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第1章
第19話:住み心地
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「大魔境に狩りに行ってきます」
「好きにされよ、いちいち俺に断らなくても良いぞ」
「次からはそうさせてもらう」
リヴァーデール男爵は平民の俺が対等に話しても気にしない性格だった。
アルへシラス王国有数の騎士だが、平民上がりでざっくばらんな性格だ。
だから俺も気兼ねなく対等の話ができるようになった。
「行くぞ」
俺は愛竜達に声をかけて大魔境に向かった。
「「「「「クルルルルル!」」」」」
一緒に狩りができるのが楽しいのか、愛竜達も御機嫌だ。
大魔境は、普通の森では考えられない密度で魔獣や獣が住んでいる。
大魔境は植物の成長が早いから、草食の魔獣や獣が数多く生きていける。
草食の魔獣や獣が多いほど、多くの肉食魔獣や肉食獣が生きていける。
少々多くの魔獣や獣を狩っても、害虫が湧くように数が戻る。
自分が食われる危険を無視すれば、中身が無尽蔵に湧く宝箱と同じだ。
多くの人間を魅了して引きずり込み命を奪っていく魔境と呼ぶに相応しい場所だ。
ヒュルルルル……ズン……「キュヒーン」
俺が合成長弓を引き絞って放つ度に魔獣が狩れる。
愛竜達の荷籠に乗せて運べる大きさと重さは限られるが、それで十分だ。
「男爵閣下、狩った獲物の買い取り額を決めていなかったですね。
幾らで買ってくれますか?
買い取り価格が不当だと思えば、王都まで売りに行きますよ」
「不当な値段で買い叩く気はないが、王都まで運ぶ手間と時間は利に乗せる。
不当だと思うなら自分で売りに行けばいいが、その分狩りの時間が減るぞ」
「それは分かっています、その上で、値段を聞いて売るか売らないか決めます」
「そうか、だったらそのフロスト・ディアは一頭で四千アルだ。
その魔鳥は一羽百アル、そっちの鳥で一羽十アルで買い取ろう。
内臓を抜いているが、どうした、魔境に捨ててきたのか?」
「その値段で買ってくれるのなら全部売ります。
少し安い気もしますが、自分で売りに行く手間と時間を考えたら、その分を狩りに使った方が儲けられます。
内臓は愛する竜達に食べさせました。
食べ切れない分は魔境に捨てて来た、今頃スライムが食べているでしょう」
俺らしいと言えば俺らしいのだが、言葉使いが可笑しい。
時と場合によって、丁寧に話したり対等に話したりしてしまう。
元日本人らしく、相手の機嫌を感じて使い分けてしまう。
「金は払えないが、運べるなら次から持ち帰ってくれ。
狩った獲物の内臓は竜達の餌になるので、持ち帰るのがマナーになっている」
「買った獲物が多くて内臓まで運べない時はどうなるのです?」
「大魔境が幾ら豊かでも、無駄な狩りは許されない。
内臓を置いて来なければいけないほどの狩りは禁じる」
「そういう事なら、一度の狩る獲物を少なくします。
次からは内臓も持ち帰るようにします。
他に何かありますか、なければもう一度狩りに行きたいのですが?」
「牧場と館の建設現場を見て行かないのか?」
「見ましたよ、何の問題なく順調に進んでいて安心しました」
「そうか、確認しているならいい、問題がないなら安心して進められる。
狩りに関しては好きにしてくれ、二度でも三度でも構わない」
「ではこれで失礼します」
獲物の買い取り価格が納得できたので、数を狩るために大魔境に戻った。
お金に不自由はしていないが、有って困る物じゃない。
何より、ステイタスを上昇させるには、実戦経験が必要だ。
狩りは人間同士の戦いや集団戦とは違うが、命懸けの戦いなのは同じだ。
それに、狩りを重ねるごとにステイタスが上昇している。
筋肉を鍛えるのと同じように、ステイタスの数値を上げるのが面白い。
「もう一度行くぞ」
俺は再び愛竜達に声をかけて大魔境に向かった。
「「「「「クルルルルル!」」」」」
