74 / 94
73話
しおりを挟む
カチュアはアレサンドのために最高の魔晶石を創りました。
初級下の魔術を千万回使えるほどの高品質魔晶石を、毎日1個創りだした。
その魔晶石は、アレサンドの守護魔晶石とされた。
魔法が使えない虎獣人族のアレサンドでは、敵の魔法攻撃は俊敏さで避けるか、体力と精神力で耐えるしかない。
大公まではそれで十分対応していたが、皇帝となって、敵の数が飛躍的に増大した今では、魔術による防御も必要となる。
今は人間の魔術師や魔道具に頼っているが、人間の魔術師は心から信用できない。
それに今ある魔道具では、カチュアの魔晶石を敵が手に入れた場合が危険だった。
だから、カチュアが創り出せる最高級の魔晶石を使って、防御の魔防具を創りだす必要があった。
「ああ、カチュア。
朕のために毎日魔晶石を創ってくれているんだね。
ありがとう、カチュア。
何か欲しい物はあるかい?
朕が手に入れる事ができる物なら、何だってあげるよ」
「別に欲しいモノなどありません。
私が欲しいのは、仲のよい家族です。
兄弟姉妹が争う事のない家庭です。
アレサンドにそれをお願いしてもいいのですか?
虎獣人族の根本にかかわる問題ではありませんか?」
カチュアのお願いにアレサンドは心底困った。
弱肉強食は虎獣人族の基本的な本能と言ってもいい考え方だ。
集落や国を作るようになって、殺し合いは少なくなったが、強い者が家を継ぎ、弱い者が家を出るのが常識だ。
大公国が形成される頃には、弱い兄弟姉妹を家臣として使う方が、家を繁栄させるという事が理解されたが、それでも争って強い当主を選ぶという基本は変わらない。
一旦当主を決めてからも、当主が弱くなれば子供や兄弟姉妹からの下克上が行われるし、暗殺も横行していた。
それを家族仲良くと言われても、アレサンドも困るのだ。
「分かったよ。
だけど、全員が完全に仲良くというわけにはいかないよ。
でも仲良くなれる兄弟姉妹は、傷つけ合いような競争は極力やめて、能力を測る形で順位付けするようにしよう。
だけど、どうしても正々堂々戦って強弱を決めたいという兄弟姉妹は、競争させなければいけない。
それは分かって欲しい」
アレサンドは英断をくだした。
まだカチュアが妊娠中で、つがいの呪縛が発動していない状態で、カチュアの願いを皇帝として冷静に考え、皇国の分裂と弱体化を防ぐのに必要だと考えたのだ。
アレサンドが圧倒的な強者である間は、皇国は望むまま膨張する事が可能だ。
だが、子供達が成長し、アレサンドを斃して皇位を手に入れようとしたり、皇国を分裂させてでも皇位を手に入れようと兄弟姉妹で争ったら、皇国は元の大公国の領地すら維持できなくなってしまうかもしれない。
後継者の選定方法は、皇帝にとって避けて通れない問題だった。
初級下の魔術を千万回使えるほどの高品質魔晶石を、毎日1個創りだした。
その魔晶石は、アレサンドの守護魔晶石とされた。
魔法が使えない虎獣人族のアレサンドでは、敵の魔法攻撃は俊敏さで避けるか、体力と精神力で耐えるしかない。
大公まではそれで十分対応していたが、皇帝となって、敵の数が飛躍的に増大した今では、魔術による防御も必要となる。
今は人間の魔術師や魔道具に頼っているが、人間の魔術師は心から信用できない。
それに今ある魔道具では、カチュアの魔晶石を敵が手に入れた場合が危険だった。
だから、カチュアが創り出せる最高級の魔晶石を使って、防御の魔防具を創りだす必要があった。
「ああ、カチュア。
朕のために毎日魔晶石を創ってくれているんだね。
ありがとう、カチュア。
何か欲しい物はあるかい?
朕が手に入れる事ができる物なら、何だってあげるよ」
「別に欲しいモノなどありません。
私が欲しいのは、仲のよい家族です。
兄弟姉妹が争う事のない家庭です。
アレサンドにそれをお願いしてもいいのですか?
