72 / 94
71話
しおりを挟む
「上手よ、ベン。
とても奇麗にできているわ」
「本当でございますよ、ベン殿下。
次はこの絵のように創れますか?」
「創れる」
ベン皇子が芸術に目覚めたというのは大袈裟だが、階段を創りだすのに慣れてきたカチュアが、階段の壁を滑らかな仕上がりから彫刻に変化させているのを見て、ベンも壁に凹凸を創りだすようにした。
その凹凸は、最初は母親であるカチュアの創りだす壁を真似たものであったが、徐々に後宮に置かれている絵画や彫刻を模したモノになっていった。
ある意味子供のお絵描きであり、泥んこ遊びでもある階段創りは、ベンを更に熱中させ、破壊攻撃的な魔術に興味があったベンを一変させた。
ベンは陰陽五行の魔法をバランスよく覚え、土に色を付けたり、宝石や金属を結晶化させたりして、色鮮やかで光り輝く壁画を創りだそうとした。
最初は思い通りの色がだせなかった。
元の絵画や彫刻と同じ造形に出来なかった。
思うような輝きを放つ金属や宝石を創りだすことができなかった。
癇癪を起して潰してしまう事も度々だった。
だが決して諦めなかった。
カチュアはベンをほめた。
ベン本人が納得できずに潰してやり直すようなところでも、よい所をほめた。
濁りがあり輝きが足らなくても、宝石を創り出した事をほめた。
その影響か、ベンは壁画にたくさんの宝石を埋めだした。
宝石を創れば創るほど、その精度は上手くなっていった。
中に含まれる異物が少なくなり、濁りがなくなり、色も鮮やかになる。
誰も見ない地下階段の壁画に埋め込むには惜しいくらい、美しい宝石が創れるようになっていたが、それはカチュアも同じだった。
女性魔術師団は方針を修正した。
魔術師の魔力量が足らずに使われる事がなくなり、歴史に埋もれた大魔術再現する基本方針は同じだが、宝石や魔晶石を創りだし備蓄することにした。
理由は簡単で、魔術の研究にはとてもお金が必要だった。
埋もれた魔術書を探し出すのにも費用がかかる上に、その魔術を再現するために用意しなければいけない素材も、貴重で高価だったからだ。
カチュア皇后陛下直属の魔術師団となり、潤沢な費用を使えるようになった今でも、長年の習性は変わらないモノだった。
私的に横領するような事はなかったが、研究資金として宝石や魔晶石を備蓄しておきたいという意識に変わりはなかった。
特に目立ったのが、非常時のために魔力を備蓄できる、魔晶石を肌身離さずに身につけている事だった。
その魔晶石を身につけている女性魔術師を、ベンが美しいと感じ、次々と魔晶石や宝石を創りだして、飾り立てて行った。
とても奇麗にできているわ」
「本当でございますよ、ベン殿下。
次はこの絵のように創れますか?」
「創れる」
ベン皇子が芸術に目覚めたというのは大袈裟だが、階段を創りだすのに慣れてきたカチュアが、階段の壁を滑らかな仕上がりから彫刻に変化させているのを見て、ベンも壁に凹凸を創りだすようにした。
その凹凸は、最初は母親であるカチュアの創りだす壁を真似たものであったが、徐々に後宮に置かれている絵画や彫刻を模したモノになっていった。
ある意味子供のお絵描きであり、泥んこ遊びでもある階段創りは、ベンを更に熱中させ、破壊攻撃的な魔術に興味があったベンを一変させた。
ベンは陰陽五行の魔法をバランスよく覚え、土に色を付けたり、宝石や金属を結晶化させたりして、色鮮やかで光り輝く壁画を創りだそうとした。
最初は思い通りの色がだせなかった。
元の絵画や彫刻と同じ造形に出来なかった。
思うような輝きを放つ金属や宝石を創りだすことができなかった。
癇癪を起して潰してしまう事も度々だった。
だが決して諦めなかった。
カチュアはベンをほめた。
ベン本人が納得できずに潰してやり直すようなところでも、よい所をほめた。
濁りがあり輝きが足らなくても、宝石を創り出した事をほめた。
その影響か、ベンは壁画にたくさんの宝石を埋めだした。
宝石を創れば創るほど、その精度は上手くなっていった。
中に含まれる異物が少なくなり、濁りがなくなり、色も鮮やかになる。
誰も見ない地下階段の壁画に埋め込むには惜しいくらい、美しい宝石が創れるようになっていたが、それはカチュアも同じだった。
女性魔術師団は方針を修正した。
