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第2章
第29話:スライムは縮むのか、計画も縮むのか?
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キッチリ三日間の休みがもらえたので、その間はスライムの実験を繰り返した。
スライムの餌は、腐らないように王都に行く前に陰干しした雑竜を与えた。
王都に行ったら三日は帰れないので、三日間で与えられるだけ餌を与えた。
「凄いな、三日で二十五センチのリトルスライムに育つとは思わなかった」
たった一日で、魚卵よりも小さかった新生児スライムが、ピンポン玉大のベビースライムなっただけでなく、促成栽培のようにリトルスライムになった。
一方、全く餌を与えないようにしている成体スライムは、明らかに縮んでいる。
このままリトルスライやベビースライムの大きさまで縮むのか確かめたい。
縮んだスライムが、水を与えるだけで成体スライムに戻るか確かめたい。
「カーツ殿、冒険者ギルドから呼び出しだ、王都に行ってくれ」
男爵は約束通り三日間は休みをくれた。
男爵ではなくマスターや団長の考えかもしれない。
もしかしたら王直々の考えかもしれないが、俺には分からない。
「お役目ご苦労様です!」
王都の城門を通る時、以前護衛をしてくれた門番兵が最敬礼してくれる。
王国兵士がただの冒険者に敬礼する事は絶対にない。
背後関係があって元貴族に敬礼する事はあっても、貴族に対するような最敬礼は絶対に許されない。
それなのに、門番兵は俺を貴族のように扱う
もの凄くめんどくさい状態になっているようだ、困った、冗談で言った事なのに。
まあ、いい、めんどくさい面も大きいが、その分竜の育成に専念できる。
問題は貴族に対する最敬礼をされるだけではなかった。
城門から護衛がついたのだ、以前よりも多い、二十人もの護衛がついたのだ。
そのまま冒険者ギルドまで、護衛という名目の見張りがついた。
「やあ、よく来てくれたね、少しは休めたかい?」
冒険者ギルドについて早々、マスターの部屋に案内された。
先に面談していた奴が話を切り上げられて追い出された。
悪いのはマスターで俺ではない、だから睨むな。
「ええ、俺も竜も十分休めました、いつでもタリファ王国に行けます」
「カーツ殿は話が早くて助かるよ。
明日の朝に船が出るように手配している、何か必要な物はあるか?」
「死んでも構わない竜が欲しいです。
男爵から聞いているとは思いますが、次の突破に裸竜を連れて行きます」
「ああ聞いているよ、その実験が成功したら侵攻計画が一気に現実的になる。
そのためなら竜も金も惜しくない、惜しくないが、出費は少ない方が良い。
それに、できればタリファ王国の竜を減らしたい。
金を渡すから、タリファ王国で竜を買ってくれ」
「俺はタリファ王国で商売や狩りをやっていた。
見習にもなれないような小さな時から、公子が後ろ盾だと言ってやっていた。
とても珍しい事だったから、俺の顔を覚えている者も多いだろう。
そんな俺が高価な竜の売買をする訳にはいかない、正体がバレてしまう。
誰かほかの奴にやらせてくれ、竜の目利きができる奴にやらせてくれ。
最初は多くの犠牲が出るだろうから、見極めに失敗しても良い」
「タリファ王国で買う竜だが、駄竜でも構わないのかい?」
「大半は駄竜でも構わないですが、少しは乗竜も欲しいですね。
俺も頻繁に大魔境を突破したい訳じゃない、少ない実験で済ませたい。
駄竜でも大丈夫なのか、最低限乗竜が必要なのか、一度で確認したい」
「そうだね、私も三日に一度ずつ大魔境を突破しろとは言い難いね。
分かったよ、お金はかかるが、できるだけ多くの竜を買い集めさせよう。
タリファ王国の相場では、駄竜で十万アル、乗竜で百万アルだったね」
「それは年老いた何時死ぬか分からないような竜の値段ですよ。
駄竜でも乗竜でも、若くて長く働ける竜はもっと高いです。
能力で劣り調教もされていない駄竜でも、平均三千アルはしますよ。
軍竜に劣る能力ですが、騎乗する分には全く問題のない乗竜は三百万アルはしますから、そのつもりで資金を用意しておいてください。
何よりタリファ王国はアルへシラス王国の五分の一の国なのです。
一度に多くの竜を買うと相場が高騰します、それを忘れないでください」
「参ったな、想定していたよりもずっとお金がかかる。
かと言って我が国の大切な竜を無駄に死なせるわけにはいかん。
カーツ殿、何とかならないか?」
「次の突破まで時間をかけて、徐々に竜を集めるしかありません。
タリファ王国だけで竜を集めようとするから無理があるのだ。
近場の大国なら、マニルバ王国とエステボナ王国から集めればいい。
時間に余裕があるなら、もっと遠方の超大国から竜を集めれば良い」
「……俺の一存では予算も期限も勝手に変えられない、陛下に相談する。
数日中に結論を出すから、それまで待っていてもらえないか?」
「待つのは構わないですが、待つなら男爵領に戻りたい。
結論が出るまで男爵領でスライムの実験をしたい」
「それは駄目だ、それだと結論が出てから船でタリファ王国に行く事になる。
それでは少なくても二日、多ければ三日は遅れてしまう。
実行が決まったら伝書鳩を飛ばすから、即座に指示通り動いてくれ」
「そう言うと思っていましたよ、先に移動して、できるだけの事をしておきます。
当初の予算で買える値段の駄竜と乗竜を買っておきます。