もう一度一緒に狩りができると分かって、愛竜達がうれしそうだ。
今度はシカ系ではなくイノシシ系やウシ系の魔獣を探す。
シカ系は鹿茸が生える春に狩った方が買い取り価格が高くなる。
最適な時期から少し経ってしまっているので、できれば狩りたくない。
有難い事に、相手を選ばなければ幾らでも獲物がいる。
買い取り価格の安い獲物でも良い、金はある、買い取り価格は無視して良い。
今優先しなければいけないのは、買取価格ではなく量だ。
俺の目標は、愛竜達以上の子竜を生ませて無事に育てる事だ。
そのためには大量の餌が必要になるので、今のうちに狩り蓄えて置く。
母竜が卵を抱く時期は父竜しか狩りができないので、大量の食料備蓄が必要だ。
竜達の主食は肉なのだが、十分なビタミンを得るためには血や内臓が必要だ。
だが肉の部分以上に保存が難しいのが血と内臓だ。
血のソーセージやレバーペーストはあるが、それも保存期間は極端に短い。
「男爵閣下、抱卵期間に母竜の餌が不足した場合は、血や内臓を買えますか?」
二度目の狩りが終わって、言われた通り獲物の内臓を渡しながら聞いた。
「ああ、買えるぞ、普段は捨てる物だから、余っていれば少々の礼金で買える。
抱卵期や育児期の前に、冷凍スキルを持つ者に金を払って凍らせても良い」
「低レベルの冷凍スキルを活かす氷室があるのですか?」
「いや、氷を保管する氷室に血や内臓は保管できないだろう。
村の主だった奴の館の地下に、氷用の氷室と肉用の氷室がある。
凍らせる大きさによって礼金は違うが、フロスト・ディアで百アルだ」
「高いと言いたいところですが、高いと思うなら使うな、ですよね」
「そうだな、大切な食糧を保管するための氷室だ。
本来なら絶対に食べられない時期に氷や凍った物が食べられるのだ。
高位貴族用の贅沢な食事だと考えれば、百倍の一万アルでもおかしくない」
「ええ、分かっています、それくらい要求されてもおかしくない」
「まあ、そんなに気にしなくても大丈夫だ。
カーツ殿が領民と仲良くやっていれば、血や内臓は無料で分けてもらえる。
いきなりもらうのでは無理だが、事前に無料で内臓を渡していれば心配いらない」
「そうですね、普段の積み重ねが大切ですね。
血や内臓を捨てずに必ず持ち帰るようにしますから、宜しくお願いします」
「ああ、俺も領民と御客人がギスギスするような状態は嫌だからな。
アドバイスはするが、聞くも聞かないもカーツ殿しだいだ」
男爵閣下の言葉を受けて、三度目の狩りで得た血と内臓を領民に渡した。
家畜の竜達に与えるだけでなく、領民の食べているようだが、気にしない。
大好きなタンは確保しているし、ミノもガツも大腸小腸も食べる分は抜いてある。
「好きにされよ、いちいち俺に断らなくても良いぞ」
「次からはそうさせてもらう」
リヴァーデール男爵は平民の俺が対等に話しても気にしない性格だった。
アルへシラス王国有数の騎士だが、平民上がりでざっくばらんな性格だ。
だから俺も気兼ねなく対等の話ができるようになった。
「行くぞ」
俺は愛竜達に声をかけて大魔境に向かった。
「「「「「クルルルルル!」」」」」
一緒に狩りができるのが楽しいのか、愛竜達も御機嫌だ。
大魔境は、普通の森では考えられない密度で魔獣や獣が住んでいる。
大魔境は植物の成長が早いから、草食の魔獣や獣が数多く生きていける。
草食の魔獣や獣が多いほど、多くの肉食魔獣や肉食獣が生きていける。
少々多くの魔獣や獣を狩っても、害虫が湧くように数が戻る。
自分が食われる危険を無視すれば、中身が無尽蔵に湧く宝箱と同じだ。
多くの人間を魅了して引きずり込み命を奪っていく魔境と呼ぶに相応しい場所だ。
ヒュルルルル……ズン……「キュヒーン」
俺が合成長弓を引き絞って放つ度に魔獣が狩れる。
愛竜達の荷籠に乗せて運べる大きさと重さは限られるが、それで十分だ。
「男爵閣下、狩った獲物の買い取り額を決めていなかったですね。
幾らで買ってくれますか?
