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第二章

第13話:侵入

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 冒険者達から色々な噂話は聞いたが、その全てを確認しなければいけない。
 その為には一度大行列から離れなければいけないが、そうなるとミュンが心配だ。
 水場があって、敵の接近に気がつきやすく護り易い野営場所を確保した。
 冒険者達に体力がつくように、たっぷりと肉の入った麦粥を作らせる。
 冒険者達が生きるために手放した武器や防具といった装備品を貸し与える。
 ミュンが不安にならないように、女性冒険者をミュンの周りに置く。
 その上に強力な結界を創り出す魔道具をミュンに貸し与える。

「俺とミュンは先に休ませてもらうが、お前達はさっき決めた順番で見張りをしろ。
 追手が襲ってくる可能性があるから、絶対に油断するな。
 居眠りした奴がいたら、俺がこの手で殺すからな」

 俺は自分がこの場に残るように嘘をついて、急いで街に戻った。
 いつも通り隠形に必要な各種魔術を重ね掛けして、飛行魔術を使って直ぐに戻ったが、領主の本城に入る前にやることがあった。
 城門で支払った通行料金を取り返す事だった。
 門番に渡した大小の金貨には、特殊な魔力を込めてある。
 だからまだ城門に付属している門番駐屯所で保管されている事が分かっていた。
 軽く睡眠魔術で眠らせて、全ての金銀銅貨をもらっておいた

「悪事に加担して甘い汁を吸っていたんだ、自分が失敗して悪人に殺されるくらいは当然の事だよ」

 俺は眠りこける門番達にひと言かけた。
 誰も聞いていないのは分かっていたが、最後の言葉をかけておいた。
 そのまま戦時には領主一族と家臣が籠城する領主城に向かった。
 セシル城伯家の富の源であるダンジョンの入り口を、城内奥深くに置くことで、戦時にも兵糧と素材を確保できるようにしている。
 同時にモンスタースタンビートの危険も考慮して、領主一族が住む本丸とダンジョン入り口の間は強固な城壁と空堀で隔てられている。

「領主本丸とダンジョン本丸の連城形式か、見事なモノだ」

 内部に侵入して分かった事だが、領主本丸とダンジョン本丸には全く毛色の違う人間が多くいた。
 領主本丸には俺が全く顔の知らない騎士や徒士が厳重に警備をしていた。
 ダンジョン本丸には、俺の知った顔の騎士や徒士や冒険者がいた。
 とはいっても冒険者の数は少なく、ほとんどが騎士や徒士だ。
 俺が助けた冒険者が耳にしていた噂が本当ならば、領主本丸には謀叛人の弟に力を貸している、いや、馬鹿を唆したエクセター侯爵の家臣達がいるのだろう。
 ダンジョン本丸に逃げこんで籠城しているのが、意識不明のセシル城伯ウィリアム卿に忠誠を誓う家臣達だろう。

「さて、ウィリアム卿が生きているならこの領地を取り戻すのに力を貸して、死んでるのならとっとと逃げ出す事にしよう」
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