婚約破棄追追放 神与スキルが謎のブリーダーだったので、王女から婚約破棄され公爵家から追放されました

克全

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第2章

第33話:二度ある事は三度ある

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 やらなければいけない事が多過ぎて、あっという間に二十日経った。
 最短の十五日は無理だったが、二十日で大魔境突破の条件が整った。

 万全を期すために、期限ギリギリまで調教を続けるべきだと言う者もいた。
 俺の事を心配して言ってくれているのは分かるが、余計なお世話だ。
 これ以上リヴァーデール男爵領に残して来たスライムを放置できない。

「カーツリーダー、本当に乗竜や駄竜を連れて行かれるのですか?」

 サブクランリーダーが本気で心配してくれている。
 もの凄く回復しているとはいえ、元の弱く年老いた姿を知っているのだ。
 弱い竜のせいで、実験が失敗するかもしれないと心配しているのだろう。

「ああ、連れて行く、あれだけ大口を叩いたんだ、結果は示さないとな」

 アルへシラス王国には、俺に好意的な者もいれば敵意を持っている者もいる。
 その両方に、俺を殺すのではなく利用した方が国の為だと思わせる。
 思わせられないと、全力で殺しにかかって来る。

 俺に好意的だからといっても安心できない。
 王家王国に忠義の貴族は、大切な家族を殺してでも王家王国の為に働く。
 まして他人でしかない俺の事など、眉一つ動かさずに殺すだろう。

 アルへシラス王国首脳陣全員に、俺は生かしておいた方が良いと思わせる。
 そのためには、駄竜も大魔境を突破せせられる実力を見せないといけない。
 軍竜の裸竜を突破させる程度では、もう驚かれないだろう。

「分かりました、もう何も言いません、御無事を祈っております」
「無事に戻って来て下さい、待っています」
「成功されると信じています、早く戻って来て下さい」
「カーツリーダーは必ず突破されると信じています」
「二度成功されたのです、三度目も成功されると信じています」

 色仕掛けの女性騎士候補を始めとしたクランメンバーに見送られた。
 三度目ともなると、大魔境突破に対する不安はなかった。

 ★★★★★★

「大魔境を突破してきました、少し休ませてください」

 三度目の大魔境突破も死傷する事なく成功した。
 二度目と同じように、目的のリヴァーデール男爵領に戻って来られた。
 少しだけ疲れていたが、休む事無く男爵に帰領報告した。

「よく無事に戻った、三度も成功させるなんて、もう何の不安もない。
 問題は率いた竜の生存率だ、何頭やられたんだ?」

「一頭もやられていませんよ、九頭率いて九頭全部突破させました」

「なんと、被害なしだと、信じられん!」

「信じられないと言われても、やって見せたんですから信じてください。
 嘘や誤魔化しがないかは、密偵の報告と照らし合わせてください。
 出発した時に九頭だったと証言してくれるはずです」

「すまん、疑っている訳じゃない、あまりの快挙に、口にしてしまっただけだ。
 これほどの快挙を成し遂げたカーツ殿を、もてなさない訳にはいかん。
 領地をあげてお祝いするから、ここにいてくれ」

「気持ちはうれしいのですが、仮設住宅が気になります。
 長くても五日で帰って来る予定だったのに、三十日も留守にしてしまった。
 スライムの餌に用意していた雑竜が腐っていると思う」

「ああ、それなら大丈夫だ、俺が毎日様子を見ていた。
 カーツ殿がカギを預けていた土木スキル持ちの猟師から鍵を借りた。
 実験中のスライム箱は開けなかったが、厩舎の掃除は毎日やった。
 陰干ししていた雑竜も、腐る前に氷室に放り込んである」

「それは有難うございます、そこまでしていただけると思っていませんでした。
 ですが、それでも、スライムの事が心配です。
 餌も水も与えられずに三十日も経っているのです。
 もしまだ生きているなら、今直ぐ行って餌を与えないといけません」

「スライムの何がそんなに大切なのかは分からないが、あれだけの実績を示したカーツ殿が大切だと言うのだ、邪魔をする訳にはいかんな。
 分かった、祝賀会はカーツ殿の手が空いた時にする。
 できるだけ早く祝賀会を開けるように、何でも手伝うぞ」

「手伝ってくださると言うのでしたら、スライムの餌を売ってください。
 家畜の餌にする血や内臓で構いません、直ぐに仮設住宅に運んでください。
 いえ、僕が運べる分は全部手渡ししてください、今直ぐください」

「おい、おい、おい、スライムよりも竜の餌だろう。
 消耗しきっている竜達の餌を準備してやる、どれだけ用意したらいい?」

「竜達は大丈夫です、満腹なので餌の必要はありません。
 安心して寝られる場所さえあれば大丈夫です」

「……何を言っているんだ、理解できないんだが、何をやったんだ?!」

「何を驚いているのです、驚くような事ではないでしょう?」

「馬鹿野郎、驚く事だ、大魔境突破は命懸けの不眠不休だろう?!」

「命懸けなのも不眠不休なのも否定しません、その通りです。
 ですが、食事ができない訳ではありません。
 特に竜は、走りながら魔蟲や雑竜を食べられます。
 今回も安全な迂回路を使って、害竜や強大な魔獣を避けられました。
 好きな物を選んで食べたりはできませんでしたが、満腹にはできました」

「……そうか、俺が無知なのだな、分かった、スライムの餌を用意する」

「では僕は先に仮設住宅に行って準備してきます。
 もしかしたら疲れて寝てしまうかもしれませんが、その時は起こしてください」

「そのまま寝ていろ、快挙を成し遂げた日くらいは休め。
 スライムの餌やりくらい俺がやってやる」

「それは困ります、餌を与えない実験をしているスライムもいるのです。
 もし寝てしまっていたら、蹴り飛ばしてでも起こしてください!」
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