買い取り価格が不当だと思えば、王都まで売りに行きますよ」
「不当な値段で買い叩く気はないが、王都まで運ぶ手間と時間は利に乗せる。
不当だと思うなら自分で売りに行けばいいが、その分狩りの時間が減るぞ」
「それは分かっています、その上で、値段を聞いて売るか売らないか決めます」
「そうか、だったらそのフロスト・ディアは一頭で四千アルだ。
その魔鳥は一羽百アル、そっちの鳥で一羽十アルで買い取ろう。
内臓を抜いているが、どうした、魔境に捨ててきたのか?」
「その値段で買ってくれるのなら全部売ります。
少し安い気もしますが、自分で売りに行く手間と時間を考えたら、その分を狩りに使った方が儲けられます。
内臓は愛する竜達に食べさせました。
食べ切れない分は魔境に捨てて来た、今頃スライムが食べているでしょう」
俺らしいと言えば俺らしいのだが、言葉使いが可笑しい。
時と場合によって、丁寧に話したり対等に話したりしてしまう。
元日本人らしく、相手の機嫌を感じて使い分けてしまう。
「金は払えないが、運べるなら次から持ち帰ってくれ。
狩った獲物の内臓は竜達の餌になるので、持ち帰るのがマナーになっている」
「買った獲物が多くて内臓まで運べない時はどうなるのです?」
「大魔境が幾ら豊かでも、無駄な狩りは許されない。
内臓を置いて来なければいけないほどの狩りは禁じる」
「そういう事なら、一度の狩る獲物を少なくします。
次からは内臓も持ち帰るようにします。
他に何かありますか、なければもう一度狩りに行きたいのですが?」
「牧場と館の建設現場を見て行かないのか?」
「見ましたよ、何の問題なく順調に進んでいて安心しました」
「そうか、確認しているならいい、問題がないなら安心して進められる。
狩りに関しては好きにしてくれ、二度でも三度でも構わない」
「ではこれで失礼します」
獲物の買い取り価格が納得できたので、数を狩るために大魔境に戻った。
お金に不自由はしていないが、有って困る物じゃない。
何より、ステイタスを上昇させるには、実戦経験が必要だ。
狩りは人間同士の戦いや集団戦とは違うが、命懸けの戦いなのは同じだ。
それに、狩りを重ねるごとにステイタスが上昇している。
筋肉を鍛えるのと同じように、ステイタスの数値を上げるのが面白い。
「もう一度行くぞ」
俺は再び愛竜達に声をかけて大魔境に向かった。
「「「「「クルルルルル!」」」」」
もう一度一緒に狩りができると分かって、愛竜達がうれしそうだ。
今度はシカ系ではなくイノシシ系やウシ系の魔獣を探す。
シカ系は鹿茸が生える春に狩った方が買い取り価格が高くなる。
最適な時期から少し経ってしまっているので、できれば狩りたくない。
有難い事に、相手を選ばなければ幾らでも獲物がいる。
買い取り価格の安い獲物でも良い、金はある、買い取り価格は無視して良い。
今優先しなければいけないのは、買取価格ではなく量だ。
俺の目標は、愛竜達以上の子竜を生ませて無事に育てる事だ。
そのためには大量の餌が必要になるので、今のうちに狩り蓄えて置く。
母竜が卵を抱く時期は父竜しか狩りができないので、大量の食料備蓄が必要だ。
竜達の主食は肉なのだが、十分なビタミンを得るためには血や内臓が必要だ。
だが肉の部分以上に保存が難しいのが血と内臓だ。
血のソーセージやレバーペーストはあるが、それも保存期間は極端に短い。
「男爵閣下、抱卵期間に母竜の餌が不足した場合は、血や内臓を買えますか?」
二度目の狩りが終わって、言われた通り獲物の内臓を渡しながら聞いた。
「ああ、買えるぞ、普段は捨てる物だから、余っていれば少々の礼金で買える。
抱卵期や育児期の前に、冷凍スキルを持つ者に金を払って凍らせても良い」
「低レベルの冷凍スキルを活かす氷室があるのですか?」
「いや、氷を保管する氷室に血や内臓は保管できないだろう。
村の主だった奴の館の地下に、氷用の氷室と肉用の氷室がある。
凍らせる大きさによって礼金は違うが、フロスト・ディアで百アルだ」
「高いと言いたいところですが、高いと思うなら使うな、ですよね」
「そうだな、大切な食糧を保管するための氷室だ。
本来なら絶対に食べられない時期に氷や凍った物が食べられるのだ。
高位貴族用の贅沢な食事だと考えれば、百倍の一万アルでもおかしくない」
「ええ、分かっています、それくらい要求されてもおかしくない」
「まあ、そんなに気にしなくても大丈夫だ。
カーツ殿が領民と仲良くやっていれば、血や内臓は無料で分けてもらえる。
いきなりもらうのでは無理だが、事前に無料で内臓を渡していれば心配いらない」
「そうですね、普段の積み重ねが大切ですね。
血や内臓を捨てずに必ず持ち帰るようにしますから、宜しくお願いします」
「ああ、俺も領民と御客人がギスギスするような状態は嫌だからな。
アドバイスはするが、聞くも聞かないもカーツ殿しだいだ」
男爵閣下の言葉を受けて、三度目の狩りで得た血と内臓を領民に渡した。
家畜の竜達に与えるだけでなく、領民の食べているようだが、気にしない。
大好きなタンは確保しているし、ミノもガツも大腸小腸も食べる分は抜いてある。
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