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第2章
第39話:駆け引きと実験
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「カーツ殿を傀儡の王に戴冠させたら、竜の生産に専念するというのは本当か?」
強大な狂竜を大魔境の奥深くに誘導した翌日、リヴァーデール男爵に言われた。
安全になったと報告に行ったら、真剣な表情と声色で言われた。
「国王陛下と首脳陣が、俺を本気で懐柔する気になったのか?」
「ああ、昨日の狂竜騒動は、近隣の村でも声や姿が見られていた。
領地に残っていた貴族や家族も、あの強大な竜を見ていたのだ。
国難と言える狂竜の話が、国王陛下や首脳陣の所に届くのは当然だろう。
緊急報告されるような強大な竜を、カーツ殿は実際にを誘導してみせた。
強大な魔獣や竜を王都に誘導すると言った話、もう誰も笑えない」
「俺はこれまで一度も嘘をついた事がない、なんて言わない。
だが、よほどのことがない限り嘘は言わない。
嘘を口にするほど、命の次に大切な信用を失うからだ。
そういう意味では、この国の国王陛下や首脳陣は信用できない。
この国は戦いに勝つために何度も嘘を吐いてきた、信用できん。
まあ、俺を形だけ傀儡にして、その後で暗殺してしまったら、国が滅ぶぞ。
俺を殺せたとしても、一頭でも竜が生き残っていたら、国が滅ぶぞ」
「ああ、分かっている、あの狂竜を目の当たりにしたのだ。
カーツ殿と竜達の絆を目の当たりにしたのだ、敵討ちの危険は分かっている。
国王陛下の命はもちろん、自分の命も大切にしている、馬鹿な事はしない。
問題は首脳陣が暴走しないかだが……」
「首脳陣が、自分の欲の方が国よりも大切だと思うのなら、好きにすれば良い」
「……分かった、俺からもう一度陛下と首脳陣に言う」
「そんなに無理をしなくても良いんじゃないか。
正しい判断もできない連中の為に命を賭けても、馬鹿らしいだけだぞ」
「カーツ殿の考えが正しいのだろうが、俺は騎士だ。
騎士の誇りに賭けて不忠はできない」
「そうか、だったら好きにすればいい。
次の指示は本気で考えてから出すように言ってくれ。
それまでは好きにさせてもらうが、竜牧場には誰も近づけるな。
近づいた者は問答無用で殺す、俺が男爵の所に話しに行くから、待っていろ」
「……分かった、今はカーツ殿の方が力を持っている、しかたのない事だ。
これまでカーツ殿に高圧的な態度だった、やり返されるのも当然だ」
「俺の事は好きに取れば良い、ただ、約束した事はちゃんとやる。
今預かっている乗竜は、完璧に仕上げて大魔境を突破させる。
竜に括り付けて大魔境を突破させる人間を連れてきたら、約束通りやる。
クランメンバーに大魔境を突破させる訓練と調教も続ける」
「なに、これまで通りクランメンバーを教育してくれるのか?」
「ああ、約束したからな、俺は約束を守る、そちらがどうあろうと約束を守る。
その代わり、約束を終えた後に、どうするかは気分次第だ。
そちらが俺をどう遇するかによって決める」
俺は男爵を散々脅かしてから自分の竜牧場に戻った。
狂竜の時に班別けしたクランの竜を、そのまま愛竜達の配下にした。
その三頭か四頭の小さな群れに、貴族達から預かった乗竜をつけた。
乗竜達を完璧に操るために班別けして、分隊を作る事にしたのだ。
団体行動、群での行動を学ばせるために、七頭や八頭での動きを学ばす。
七頭八頭の班行動ができるようになってから、五十頭規模の動きを学ばせる。
最終的には千頭規模の団体行動ができるようにする!