虎獣人族の根本にかかわる問題ではありませんか?」
カチュアのお願いにアレサンドは心底困った。
弱肉強食は虎獣人族の基本的な本能と言ってもいい考え方だ。
集落や国を作るようになって、殺し合いは少なくなったが、強い者が家を継ぎ、弱い者が家を出るのが常識だ。
大公国が形成される頃には、弱い兄弟姉妹を家臣として使う方が、家を繁栄させるという事が理解されたが、それでも争って強い当主を選ぶという基本は変わらない。
一旦当主を決めてからも、当主が弱くなれば子供や兄弟姉妹からの下克上が行われるし、暗殺も横行していた。
それを家族仲良くと言われても、アレサンドも困るのだ。
「分かったよ。
だけど、全員が完全に仲良くというわけにはいかないよ。
でも仲良くなれる兄弟姉妹は、傷つけ合いような競争は極力やめて、能力を測る形で順位付けするようにしよう。
だけど、どうしても正々堂々戦って強弱を決めたいという兄弟姉妹は、競争させなければいけない。
それは分かって欲しい」
アレサンドは英断をくだした。
まだカチュアが妊娠中で、つがいの呪縛が発動していない状態で、カチュアの願いを皇帝として冷静に考え、皇国の分裂と弱体化を防ぐのに必要だと考えたのだ。
アレサンドが圧倒的な強者である間は、皇国は望むまま膨張する事が可能だ。
だが、子供達が成長し、アレサンドを斃して皇位を手に入れようとしたり、皇国を分裂させてでも皇位を手に入れようと兄弟姉妹で争ったら、皇国は元の大公国の領地すら維持できなくなってしまうかもしれない。
後継者の選定方法は、皇帝にとって避けて通れない問題だった。
1
お気に入りに追加
3,386
あなたにおすすめの小説

学園首席の私は魔力を奪われて婚約破棄されたけど、借り物の魔力でいつまで調子に乗っているつもり?
今川幸乃
ファンタジー
下級貴族の生まれながら魔法の練習に励み、貴族の子女が集まるデルフィーラ学園に首席入学を果たしたレミリア。
しかし進級試験の際に彼女の実力を嫉妬したシルヴィアの呪いで魔力を奪われ、婚約者であったオルクには婚約破棄されてしまう。
が、そんな彼女を助けてくれたのはアルフというミステリアスなクラスメイトであった。
レミリアはアルフとともに呪いを解き、シルヴィアへの復讐を行うことを決意する。
レミリアの魔力を奪ったシルヴィアは調子に乗っていたが、全校生徒の前で魔法を披露する際に魔力を奪い返され、醜態を晒すことになってしまう。
※3/6~ プチ改稿中

「宮廷魔術師の娘の癖に無能すぎる」と婚約破棄され親には出来損ないと言われたが、厄介払いと嫁に出された家はいいところだった
今川幸乃
ファンタジー
魔術の名門オールストン公爵家に生まれたレイラは、武門の名門と呼ばれたオーガスト公爵家の跡取りブランドと婚約させられた。
しかしレイラは魔法をうまく使うことも出来ず、ブランドに一方的に婚約破棄されてしまう。
それを聞いた宮廷魔術師の父はブランドではなくレイラに「出来損ないめ」と激怒し、まるで厄介払いのようにレイノルズ侯爵家という微妙な家に嫁に出されてしまう。夫のロルスは魔術には何の興味もなく、最初は仲も微妙だった。
一方ブランドはベラという魔法がうまい令嬢と婚約し、やはり婚約破棄して良かったと思うのだった。
しかしレイラが魔法を全然使えないのはオールストン家で毎日飲まされていた魔力増加薬が体質に合わず、魔力が暴走してしまうせいだった。
加えて毎日毎晩ずっと勉強や訓練をさせられて常に体調が悪かったことも原因だった。
レイノルズ家でのんびり過ごしていたレイラはやがて自分の真の力に気づいていく。
侯爵令嬢に転生したからには、何がなんでも生き抜きたいと思います!
珂里
ファンタジー
侯爵令嬢に生まれた私。
3歳のある日、湖で溺れて前世の記憶を思い出す。
高校に入学した翌日、川で溺れていた子供を助けようとして逆に私が溺れてしまった。
これからハッピーライフを満喫しようと思っていたのに!!
