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第二章

妖狸町中華11

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 色々相談した結果、まずは教団の犯行を拡散する事にした。
 世論は沸騰した! 
 教団と政党は真正面から反論した。
 マス塵も教団と政党に味方する報道をした。
 動画を消去させようと圧力もかけてきた。

 だが世論が味方してくれた。
 某宗教団体が毒薬を撒き散らした事件は、いまだに忘れられていなかった。
 その教宗教団体が、独自の官庁組織を計画していたことを動画配信した。
 教団と政党が、中央官庁内の教団員に、独自の官庁役職を与え、何時でも政府転覆が可能な状態である事も動画配信した。

 教団中央幹部は急ぎ方針を変えた。
 蜥蜴の尻尾切りを行った。
 全責任を市教団代表と幹部に負わせたのだ。
 だが付け回して恐怖を与えただけでは、大した罪にはならない。
 表向きの教団の地位を剥奪するだけですませるわけにはいかない!

 俺は腸の煮えくり返る思いだった。
 この程度の罪で済むのなら、必ず同じことをやる組織が現れる。
 ここで痛撃を与えておかなければならない。
 世間に教団と政党の危険性を知らせることはできたが、それだけでは腹の虫がおさまらない。

 そんな時、真剣な表情をしたお母さんが条件を出した。
 店を休みにするから、直接間接に係わらず、敦史君達に恐怖を与えた教団員は、敦史君達を含めた自分達に、直接会って謝るようにと言う条件だ。
 俺達の動画に映った教団員と、教団市部代表達から証言された犯人達。
 中には摘発配信を逃れた教団員もいるだろうが、顔バレしている奴らは引っ張り出せる。

「分かりました。
 人として許されない行いをしたのですから、公の場で謝るのは当然の事です。
 ですが、人は間違いを起こす弱い生き物です。
 教団内の地位は剥奪しますが、破門して見捨てるのではなく、教え育てる事をお許しください」

 教団広報の厚顔無恥な対応に腸が煮えくりかえる思いだった。
 怒りで全身が沸騰し、手が自然に震えてしまった。
 お母さんと親父さん、大将と女将さんが、普段の福々しい顔を固くして、怒りの心情を押し殺していた。
 それは若や若女将はもちろん、他の孫たちも同じだった。

 敦史君達四人の後見したお母さん達は、交代で教団員の謝罪を受けた。
 敦史君と幸次君には、恐怖を与えた事を直接謝らせた。
 光男君と花子ちゃんには、二人に恐怖を与える事で、不安にさせた事を謝らせた。
 だが四人に謝らす前に、お母さん達に話をさせた。
 本当に反省しているのか、謝罪の気持ちが偽りでないかを確認するためだそうだ。

 俺はその時のお母さん達の眼を忘れない。
 鈍く金色に輝いていた!
 人の眼とは思えない色で、内心の怒りが人の眼の色を変えると言う事を、その時初めて知った!
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