「クルルルルル!」
班を率いて大魔境で狩りをしていたアンズが甘えてくる。
班の次席と三席になったクラン竜がアンズの次に甘えてくる。
狂竜騒動時に厩舎に隠れていた乗竜達は、俺に甘える資格がない。
なにより、貴族や国に返す約束の乗竜を可愛がっても、別れが辛いだけだ。
乗竜達にはビジネスライクに接しないと、後で自分が辛くなる。
クランの竜は、俺がクランを支配下に置けば自分の竜と同じになる。
クランを支配下に置けなくても、対価を渡して自分の竜にすればいい。
金はある、若くて将来性のある竜を買って交換すればいい。
貴族達の乗竜は愛竜やクラン竜に任せて、俺はスライムに専念した。
どれくらいの数のスライムを融合させるのが一番効率的なのか、検証した。
これまでは十頭か万単位で極端だったが、一番効率的な数が知りたい。
強大な竜を相手にヒットアンドアウェー、いや、攻撃して消える戦法。
これを使い続けるなら、融合させるスライムは小さくて多い方が良い。
だがそれでは、用意しなければいけないスライムの数が膨大になる。
今実験中のスライムでは、十体しか用意できない。
用意しようと思えば幾らでも繁殖させられるのだが、不安がある。
今の所は完全に支配下に置けているが、ずっと支配できるか分からない。
恐らくだが、ブリーダースキルはテイマースキルの上位互換だ。
だからテイマー以上に魔獣や竜を支配下に置ける。
支配下に置ける魔獣や竜の数も圧倒的に多いと思う。
だが、その上限が分からない。
どれくらい強さまでの魔獣や竜を支配下に置けるのかが分からない。
何頭の魔獣や竜を支配下に置けるかも分からない。
リトルスライムだけなら十万頭まで大丈夫なのは分かった。
だが、成体スライムも十万頭まで大丈夫なのかは、やってみないと分からない。
十万頭の成体スライムが一斉に支配下から逃れたら……考えたくない。
もう、これ以上スライムを繁殖させない。
繁殖させるとしたら、よほど自分に自信がついた時だ。
あるいは、今いるスライム達が死んでしまった時……考えたくもない!
強大な狂竜を大魔境の奥深くに誘導した翌日、リヴァーデール男爵に言われた。
安全になったと報告に行ったら、真剣な表情と声色で言われた。
「国王陛下と首脳陣が、俺を本気で懐柔する気になったのか?」
「ああ、昨日の狂竜騒動は、近隣の村でも声や姿が見られていた。
領地に残っていた貴族や家族も、あの強大な竜を見ていたのだ。
国難と言える狂竜の話が、国王陛下や首脳陣の所に届くのは当然だろう。
緊急報告されるような強大な竜を、カーツ殿は実際にを誘導してみせた。
強大な魔獣や竜を王都に誘導すると言った話、もう誰も笑えない」
「俺はこれまで一度も嘘をついた事がない、なんて言わない。
だが、よほどのことがない限り嘘は言わない。
嘘を口にするほど、命の次に大切な信用を失うからだ。
そういう意味では、この国の国王陛下や首脳陣は信用できない。
この国は戦いに勝つために何度も嘘を吐いてきた、信用できん。
まあ、俺を形だけ傀儡にして、その後で暗殺してしまったら、国が滅ぶぞ。
俺を殺せたとしても、一頭でも竜が生き残っていたら、国が滅ぶぞ」
「ああ、分かっている、あの狂竜を目の当たりにしたのだ。
カーツ殿と竜達の絆を目の当たりにしたのだ、敵討ちの危険は分かっている。
国王陛下の命はもちろん、自分の命も大切にしている、馬鹿な事はしない。
問題は首脳陣が暴走しないかだが……」
「首脳陣が、自分の欲の方が国よりも大切だと思うのなら、好きにすれば良い」
「……分かった、俺からもう一度陛下と首脳陣に言う」
「そんなに無理をしなくても良いんじゃないか。
正しい判断もできない連中の為に命を賭けても、馬鹿らしいだけだぞ」
「カーツ殿の考えが正しいのだろうが、俺は騎士だ。
