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第三章

第20話:孤児院

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 王都まであと半日という場所でエクセター侯爵は死んだ。
 誰かに襲われたわけではないのに、強力な魔力の塊を叩きつけられたかのように、身体がバラバラになって死んだ。
 前後の事情からセシル城伯ウィリアムが疑われたが、何の証拠もないので強制的に取り調べる事など不可能だった。
 あの程度の事で取り調べていたら、暗殺謀殺が当たり前の貴族社会では、毎月のように貴族を取り調べなければいけなくなる。

「ただいま、ミュン、孤児院の方はどんな状態だい」

 一仕事片付けた俺は、まず最初にミュンのいる孤児院を訪れた。
 俺の部屋もあるし、帰って来たと言った方がいいかもしれない。
 普通の刺客なら、セシル城伯ウィリアムに報告に行ったり、追加の報酬を求めたりするのだろうが、俺にそんな必要はない。
 最初に約束した報酬さえもらえれば十分だし、その報酬をウィリアムが払わないようなら殺すだけだ。

「はい、順調に進んでいますといいたいのですが、色々と問題があって」

 言い難そうにするミュンから詳しく話を聞くと、エクセター侯爵とトマスがやった大増税の結果、領都で孤児が暮らすことができなくなっていた。
 いや、それどころか、孤児はエクセター侯爵が派遣した兵士に集められ、奴隷としてエクセター侯爵領に送られていた。
 中には抵抗して兵士に殺された子までいたそうだ。
 その兵士にはこの世の地獄を見せてやらなければいけない。
 簡単に殺して楽にしてやるよりも、奴隷にして長く苦しませてやる。

「分かった、それは俺が何とかしよう、となると、今は孤児がいないという事かな」

「いえ、領都から離れた村には孤児がいるそうです。
 村で大切に育てられている孤児はいいのですが、中には酷い扱いを受けている子もいましたので、冒険者の方々を派遣して買い取っていただきました」

 そういう事か、確かにそういう事もあるだろう。
 弱肉強食のこの世界では、自分で食い扶持を稼げない子供は余計モノだ。
 村で養う場合は、村の共有財産という形になる。
 善良な指導者がいる村なら、家族が残した財産を公平に処分して孤児の財産にしてくれるだろうが、悪質な指導者が支配している村なら、孤児の財産は奪われる。
 そんな悪質な指導者が支配している村なら、孤児を買い取りたいと交渉したら、足元を見て法外な金額を要求するだろうな。

「分かった、そのために使った資金は補填しよう。
 いや、もっと多くの資金を渡しておくから、言い値で買ってくれて構わない」

 次に殺す相手が決まったな。
 子供達を喰いモノにする村長や村役人を皆殺しにしてやる。
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