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6話

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「そうですね。
 セイラ様の仰られる通りです。
 魔力があった時代に、後世魔力がなくなると言っても、馬鹿にされたでしょう。
 だから絶対はありません。
 再び魔力が溢れる時代になる可能性はあるのです。
 まあ、本当に低い可能性ではありますが」

「はい、私もそう思っています。
 神の奇跡のような僅かな可能性でも、あると考えなければいけません。
 だから何かをするのなら、必ず準備と対策が必要です。
 それで先程の質問に戻りますが、学院はどう準備しているのですか、アレク様」

「セイラ様と侍女様の事ですね。
 セイラ様は公爵家の令嬢であられるので、学院の名誉理事に迎えられます。
 いえ、名誉常任理事になって頂くことになるでしょう。
 侍女の方々の場合は、少し話が面倒になります」

「どう面倒になるのですか?」

「侍女の方が、セイラ様に仕え続けるかどうかです。
 学院に転職してくださるのなら、基本給は侍女の五倍支払われます。
 魔力によって得られた利益は、一割を支払わせてもらいます。
 役職は名誉理事か名誉教師のどちらでも選んでいただけるでしょう。
 何より重大な事は、大陸中の王侯貴族から学院が護ってくれますよ」

「なるほど。
 確かに護ってくれると言うのは大切な事ですね。
 魔力があったとしても、その量が多いとは限りませんものね。
 魔力量が多くても、魔術を全然知らないのですものね。
 大陸中の力ある者から狙われたら、逃げようがありませんね」

「はい。
 学院ならばある程度護る事ができます。
 しかも魔術を学ぶ事ができます。
 いつかは自分で自分の身を護れるようになるかもしれません」

「分かりました。
 それで、私が学院以上の利益と守りを与えるから、仕え続けるようにいったらどうするのですか?」

「セイラ様と侍女様を一緒に学院にお迎えします。
 待遇は先程の条件とほとんど変わりません。
 侍女様はセイラ様と学院の両方から護ってもらえます。
 セイラ様は学院に確固たる地位を得ることができます」

「私がその条件を認めず、侍女を囲い込もうとしても、魔術の知識を与えられない時点で失格という事ですね」

「はい、皇国までも乗り出してきては、セイラ様のマクリンナット公爵家単独では、侍女様を護りきれないでしょう。
 家臣を見殺しにするような主人に仕え続ける者は殆どいません」

「分かりました。
 アレク様の仰られる通りです。
 その時は二重に仕えてくれるように説得するしかありませんね。
 ですが他に大きな疑念が出てきました。
 アレク様は何故それほど学院の内情を知っているのですか?
 まるで学院の代表のような口ぶりです。
 アレク様がただの生徒とは思えなくなりました」
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