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第三章

ダンスィ3

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 それに敦史君達の行動する場所には防犯カメラが設置されている。
 特に通学路には途切れなく二四時間完全に追えるように設置してある。
 それと、近隣の表に出ている教団員宅も隠れ教団員宅も監視してある。
 敦史君達にプライバシーがないのは可愛いそうだが、いつ誘拐されたり襲撃されたりするか分からないので、これは仕方がない。

 でもまあなんだ。
 小学生男子の行動は謎過ぎる。
 余りに理解不能だったから、母に聞いてみたのだが、あれが日本の普通らしい。
 母の兄弟も小学生の頃は謎行動をとっていたそうだ。
 私達兄弟は、母国の国教による教えがあるので、厳しく躾けられているそうだ。

 どちらがいいのかは分からない。
 王位継承権を放棄するから、必ずしも俺の子供に国教を押し付ける気はない。
 特にこの国では、国教だと色々と不便がある。
 だが、教団の暴走や狂気を見ると、大らかな国教を信仰させるべきかとも思う。
 まあ母に言わせれば、この国の大半は国教よりも大らかに宗教と捉えていると言うから、決めるのはもっと色々と経験してからの方がいいだろう。

 おっといけない。
 敦史君達の事だ。
 防犯カメラの映像を真剣に見ておかないと、異変を早期発見できない。
 これも大切な訓練だ。
 事件発生の兆候に逸早く気付ける事が、生き残るための分岐点になる。

 家に辿り着いた敦史君達が、剣鬼達にまとわりついている。
 剣鬼達は歴戦の猛者だから、行動を制限されるような下手な真似はしない。
 抱き着いて止めようとする敦史君達を上手くいなしている。
 唇を読むと、
「帰らないで欲しい」
「家によって欲しい」
 と言っている。

 寂しいのかもしれない。
 スキンシップに飢えているのかもしれない。
 俺にも経験がある。
 父王陛下は公務と私事の両方で忙しい方だった。
 表向きの妻は三人だったが、数十人の女性と愛を育み、妊娠出産を逆算して、離婚と再婚を繰り返していた。

 母は私を溺愛してくれたが、それでは物足らないかったのも確かだ。
 乳母や侍従も私を大切にしてくれたが、あの頃は父王陛下の愛情が欲しかった。
 少しでも父王陛下に振り向いて欲しくて、文武に励んだ。
 常に一番の成績をとるようにしていた。
 その時の事を思い出せば、敦史君の行動もなんとなく理解できる。

 実の両親から虐待を受けていたのだ。
 助けてくれたのはお母さん達家族と、俺達だけだ。
 お母さん達は小規模住居型児童養育事業を立ち上げて、敦史君達の居場所を作ったが、忙し過ぎてスキンシップが不足しているのだろう。
 敦史君達から見れば暇そうに見える俺達に構って欲しいのだろう。
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