騎士の誇りに賭けて不忠はできない」
「そうか、だったら好きにすればいい。
次の指示は本気で考えてから出すように言ってくれ。
それまでは好きにさせてもらうが、竜牧場には誰も近づけるな。
近づいた者は問答無用で殺す、俺が男爵の所に話しに行くから、待っていろ」
「……分かった、今はカーツ殿の方が力を持っている、しかたのない事だ。
これまでカーツ殿に高圧的な態度だった、やり返されるのも当然だ」
「俺の事は好きに取れば良い、ただ、約束した事はちゃんとやる。
今預かっている乗竜は、完璧に仕上げて大魔境を突破させる。
竜に括り付けて大魔境を突破させる人間を連れてきたら、約束通りやる。
クランメンバーに大魔境を突破させる訓練と調教も続ける」
「なに、これまで通りクランメンバーを教育してくれるのか?」
「ああ、約束したからな、俺は約束を守る、そちらがどうあろうと約束を守る。
その代わり、約束を終えた後に、どうするかは気分次第だ。
そちらが俺をどう遇するかによって決める」
俺は男爵を散々脅かしてから自分の竜牧場に戻った。
狂竜の時に班別けしたクランの竜を、そのまま愛竜達の配下にした。
その三頭か四頭の小さな群れに、貴族達から預かった乗竜をつけた。
乗竜達を完璧に操るために班別けして、分隊を作る事にしたのだ。
団体行動、群での行動を学ばせるために、七頭や八頭での動きを学ばす。
七頭八頭の班行動ができるようになってから、五十頭規模の動きを学ばせる。
最終的には千頭規模の団体行動ができるようにする!
「クルルルルル!」
班を率いて大魔境で狩りをしていたアンズが甘えてくる。
班の次席と三席になったクラン竜がアンズの次に甘えてくる。
狂竜騒動時に厩舎に隠れていた乗竜達は、俺に甘える資格がない。
なにより、貴族や国に返す約束の乗竜を可愛がっても、別れが辛いだけだ。
乗竜達にはビジネスライクに接しないと、後で自分が辛くなる。
クランの竜は、俺がクランを支配下に置けば自分の竜と同じになる。
クランを支配下に置けなくても、対価を渡して自分の竜にすればいい。
金はある、若くて将来性のある竜を買って交換すればいい。
貴族達の乗竜は愛竜やクラン竜に任せて、俺はスライムに専念した。
どれくらいの数のスライムを融合させるのが一番効率的なのか、検証した。
これまでは十頭か万単位で極端だったが、一番効率的な数が知りたい。
強大な竜を相手にヒットアンドアウェー、いや、攻撃して消える戦法。
これを使い続けるなら、融合させるスライムは小さくて多い方が良い。
だがそれでは、用意しなければいけないスライムの数が膨大になる。
今実験中のスライムでは、十体しか用意できない。
用意しようと思えば幾らでも繁殖させられるのだが、不安がある。
今の所は完全に支配下に置けているが、ずっと支配できるか分からない。
恐らくだが、ブリーダースキルはテイマースキルの上位互換だ。
だからテイマー以上に魔獣や竜を支配下に置ける。
支配下に置ける魔獣や竜の数も圧倒的に多いと思う。
だが、その上限が分からない。
どれくらい強さまでの魔獣や竜を支配下に置けるのかが分からない。
何頭の魔獣や竜を支配下に置けるかも分からない。
リトルスライムだけなら十万頭まで大丈夫なのは分かった。
だが、成体スライムも十万頭まで大丈夫なのかは、やってみないと分からない。
十万頭の成体スライムが一斉に支配下から逃れたら……考えたくない。
もう、これ以上スライムを繁殖させない。
繁殖させるとしたら、よほど自分に自信がついた時だ。
あるいは、今いるスライム達が死んでしまった時……考えたくもない!
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