婚約破棄追追放 神与スキルが謎のブリーダーだったので、王女から婚約破棄され公爵家から追放されました

克全

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第2章

第30話:尊敬

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 俺はギルドマスターと話をした翌日に船に乗った。
 一昼夜かけてタリファ王国に行った。

 前回と違ってクランメンバーの護衛はないが、船員が全員護衛だった。
 民間商船を装ったアルへシラス王国の軍船だった。

 港にクランメンバー二十人が迎えに来てくれていた。
 恐らくだが、毎日伝書鳩で定時連絡しているのだろう。
 五十人しかいないクランメンバーから二十人だ、大切にされているのだろう。

「お帰りなさい、お待ちしておりました!」

 露骨な色仕掛けをしてきた女騎士候補が息を弾ませて言う。
 計算ずくで息を弾ませて色気を出しているのなら、見事だと思う。

 だが、単なる色仕掛けではないのは、大魔境を突破しようという決意で分かる。
 どうしても貴族に戻りたい理由があるのだろう。

「ああ、出迎えてくれてありがとう。
 拠点となっている村に直行すると聞いているが、変更はないか?」

「ありません、村まで護衛させていただくことになっています」

 女性のクランメンバーは九人いるのだが、その内の四人が来ている。
 割合的に可笑しくないのだが、俺から見て美人順になっているのは何故だ?
 その中でも一人だけがアプローチして来るのは何故だ?

「竜は買えたのかい?」

 悪い予感がしたので聞いてみた。

「当初考えていた予算内で買える竜を八頭だけ買えました。
 年老いた竜か古傷がある竜なので、役に立つか微妙です。
 リーダーに確認していただいて、使えないなら繁殖させる予定です」

 まずいな、クランメンバーに能力もやる気もあったのが裏目に出ている。
 ギルドマスターが臭わせていたのかもしれないが、計画を前倒しに実行している。
 マスターはこれから竜を買わせるような口ぶりだったが、既に買った後だ。

「雌竜が予算内で買えたのか、血統が悪いのではないか?」

「はい、駄竜しか生まない悪い血統のようです。
 絶対に駄竜にしか育たない子供でも、卵を生ませて二割を一歳まで育てられたら、どれほど血統が悪くても買ったお金は回収できます。
 それと、サブが言われるには、子供を育てている間は疑われないとの事です」

「そうだな、他所から来たクランが、大した稼ぎもないのに同じ場所に居続けると疑われるが、竜の繁殖を始めたら動かなくても疑われない。
 それに、下手に乗竜や軍竜を育ててしまったらタリファ王国の戦力になる。
 駄竜の生産を始めるのが一番かもしれない」

「はい、サブもそのように言われていました」

 俺達は半日かけて拠点としている猟師村についた。
 全員が騎乗していたらもっと早く移動できるのだが、俺以外は徒歩だ。

 アルへシラス王国から竜を流出させたくなかったのだろう。
 タリファ王国で安く簡単に竜が買えると思っていたのだろう。
 その見込み違いがあらゆる面で悪影響になっている。

 騎士候補なのだから竜に乗れないはずがない。
 元貴族だと聞いているから、幼い頃から騎乗の訓練はしていたはずだ。
 買った竜に乗れない理由が竜側にあるのだ、そんな状態か心配だ。

 ただ、心配していたアクシデントはもちろん、尾行される事もなかった。
 アルへシラス王国との違いに笑ってしまいそうになった。
 俺が何もしなくてもアルへシラス王国に滅ぼされる未来しかない。

「リーダー、お留守の間に予算の許す範囲で竜を買い集めました。
 ろくな竜がいませんが、最低限は使えると思います。
 ただ、リーダーと私では竜を見る視点が違うかもしれません。
 目的に使えるか確認をお願いします」

 俺が到着するなりサブリーダー、本当のクランリーダーが言って来た。
 
「分かった、厩舎に案内を頼む」

「こちらです、どうぞ」

 俺はサブリーダーに案内されて竜達がつながれている厩舎に行った。
 正直言って、命を預ける竜を住ませる場所とは思えない汚さだった。

「馬鹿野郎、駄竜でも乗竜でもこんな世話をしていてどうする!?
 戦場ではその場にいる竜や馬を使うしかないのだぞ!
 駄竜であろうが乗竜であろうが、最良のコンディションを保て!
 竜や馬が力を発揮するかどうかで、自分の生き死にが決まるのだぞ!」

「申し訳ありません、自分が不明でした、直ぐに掃除させていただきます!」

「じゃかましい、お前のような危機感のない愚か者に任せられるか!
 俺がやる、お前は本国の意向を優先していれば良い、どけ!」

 竜への愛情が無さ過ぎて、ブチ切れてしまった。
 本国にどのような報告をされても構わないから、竜に係わらせないと誓った。
 厩舎に溜まっていた糞尿の掃除を独りで始めた。

「お手伝いさせていただきます!」

 色仕掛け女が即座に手伝うと言って来た。

「「「「「私も手伝わせていただきます」」」」」
「僕も手伝わせていただきます」
「「「「「自分も手伝わせていただきます」」」」」
 
 俺を迎えに来てくれていた二十人が一斉に手伝ってくれた。
 そんなに人手はいらないし、竜の事が分かっていない奴は邪魔になる。

「ありがとう、気持ちは有難いが、竜の扱いがなっていない、まだまだ未熟だ。
 手伝う気が有るなら、魔境に行ってスライムを集めてくれ」

「「「「「はい!」」」」」

「君から君までは、そのまま掃除を続けてくれ」

「「「「「はい!」」」」」

 二十人に指示を出したが、サブリーダーがまだその場にいた。

「サブ、そこにいても何にもならない、自分にできる事をやってくれ。
 サブは厩舎掃除をする立場ではないだろう?
 自分にしかできない事を確実にやってくれ」

「……はい、分かりました、やるべき事をやってきます、申し訳ありませんでした」

 邪魔な人間を排除して竜の確認をした。
 最安値で買った駄竜と乗竜だから、平均的な益竜よりも小さい。
 歳も取っているし、古傷を庇う動きをしている。

「【ブリーディング・アイ】」
 
 スキルを使って繁殖相手として優秀かどうか確かめる。
 アウトブリードで奇跡の繁殖相手かもしれないから。
 とはいえ、そんな都合の良い話は滅多にない。

「薬草はあるか? 竜用でなくても良い、人間用でも馬用でもいい」

「直ぐに探してきます!」

 古傷を治して痛みを取ってやれば、少しでも早く長く走れる。
 痛みを取ってから、痛みを庇って悪くなった動きを矯正しても早く長く走れる。

 年齢はどうしようもないが、栄養状態を良くすれば早く長く走れる。
 それが結果的に主人の命を助ける事がある。

「手の空いている者は大魔境で薬草を集めて来てくれ、数が必要だ」

「「「「「はい!」」」」」
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