上 下
45 / 91
第五章

第45話:大魔境一

しおりを挟む
 俺は後始末を強化意識体ドッペルゲンガーに任せて、転移魔術で大魔境にきた。
 大陸中に十分なドッペルゲンガーを送り込むには、莫大な量の魔宝石と魔晶石を確保しなければいけない。
 今魔法袋に保管してある魔宝石と魔晶石で十分な気もするのだが、本当に必要だと思った時に魔宝石と魔晶石がなかったら困る。
 憶病なくらい慎重な性格だから、つい今回使った分以上の魔宝石と魔晶石を補充したいと思ってしまう。

 少しでも時間が惜しいので、考えるより先に大魔境に入って魔獣を狩る。
 魔石があろうがなかろうが関係なく、売れるモノは手当たり次第に狩る。
 食肉として売ることができる魔獣や魔蟲なら、莫大な数があれば食肉相場を下げることができて、貧民でも肉が食べられるようになる。
 魔境があるこの世界では、食肉は魔境から狩るモノで、食肉用の家畜を育てる者はほとんどいないから、牧場が困る事もない。

 魔蟲は好き嫌いがあって食材としての高価な値をつけない分、誰かの生活を脅かす心配が少なく、安心して狩ることができる。
 大型の魔蟷螂の斧や魔蟻の牙は、熟練の職人が加工すれば青銅以上の武器になる。
 大型の魔甲虫の胸甲部分も、熟練の職人が加工すれば鋼鉄以上の防具になる。
 大量に出回れば刀鍛冶や甲冑師が困るかもしれないが、その代わり冒険者や狩人の死傷者を減らすことができるだろう。

 毛皮があれば、冒険者用の革鎧はもちろん庶民の防寒具も作れる。
 莫大な数があれば皮相場を下げることができて、貧民でも暖かくて丈夫な防寒具を手に入れることができるようになる。
 服の場合は、あまりに皮相場が下がると、麻や綿を育てている農民や、麻や綿から服を作っている職人が困ることになるが、本当に貧しい者は古着しか買えないし、葛の繊維を集めて自分で粗い葛布を作って着ているから、影響は少ないだろう。
 それに防寒具を売るのではなく、仕事の代償に毛皮を与えて自作させるようにすれば、布や被服の相場を破壊する事もないだろう。

 そんな事を考えながら反射のように手当たり次第に魔蟲や魔獣を狩る。
 だが、どうにも狩りたくない相手もいるのだ。
 人型をした二足歩行の魔族と呼ばれる者達、知能の低いゴブリンはともかくとして、独自の言語と文化を持っている、ミノタウロスやオーク、コボルトやケット・シーは殺したくない。

 ましてミノタウロスとオークの肉は美味しいなどと言って食べるなど、人肉を食べているようで耐えられない。
 だから彼らとは争わないようにしている。
 隠形の魔術を使えば、人間よりはるかに五感が優れている魔族であろうと、戦わずにやる過ごす事など簡単だ。
 俺が狩るのは魔蟲と魔獣だけに限っている。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

無能と呼ばれたレベル0の転生者は、効果がチートだったスキル限界突破の力で最強を目指す

紅月シン
ファンタジー
 七歳の誕生日を迎えたその日に、レオン・ハーヴェイの全ては一変することになった。  才能限界0。  それが、その日レオンという少年に下されたその身の価値であった。  レベルが存在するその世界で、才能限界とはレベルの成長限界を意味する。  つまりは、レベルが0のまま一生変わらない――未来永劫一般人であることが確定してしまったのだ。  だがそんなことは、レオンにはどうでもいいことでもあった。  その結果として実家の公爵家を追放されたことも。  同日に前世の記憶を思い出したことも。  一つの出会いに比べれば、全ては些事に過ぎなかったからだ。  その出会いの果てに誓いを立てた少年は、その世界で役立たずとされているものに目を付ける。  スキル。  そして、自らのスキルである限界突破。  やがてそのスキルの意味を理解した時、少年は誓いを果たすため、世界最強を目指すことを決意するのであった。 ※小説家になろう様にも投稿しています

異世界転生~チート魔法でスローライフ

リョンコ
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

聖女として召還されたのにフェンリルをテイムしたら追放されましたー腹いせに快適すぎる森に引きこもって我慢していた事色々好き放題してやります!