転生したからには、2度目の人生何がなんでも生き抜いて、楽しみたいと思います!!!
聖女追放 ~私が去ったあとは病で国は大変なことになっているでしょう~
白横町ねる
ファンタジー
聖女エリスは民の幸福を日々祈っていたが、ある日突然、王子から解任を告げられる。
王子の説得もままならないまま、国を追い出されてしまうエリス。
彼女は亡命のため、鞄一つで遠い隣国へ向かうのだった……。
#表紙絵は、もふ様に描いていただきました。
#エブリスタにて連載しました。
【完結】魔力がないと見下されていた私は仮面で素顔を隠した伯爵と結婚することになりました〜さらに魔力石まで作り出せなんて、冗談じゃない〜
光城 朱純
ファンタジー
魔力が強いはずの見た目に生まれた王女リーゼロッテ。
それにも拘わらず、魔力の片鱗すらみえないリーゼロッテは家族中から疎まれ、ある日辺境伯との結婚を決められる。
自分のあざを隠す為に仮面をつけて生活する辺境伯は、龍を操ることができると噂の伯爵。
隣に魔獣の出る森を持ち、雪深い辺境地での冷たい辺境伯との新婚生活は、身も心も凍えそう。
それでも国の端でひっそり生きていくから、もう放っておいて下さい。
私のことは私で何とかします。
ですから、国のことは国王が何とかすればいいのです。
魔力が使えない私に、魔力石を作り出せだなんて、そんなの無茶です。
もし作り出すことができたとしても、やすやすと渡したりしませんよ?
これまで虐げられた分、ちゃんと返して下さいね。
表紙はPhoto AC様よりお借りしております。
結婚しても別居して私は楽しくくらしたいので、どうぞ好きな女性を作ってください
シンさん
ファンタジー
サナス伯爵の娘、ニーナは隣国のアルデーテ王国の王太子との婚約が決まる。
国に行ったはいいけど、王都から程遠い別邸に放置され、1度も会いに来る事はない。
溺愛する女性がいるとの噂も!
それって最高!好きでもない男の子供をつくらなくていいかもしれないし。
それに私は、最初から別居して楽しく暮らしたかったんだから!
そんな別居願望たっぷりの伯爵令嬢と王子の恋愛ストーリー
最後まで書きあがっていますので、随時更新します。
表紙はエブリスタでBeeさんに描いて頂きました!綺麗なイラストが沢山ございます。リンク貼らせていただきました。
義妹の嫌がらせで、子持ち男性と結婚する羽目になりました。義理の娘に嫌われることも覚悟していましたが、本当の家族を手に入れることができました。
石河 翠
ファンタジー
義母と義妹の嫌がらせにより、子持ち男性の元に嫁ぐことになった主人公。夫になる男性は、前妻が残した一人娘を可愛がっており、新しい子どもはいらないのだという。
実家を出ても、自分は家族を持つことなどできない。そう思っていた主人公だが、娘思いの男性と素直になれないわがままな義理の娘に好感を持ち、少しずつ距離を縮めていく。
そんなある日、死んだはずの前妻が屋敷に現れ、主人公を追い出そうとしてきた。前妻いわく、血の繋がった母親の方が、継母よりも価値があるのだという。主人公が言葉に詰まったその時……。
血の繋がらない母と娘が家族になるまでのお話。
この作品は、小説家になろうおよびエブリスタにも投稿しております。
扉絵は、管澤捻さまに描いていただきました。

聖女の代わりがいくらでもいるなら、私がやめても構いませんよね?
木山楽斗
恋愛
聖女であるアルメアは、無能な上司である第三王子に困っていた。
彼は、自分の評判を上げるために、部下に苛烈な業務を強いていたのである。
それを抗議しても、王子は「嫌ならやめてもらっていい。お前の代わりなどいくらでもいる」と言って、取り合ってくれない。
それなら、やめてしまおう。そう思ったアルメアは、王城を後にして、故郷に帰ることにした。
故郷に帰って来たアルメアに届いたのは、聖女の業務が崩壊したという知らせだった。
どうやら、後任の聖女は王子の要求に耐え切れず、そこから様々な業務に支障をきたしているらしい。
王子は、理解していなかったのだ。その無理な業務は、アルメアがいたからこなせていたということに。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる