婚約破棄追追放 神与スキルが謎のブリーダーだったので、王女から婚約破棄され公爵家から追放されました

克全

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第2章

第28話:快挙

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「大魔境を突破してきました、少し休ませてください」

 今回もギリギリの状態だったが、何とか大魔境を突破できた。
 ギリギリではあるが、ほんの少しだが、一回目より楽だった気がする。
 俺が指示しないでいると、竜達が安全な迂回路を考えてくれると分かった。

 前回は最短距離を真直ぐ突っ切ると決めて走り抜いた、俺が主導していた。
 だが今回は、竜達を信じて自由に走らせてみた。

 一度突っ切って目指す街が分かっていたからできた事だが、上手くいった。
 竜達は何度も大きく迂回したが、それでも正確に男爵領に戻ってこられた。

「疑っていたわけではないが、二度連続で大魔境を突破するとはな!
 もう偶然でも運でもない、明らかな実力だ、素晴らしい!
 後は軍を率いて大魔境を突破できるかだが……」

 リヴァーデール男爵が手放しでほめてくれるが、正直ほめ過ぎだと思う。
 人竜一体の力で成し遂げられた事で、俺独りの力ではない。
 とはいえ、俺無しではできなかったのも紛れもない事実だ。

「いきなり軍を率いての突破は危険過ぎる、大損害を受けたら国が沈む。
 最初は全滅しても良い戦力で試すべきだ」

「ほう、好きに言ってくれる、全滅しても良い戦力など何所にあるのだ?」

「死刑相当だが、少しでも罪を償わせるために、犯罪者奴隷にした奴がいるだろう?
 そんな奴隷の中で、竜に乗れる奴を選んで突破させればいい。
 いや、別に人などいなくていい、最初は竜だけ集めてくれれば良い」

「犯罪者奴隷を乗せての突破は分かるが、竜だけで突破させる意味がどこにある?」

「人を乗せない身軽な状態なら、駄竜や乗竜でも大魔境を突破できるのか?
 恐怖で狂った人間の指示さえなければ、竜だけなら、大魔境を突破できるのか?
 それが分かれば、優秀な騎士と複数の騎士だけで戦う手がある」

「なるほど、未熟な人間は最初から連れて行かない作戦か」

「それと、能力の劣る騎士や兵士は竜に括り付けて突破させても良い。
 憶病で未熟な人が操るから突破できないのなら、人間に操らせなければいい。
 全部、裸竜なら大魔境を突破できるかどうか確かめてからの話だがな」

「ふむ、カーツ殿の言う通りなら、思っていたよりも早く侵攻できる。
 もう何度が突破実験をしてもらわないといけないだろうが、面白い。
 領主としての責任がなければ俺も突破実験に参加したいぞ!」

「命懸けなのに何の見返りもない突破なんて、本当はやりたくねぇよ!」

「ワッハハハハ、見返りはあるぞ、強制依頼のはした金があるぞ」

「大魔境で楽に狩れる魔獣一頭の方がよほど金になるよ!」

「すまん、すまん、俺からも褒美に色を付けるように言っておく。
 名誉爵位はいらないという話だから、平民として土地がもらえるように話す。
 商業ギルドと揉めたとも聞いている、商人株が欲しいのか?」

「もう商人株なんかいらないですよ。
 男爵領で商売ができるなら、王都で商売できなくても何の問題もない。
 王都の商人が男爵領に足を運ぶしかないくらいの、良い商品を売りますから」

 「そんな商品を売ってくれるのなら俺もうれしいが、それは竜だよな?
 今実験しているスライムではないよな?」

「それは実験を繰り返してみなければ分かりません。
 もしかしたらスライムが高額商品になるかもしれません。
 まあ、九割九分九厘、何の価値もないという結果になるでしょう。
 ただ、竜だけは一頭で千万アルの値がつく子を生ませますよ」

「そうなってくれれば、俺は何もせずに大儲けできて助かる」

「だからと言って男爵に圧力をかける訳ではありませんが、要求があります。
 やりたい事があるので三日ほど休ませてください。
 さすがに又直ぐに大魔境を突破しろというのは無しですよ」

「三日で良いのか、たった三日休むだけで三度目の突破をするのか?!」

「タリファ王国に残っているクランの連中に、無事な顔を見せないといけません。
 彼らのやる気をなくさせないためにも、早く顔を見せた方が良い。
 手柄を焦って勝手に大魔境に挑まれては困ります。
 それで失敗されたら、俺の成功にケチがついてしまう。
 ただ、俺が言っても対抗心で言う事を聞かない奴もいると思う。
 連中を絶対服従させられる人から、大魔境に挑まないように命じてもらいたい」

「分かった、伝令を送って今の話を全部伝えさせる。
 連中を絶対服従させられる人間なら心配いらない、既に派遣されている。
 サブクランリーダーを務めている奴は王国でも有数の騎士だ。
 俺のような流れ者が、下位貴族スキル持ちが、軍功で貴族になった訳じゃない。
 神与の儀式で平民落ちしながら、軍功で一代貴族になった奴だ。
 同じ事を目指しているクランの連中は必ず言う事を聞く」

 そうか、やっぱりアイツが真のクランリーダーなのだな。
 俺がクランを掌握して、騎士候補を配下にしないように警戒しているのだろう。
 危険だ、もっと警戒させてしまうと、殺されてしまう。

 難しいな、無能で無力だと思われたら殺されて寅さん達を奪われる。
 能力のある野心家だと思われたら、力のないうちに殺そうとする。
 どこまで実力を見せるべきか、見極めが難しい。

「三日間は男爵領に留まれる前提で実験をします。
 後で、直ぐに王都に行けと言われても断りますよ、良いですね?!」

「悪いが絶対の約束はできない。
 冒険者ギルドのマスター命令や王都警備団の団長命令なら無視してやる。
 だが、王命があれば別だ、剣に向けてでも直ぐに王都に行かせる」

「分かりました、王命には従います、命令通り王都に向かいます。
 ですが、二人の命令なら無視しますよ、良いですね?」

「ああ、いいぞ、マスターと団長の命令は無視して良い、後押ししてやる」
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