ふぃえま
ファンタジー
「勝手に呼び出して無茶振りしたくせに自分達に都合の悪い聖獣がでたら責任追及とか狡すぎません? せめて裏で良いから謝罪の一言くらいあるはずですよね?」 不況の中、なんとか内定をもぎ取った会社にやっと慣れたと思ったら異世界召還されて勝手に聖女にされました、佐藤です。いや、元佐藤か。 実は今日、なんか国を守る聖獣を召還せよって言われたからやったらフェンリルが出ました。 あんまりこういうの詳しくないけど確か超強いやつですよね? なのに周りの反応は正反対! なんかめっちゃ裏切り者とか怒鳴られてロープグルグル巻きにされました。 勝手にこっちに連れて来たりただでさえ難しい聖獣召喚にケチつけたり……なんかもうこの人たち助けなくてもバチ当たりませんよね?

余命半年のはずが?異世界生活始めます

ゆぃ♫
ファンタジー
静波杏花、本日病院で健康診断の結果を聞きに行き半年の余命と判明… 不運が重なり、途方に暮れていると… 確認はしていますが、拙い文章で誤字脱字もありますが読んでいただけると嬉しいです。

俺だけに効くエリクサー。飲んで戦って気が付けば異世界最強に⁉

まるせい
ファンタジー
異世界に召喚された熱海 湊(あたみ みなと)が得たのは(自分だけにしか効果のない)エリクサーを作り出す能力だった。『外れ異世界人』認定された湊は神殿から追放されてしまう。 貰った手切れ金を元手に装備を整え、湊はこの世界で生きることを決意する。

貧弱の英雄

カタナヅキ
ファンタジー
この世界では誰もが生まれた時から「異能」と「レベル」呼ばれる能力を身に付けており、人々はレベルを上げて自分の能力を磨き、それに適した職業に就くのが当たり前だった。しかし、山奥で捨てられていたところを狩人に拾われ、後に「ナイ」と名付けられた少年は「貧弱」という異能の中でも異質な能力を身に付けていた。 貧弱の能力の効果は日付が変更される度に強制的にレベルがリセットされてしまい、生まれた時からナイは「レベル1」だった。どれだけ努力してレベルを上げようと日付変わる度にレベル1に戻ってしまい、レベルで上がった分の能力が低下してしまう。 自分の貧弱の技能に悲観する彼だったが、ある時にレベルを上昇させるときに身に付ける「SP」の存在を知る。これを使用すれば「技能」と呼ばれる様々な技術を身に付ける事を知り、レベルが毎日のようにリセットされる事を逆に利用して彼はSPを溜めて数々の技能を身に付け、落ちこぼれと呼んだ者達を見返すため、底辺から成り上がる―― ※修正要請のコメントは対処後に削除します。

微妙なバフなどもういらないと追放された補助魔法使い、バフ3000倍で敵の肉体を内部から破壊して無双する

こげ丸
ファンタジー
「微妙なバフなどもういらないんだよ!」 そう言われて冒険者パーティーを追放されたフォーレスト。 だが、仲間だと思っていたパーティーメンバーからの仕打ちは、それだけに留まらなかった。 「もうちょっと抵抗頑張んないと……妹を酷い目にあわせちゃうわよ?」 窮地に追い込まれたフォーレスト。 だが、バフの新たな可能性に気付いたその時、復讐はなされた。 こいつら……壊しちゃえば良いだけじゃないか。 これは、絶望の淵からバフの新たな可能性を見いだし、高みを目指すに至った補助魔法使いフォーレストが最強に至るまでの物語。

処理中です...