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第二章

妖狸町中華3

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 警察は全力で証拠を集めようとした。
 マス塵に散々叩かれた意趣返した。
 実際には暴行虐待事件だが、前回の誘拐事件がある。
 警察内部に犯罪者がいたのと同じように、マス塵にも犯罪者がいる。
 そう証明する為に、徹底的に証拠集めをした。

 現実的には、誘拐の証拠はない。
 だが出版社の契約記者が、子供達を追い回していたと言う証言証人は集まった。
 大将と女将さんの地縁血縁は、俺が想像してい以上に強い。
 下町の住民が呼び掛けて、出版社とテレビ局にデモを仕掛けたのだ。
 前回政府を叩くまくったのに、自分達の悪事は隠蔽しようとしたのだ。

 俺も陰ながら協力した。
 母国の政府と石油産業を通じて、出版社とテレビ局に圧力をかけた。
 母国の影響力がある全企業に、スポンサーから降りるように命じたのだ。
 それも影響したのだろうが、一番強く影響したのデモの効果だった。
 隠蔽しようにもSNSを通じて拡散され、不買運動と不視聴運動が激化したのだ。

 それに加えて俺は出版社とテレビ局の株を空売りした。
 俺だけなら限定的な効果に留まっただろう。
 だが父王陛下と母さんも協力してくれた。
 普段はジャーナリズムを唱えながら、利益のために児童虐待をするような企業は潰すと宣言してくれた。

 産油国の国王と伝説の株式トレーダーが堂々と売り潰すと宣言したのだ。
 その効果は著しかった。
 便乗売りに狼狽売りが加わった。
 最初は腹の中で笑って、軽く頭を下げれば済むと思っていた出版社とテレビ局の社長会長も、事ここに至っては責任を取って辞職するしかなかった。

 だが社長や会長が辞職すれば済む問題ではなかった。
 多くの株主が株主代表訴訟を起こしたのだ。
 当然と言えば当然だった。
 会社を倒産に追い込むほどの大損害を与えたのだ。
 役員全員が賠償責任を追及された。

 世の中には池に落ちた犬は叩けと言う諺がある。
 今迄マス塵の権力で行ってきた悪事が次々と暴露された。
 役員全員がセクハラやパワハラで訴えられた。
 制作会社を通じて賄賂を受け取っていたので、背任横領でも訴えられた。

 俺は父王陛下と母さんから連絡を受けて、一部の空売り株を買い戻した。
 完全に倒産させる事ができればいいのだが、潰せない大企業もある。
 特に共産主義の支援を受けている企業は、買い支えが始まっていた。
 潰せないなら利益を出す事にしたのだ。

 最終的に、幸次君に怪我を負わせた記者は児童虐待と暴行で有罪となった。
 同類の記者も流石に危険を感じたのだろう。
 もう敦史君達を取材するのを止めた。
 だが面白い事に、敦史君達を追い回していた記者が、次々と不幸な事故に見舞われ死んでいった。
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