婚約破棄追追放 神与スキルが謎のブリーダーだったので、王女から婚約破棄され公爵家から追放されました

克全

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第1章

第23話:異常なスライム

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「面白い、ここまで面白いとは思わなかった」

 思わず独り言が出るくらい面白い実験結果だった。
 スライムの研究を始めて三日目に、こんな事になるとは思わなかった。
 
 きっかけは、できるだけ早く子供を成長させようと思った事だ。
 万以上の、魚卵以下の小さなベビースライムのままでは何の実験もできない。
 できるだけ多くの餌を与えて大きく育てようとしたのだ。

 魔獣の血と内臓を領民に無償で与えると、男爵に約束してしまった。
 それは無かった事にできないので、狩る数を増やす事にした。
 圧倒的な数の魔獣や竜を狩り、家畜の餌が大量に余るようにした。

「これだけ血や内臓があったら家畜が食べ切れないだろう?
 もし糞尿用のスライムが食べてしまったら、早く成体になって危険だ。
 使わない分はスライムの実験に使うから、そこに置いておいてくれ」

 俺は領民に血と内臓を渡す時に言っておいた。
 領民が密かに食べている胃や心臓、竜が好む肝や腸以外が残った。
 人も竜も食べたがらない、肺や腎臓が全部残されていたのだ。

 それを全てスライム箱の中にいるベビースライムに与えた。
 子が親に食われてしまう可能性もあったので、ベビースライムだけの箱を造った。

 ベビースライム同士の共喰い防止は諦めた。
 十万を軽く超えるベビースライム一体ずつにスライム箱は用意できない。
 十組のスライム夫婦が産んだベビースライムに、十個のスライム箱を用意した。

 それと、さすがにこれ以上の子供はいらないので、成体スライムは個体分けした。
 繁殖しないように、成体スライムは一体ずつスライム箱に入れた。

 大魔境に放す事も考えたが、実験の精度を考えれば、親は同じ組み合わせが良い。
 再検証をしたくなった時に、同じ親がいれば一番正確な再検証ができる。

 だから元の組み合わせが分かるようにして、一体ずつ保管した。
 どうせなら何か実験がしたいと思い、成体スライムでも別の検証する事にした。
 全く餌を与えなかったらどうなるのかを確かめる事にした。

 その結果、餌を与えずにスライム箱に入れた成体スライムが縮んでいた。
 ほんの少しだが、体積が減っていた。

 一方のベビースライムを入れた箱だが、とんでもなく成長していた。
 イクラよりも小さかったベビースライムが、ピンポン玉くらいになっていた。

 どれくらい餌をやれば、どれだけ大きくなるのか知りたくなった。
 餌を与え過ぎたら食べ残すのか、食べ過ぎて死んでしまうのか知りたくなった。

「一番早く狩れるモノを手当たり次第狩るぞ」

 全部俺の興味本位の我儘だった。

「「「「「「クルルルルル!」」」」」

 なのに、竜達は喜んで付き合ってくれた。
 一番簡単に狩れる、雑竜と呼ばれる商品価値のない竜を狩って持ち帰った。
 血や内臓を回収する領民に見せて、竜の保存食にすると説明した。

 だが実際には、ベビースライムを育てるための餌だった。
 スライム箱の半分を占めるくらいの雑竜を、餌として放り込んだ。

 もともと二体の成体スライムを入れて繁殖させるためのスライム箱だ。
 スライムが成体と言われるようになるのは、身長が五十五センチになってからだ。
 幅もほぼ同じだから、スライム二体を入れる箱はかなり大きい。

 高さ一メートル、奥行きも一メートル、幅二メートルの巨大な箱だ。
 そんな巨箱半分を占めるだけの雑竜を放り込んで、再び狩りに行った。
 自分の興味を優先して、雑竜ばかり狩っている訳にはいかない。

「今度は少しは値打ちのある獲物を狩るぞ」

 本当に、興味のある対象を見つけてしまった時の俺は我儘だ。

「「「「「「クルルルルル!」」」」」

 そんな我儘な俺に、楽しそうに付き合ってくれるのは竜だけだ。
 人間の女性ではこうはいかない、特に付き合っている女性は激しく文句を言う。

 今度は、雑竜ではなく害竜と言われるくらいの強く大きな竜を狙う。
 寅さんやサクラ達の繁殖相手になるくらいの竜を探す。
 生け捕りにできたら最高なのだが、獲物として狩ってもそれなりの値段になる。

 雑竜の皮はあまりにも簡単に手に入るので、自分で革や竜皮紙にしない限り、ほとんど価値がない素材だが、害竜と呼ばれるくらい強く大きな竜の皮は別だ。
 厚くて硬くて丈夫だから、皮鎧の素材としてそれなりの価値がある。

 雑竜でも比較的大きな物は食材として利用される。
 まして害竜と呼ばれるくらい大きくなると、ほぼ間違いなく食材にされる。
 ただ、魔獣や獣に比べて身体が細い竜は、大きさの印象の割に肉が少ない。

 竜種の肉は脂分が少なく、鳥のササミのような食感だ。
 種類によって、パサパサのササミになるかジューシーなササミになるかだ。
 ただ、パサパサのササミであっても、調理法しだいでとても美味しくなる。

 茹でたり蒸したりして、繊維に沿って細くほぐしてマヨネーズに和えたら最高だ!
 同じ和えるにしても、胡麻で和えるのも美味しい。
 ニンニクオリーブオイルで和えて野菜と一緒に食べても美味しい。

 個人的に好きなのは唐揚げやフライだ。
 下味をつけてから揚げると、脂の少なさを補って香ばしく美味しくなる。
 揚げたてのプチプチと音を立てた状態の唐揚げは、特に美味しい。

 フライはパン粉の香ばしさと生地につけた味が決め手になる。
 食感も、噛みしめた時のパン粉のザクザク感が最高の歯ごたえだ。
 舌だけでなく歯まで幸せにしてくれる、最高の料理法だ。

 それと、ササミのフライは中に具材を詰めて揚げると更に美味しくなる。
 開いて二倍の大きさにしたササミの中に練り梅を塗ってから包む。
 梅の香りと味がご飯のおかずにも酒の肴にも最高だ。

 ただ、俺が一番挟みたいのはチーズだ。
 チーズを挟んだフライが竜肉料理で一番美味しいと思う。

「金になる獲物は一体で良い、他は雑竜で構わないぞ」

「「「「「「クルルルルル!」」」」」
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