予算的に買えない値段の竜は諦めて送ってくれるのを待つ、それで良いですね?」
「ああ、それで良い、それで頼む。
できるだけ早く結論を出して伝書鳩を飛ばす、準備しておいてくれ」
スライムの餌は、腐らないように王都に行く前に陰干しした雑竜を与えた。
王都に行ったら三日は帰れないので、三日間で与えられるだけ餌を与えた。
「凄いな、三日で二十五センチのリトルスライムに育つとは思わなかった」
たった一日で、魚卵よりも小さかった新生児スライムが、ピンポン玉大のベビースライムなっただけでなく、促成栽培のようにリトルスライムになった。
一方、全く餌を与えないようにしている成体スライムは、明らかに縮んでいる。
このままリトルスライやベビースライムの大きさまで縮むのか確かめたい。
縮んだスライムが、水を与えるだけで成体スライムに戻るか確かめたい。
「カーツ殿、冒険者ギルドから呼び出しだ、王都に行ってくれ」
男爵は約束通り三日間は休みをくれた。
男爵ではなくマスターや団長の考えかもしれない。
もしかしたら王直々の考えかもしれないが、俺には分からない。
「お役目ご苦労様です!」
王都の城門を通る時、以前護衛をしてくれた門番兵が最敬礼してくれる。
王国兵士がただの冒険者に敬礼する事は絶対にない。
背後関係があって元貴族に敬礼する事はあっても、貴族に対するような最敬礼は絶対に許されない。
それなのに、門番兵は俺を貴族のように扱う
もの凄くめんどくさい状態になっているようだ、困った、冗談で言った事なのに。
まあ、いい、めんどくさい面も大きいが、その分竜の育成に専念できる。
問題は貴族に対する最敬礼をされるだけではなかった。
城門から護衛がついたのだ、以前よりも多い、二十人もの護衛がついたのだ。
そのまま冒険者ギルドまで、護衛という名目の見張りがついた。
「やあ、よく来てくれたね、少しは休めたかい?」
冒険者ギルドについて早々、マスターの部屋に案内された。
先に面談していた奴が話を切り上げられて追い出された。
悪いのはマスターで俺ではない、だから睨むな。
「ええ、俺も竜も十分休めました、いつでもタリファ王国に行けます」
「カーツ殿は話が早くて助かるよ。
明日の朝に船が出るように手配している、何か必要な物はあるか?」
「死んでも構わない竜が欲しいです。
男爵から聞いているとは思いますが、次の突破に裸竜を連れて行きます」
「ああ聞いているよ、その実験が成功したら侵攻計画が一気に現実的になる。
そのためなら竜も金も惜しくない、惜しくないが、出費は少ない方が良い。
それに、できればタリファ王国の竜を減らしたい。
金を渡すから、タリファ王国で竜を買ってくれ」
「俺はタリファ王国で商売や狩りをやっていた。
見習にもなれないような小さな時から、公子が後ろ盾だと言ってやっていた。
とても珍しい事だったから、俺の顔を覚えている者も多いだろう。
そんな俺が高価な竜の売買をする訳にはいかない、正体がバレてしまう。
誰かほかの奴にやらせてくれ、竜の目利きができる奴にやらせてくれ。
最初は多くの犠牲が出るだろうから、見極めに失敗しても良い」
「タリファ王国で買う竜だが、駄竜でも構わないのかい?」
「大半は駄竜でも構わないですが、少しは乗竜も欲しいですね。
俺も頻繁に大魔境を突破したい訳じゃない、少ない実験で済ませたい。
駄竜でも大丈夫なのか、最低限乗竜が必要なのか、一度で確認したい」
「そうだね、私も三日に一度ずつ大魔境を突破しろとは言い難いね。
分かったよ、お金はかかるが、できるだけ多くの竜を買い集めさせよう。
タリファ王国の相場では、駄竜で十万アル、乗竜で百万アルだったね」
「それは年老いた何時死ぬか分からないような竜の値段ですよ。
駄竜でも乗竜でも、若くて長く働ける竜はもっと高いです。
能力で劣り調教もされていない駄竜でも、平均三千アルはしますよ。
軍竜に劣る能力ですが、騎乗する分には全く問題のない乗竜は三百万アルはしますから、そのつもりで資金を用意しておいてください。
何よりタリファ王国はアルへシラス王国の五分の一の国なのです。
一度に多くの竜を買うと相場が高騰します、それを忘れないでください」
「参ったな、想定していたよりもずっとお金がかかる。
かと言って我が国の大切な竜を無駄に死なせるわけにはいかん。
カーツ殿、何とかならないか?」
「次の突破まで時間をかけて、徐々に竜を集めるしかありません。
タリファ王国だけで竜を集めようとするから無理があるのだ。
近場の大国なら、マニルバ王国とエステボナ王国から集めればいい。
時間に余裕があるなら、もっと遠方の超大国から竜を集めれば良い」
「……俺の一存では予算も期限も勝手に変えられない、陛下に相談する。
数日中に結論を出すから、それまで待っていてもらえないか?」
「待つのは構わないですが、待つなら男爵領に戻りたい。
結論が出るまで男爵領でスライムの実験をしたい」
「それは駄目だ、それだと結論が出てから船でタリファ王国に行く事になる。
それでは少なくても二日、多ければ三日は遅れてしまう。
実行が決まったら伝書鳩を飛ばすから、即座に指示通り動いてくれ」
「そう言うと思っていましたよ、先に移動して、できるだけの事をしておきます。
当初の予算で買える値段の駄竜と乗竜を買っておきます。
予算的に買えない値段の竜は諦めて送ってくれるのを待つ、それで良いですね?」
「ああ、それで良い、それで頼む。
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