手でも互角以上に戦う事ができる。

 しかも俺に育てたスライムは、本来は弱点である核が百個もある。
 そうなると、哀しいのだが、弱点の核を破壊したと油断した所を逆襲できる。
 まあ、身体に取り込んだ石や木で核を守るから、並の騎士には核を破壊されない。

 そこまで考えて、サクラ達の繁殖相手に相応しい雄を大魔境で探した。
 大魔境で探すだけでなく、戦える雄の繁殖竜を市場で探した。
 約束していた大魔境突破を終えたので、突破を一時中断した。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

パーティのお荷物と言われて追放されたけど、豪運持ちの俺がいなくなって大丈夫?今更やり直そうと言われても、もふもふ系パーティを作ったから無理!

蒼衣翼
ファンタジー
今年十九歳になった冒険者ラキは、十四歳から既に五年、冒険者として活動している。 ところが、Sランクパーティとなった途端、さほど目立った活躍をしていないお荷物と言われて追放されてしまう。 しかしパーティがSランクに昇格出来たのは、ラキの豪運スキルのおかげだった。 強力なスキルの代償として、口外出来ないというマイナス効果があり、そのせいで、自己弁護の出来ないラキは、裏切られたショックで人間嫌いになってしまう。 そんな彼が出会ったのが、ケモノ族と蔑まれる、狼族の少女ユメだった。 一方、ラキの抜けたパーティはこんなはずでは……という出来事の連続で、崩壊して行くのであった。

守護神の加護がもらえなかったので追放されたけど、実は寵愛持ちでした。神様が付いて来たけど、私にはどうにも出来ません。どうか皆様お幸せに!

蒼衣翼
恋愛
千璃(センリ)は、古い巫女の家系の娘で、国の守護神と共に生きる運命を言い聞かされて育った。 しかし、本来なら加護を授かるはずの十四の誕生日に、千璃には加護の兆候が現れず、一族から追放されてしまう。 だがそれは、千璃が幼い頃、そうとは知らぬまま、神の寵愛を約束されていたからだった。 国から追放された千璃に、守護神フォスフォラスは求愛し、へスペラスと改名した後に、人化して共に旅立つことに。 一方、守護神の消えた故国は、全ての加護を失い。衰退の一途を辿ることになるのだった。 ※カクヨムさまにも投稿しています

お前など家族ではない!と叩き出されましたが、家族になってくれという奇特な騎士に拾われました

蒼衣翼
恋愛
アイメリアは今年十五歳になる少女だ。 家族に虐げられて召使いのように働かされて育ったアイメリアは、ある日突然、父親であった存在に「お前など家族ではない!」と追い出されてしまう。 アイメリアは養子であり、家族とは血の繋がりはなかったのだ。 閉じ込められたまま外を知らずに育ったアイメリアは窮地に陥るが、救ってくれた騎士の身の回りの世話をする仕事を得る。 養父母と義姉が自らの企みによって窮地に陥り、落ちぶれていく一方で、アイメリアはその秘められた才能を開花させ、救い主の騎士と心を通わせ、自らの居場所を作っていくのだった。 ※小説家になろうさま・カクヨムさまにも掲載しています。

(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います

しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。

「無加護」で孤児な私は追い出されたのでのんびりスローライフ生活!…のはずが精霊王に甘く溺愛されてます!?

白井
恋愛
誰もが精霊の加護を受ける国で、リリアは何の精霊の加護も持たない『無加護』として生まれる。 「魂の罪人め、呪われた悪魔め!」 精霊に嫌われ、人に石を投げられ泥まみれ孤児院ではこき使われてきた。 それでも生きるしかないリリアは決心する。 誰にも迷惑をかけないように、森でスローライフをしよう! それなのに―…… 「麗しき私の乙女よ」 すっごい美形…。えっ精霊王!? どうして無加護の私が精霊王に溺愛されてるの!? 森で出会った精霊王に愛され、リリアの運命は変わっていく。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

悪役令嬢と呼ばれて追放されましたが、先祖返りの精霊種だったので、神殿で崇められる立場になりました。母国は加護を失いましたが仕方ないですね。

蒼衣翼
恋愛
古くから続く名家の娘、アレリは、古い盟約に従って、王太子の妻となるさだめだった。 しかし、古臭い伝統に反発した王太子によって、ありもしない罪をでっち上げられた挙げ句、国外追放となってしまう。 自分の意思とは関係ないところで、運命を翻弄されたアレリは、憧れだった精霊信仰がさかんな国を目指すことに。 そこで、自然のエネルギーそのものである精霊と語り合うことの出来るアレリは、神殿で聖女と崇められ、優しい青年と巡り合った。 一方、古い盟約を破った故国は、精霊の加護を失い、衰退していくのだった。 ※カクヨムさまにも掲載しています。

勝手に召喚され捨てられた聖女さま。~よっしゃここから本当のセカンドライフの始まりだ!~

楠ノ木雫
ファンタジー
 IT企業に勤めていた25歳独身彼氏無しの立花菫は、勝手に異世界に召喚され勝手に聖女として称えられた。確かにステータスには一応〈聖女〉と記されているのだが、しばらくして偽物扱いされ国を追放される。まぁ仕方ない、と森に移り住み神様の助けの元セカンドライフを満喫するのだった。だが、彼女を追いだした国はその日を境に天気が大荒れになり始めていき…… ※他の投稿サイトにも掲載しています。

処理中です...