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第三章

第26話:孤児院の日々二・ミュン視点

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「百一、百二、百三、百四……」

 年長の子供達が、駆け出し冒険者達と一緒に、木刀を振っています。
 全部ブルーノさんが手作りしてくれた、個々に合った重さと長さです。
 ブルーノさん曰く、最適の重さと長さがあるそうです。
 自分に合った重さと長さの木刀で訓練しないと、強くなるのに余計な時間がかかってしまうそうなのです。
 ブルーノさんの言う事ですから、子供達もクランメンバーも全く疑いません。
 疑問の余地がないくらい、ブルーノさんは強いのです。

「いんいちがいち、いんにがに、いんさんがさん……」

 子供達が楽しそうに掛け算の唄を歌っています。
 いえ、子供達だけでなく、ベテランの冒険者達も一生懸命歌っています。
 冒険者はもちろん、農民のほとんどが読み書きができません。
 それどころか、大きな数の足し算も引き算も苦手です。
 掛け算や割り算なんて、教養のあるはずの貴族でも、怠惰な貴族なら知らない者すらいるのです。
 歌でそれが覚えられるのなら、恥ずかしいなんて言っていられないのです。

「ミュンママ、これでいくつになるの」

 小さい子が二足す七が分からいようです。
 まず数を覚える事から始めないといけないのですが、お兄ちゃんやお姉ちゃんがやっている事を真似したいのが小さい子です。
 ブルーノさんからも、子供のやる気を削いではいけないと言われています。
 七という数と教えると同時に、意味も教えてあげなければいけません。
 こういう辛抱のるり教え方は、年長の子供達や駆け出しの冒険者はもちろん、戦いの生活を送ってきたベテラン冒険者にも任せられません。

「ではね、まず柴を二つ持って来てくれるかな」

「はい、ミュンママ」

 小さい子が嬉しそうに柴の積んである所に入っていきます。
 小さい子にはこれも楽しい遊びなのです。

「わたしも持ってくる」
「ぼくも、ぼくも持ってくる」

 一緒の問題、二足す七を勉強していた子供達が後を追いかけて行きます。
 みんな本当に楽しそうで、思わず涙が流れそうになります。
 読み書きと計算ができるようになったら、この子達の将来は劇的に変わります。
 いくら強い冒険者でも、無学で読み書き計算ができなければ、契約で悪い商人や貴族に騙されてしまう事があるのです。
 悪逆非道な冒険者ギルドにいた私だからこそ、嫌というほど知っています。
 少々戦闘力が低くても、読み書き計算ができる冒険者は、パーティーではとても大切にされるのです。

「ミュンママ、もってきたよ」
「わたしももってきたよ」
「ぼくもぼくも、ぼくももってきたよ」
「わたしももってきた、みてみてミュンママ」

 前は二がよくわからなくて、三つや一つしか持ってもない子もいました。
 でも今では、小さい子でも数字と実際の数を間違わなくなりました。
 もしかしたら向こうで子供同士で教え合っているのかもしれません。
 それこそが一番大切な事なのです。
 子供達同士て助け合い事を覚えてくれれば、かけがえのない友達ができます。
 何かあっても教え合い助け合える仲間ができたら、この子達は幸せになれます。
 ブルーノさんの教えに従って、この子達を幸せにしてあげたい。
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