魔術師の魔力量が足らずに使われる事がなくなり、歴史に埋もれた大魔術再現する基本方針は同じだが、宝石や魔晶石を創りだし備蓄することにした。
理由は簡単で、魔術の研究にはとてもお金が必要だった。
埋もれた魔術書を探し出すのにも費用がかかる上に、その魔術を再現するために用意しなければいけない素材も、貴重で高価だったからだ。
カチュア皇后陛下直属の魔術師団となり、潤沢な費用を使えるようになった今でも、長年の習性は変わらないモノだった。
私的に横領するような事はなかったが、研究資金として宝石や魔晶石を備蓄しておきたいという意識に変わりはなかった。
特に目立ったのが、非常時のために魔力を備蓄できる、魔晶石を肌身離さずに身につけている事だった。
その魔晶石を身につけている女性魔術師を、ベンが美しいと感じ、次々と魔晶石や宝石を創りだして、飾り立てて行った。
1
お気に入りに追加
3,377
あなたにおすすめの小説
婚約破棄ですか???実家からちょうど帰ってこいと言われたので好都合です!!!これからは復讐をします!!!~どこにでもある普通の令嬢物語~
tartan321
恋愛
婚約破棄とはなかなか考えたものでございますね。しかしながら、私はもう帰って来いと言われてしまいました。ですから、帰ることにします。これで、あなた様の口うるさい両親や、その他の家族の皆様とも顔を合わせることがないのですね。ラッキーです!!!
壮大なストーリーで奏でる、感動的なファンタジーアドベンチャーです!!!!!最後の涙の理由とは???
一度完結といたしました。続編は引き続き書きたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
偽りの婚姻
迷い人
ファンタジー
ルーペンス国とその南国に位置する国々との長きに渡る戦争が終わりをつげ、終戦協定が結ばれた祝いの席。
終戦の祝賀会の場で『パーシヴァル・フォン・ヘルムート伯爵』は、10年前に結婚して以来1度も会話をしていない妻『シヴィル』を、祝賀会の会場で探していた。
夫が多大な功績をたてた場で、祝わぬ妻などいるはずがない。
パーシヴァルは妻を探す。
妻の実家から受けた援助を返済し、離婚を申し立てるために。
だが、妻と思っていた相手との間に、婚姻の事実はなかった。
婚姻の事実がないのなら、借金を返す相手がいないのなら、自由になればいいという者もいるが、パーシヴァルは妻と思っていた女性シヴィルを探しそして思いを伝えようとしたのだが……
召喚されたら聖女が二人!? 私はお呼びじゃないようなので好きに生きます
かずきりり
ファンタジー
旧題:召喚された二人の聖女~私はお呼びじゃないようなので好きに生きます~
【第14回ファンタジー小説大賞エントリー】
奨励賞受賞
●聖女編●
いきなり召喚された上に、ババァ発言。
挙句、偽聖女だと。
確かに女子高生の方が聖女らしいでしょう、そうでしょう。
だったら好きに生きさせてもらいます。
脱社畜!
ハッピースローライフ!
ご都合主義万歳!
ノリで生きて何が悪い!
●勇者編●
え?勇者?
うん?勇者?
そもそも召喚って何か知ってますか?
またやらかしたのかバカ王子ー!
●魔界編●
いきおくれって分かってるわー!
それよりも、クロを探しに魔界へ!
魔界という場所は……とてつもなかった
そしてクロはクロだった。
魔界でも見事になしてみせようスローライフ!
邪魔するなら排除します!
--------------
恋愛はスローペース
物事を組み立てる、という訓練のため三部作長編を予定しております。
辺境の獣医令嬢〜婚約者を妹に奪われた伯爵令嬢ですが、辺境で獣医になって可愛い神獣たちと楽しくやってます〜
津ヶ谷
恋愛
ラース・ナイゲールはローラン王国の伯爵令嬢である。
次期公爵との婚約も決まっていた。
しかし、突然に婚約破棄を言い渡される。
次期公爵の新たな婚約者は妹のミーシャだった。
そう、妹に婚約者を奪われたのである。
そんなラースだったが、気持ちを新たに次期辺境伯様との婚約が決まった。
そして、王国の辺境の地でラースは持ち前の医学知識と治癒魔法を活かし、獣医となるのだった。
次々と魔獣や神獣を治していくラースは、魔物たちに気に入られて楽しく過ごすこととなる。
これは、辺境の獣医令嬢と呼ばれるラースが新たな幸せを掴む物語。
虐げられた令嬢は、姉の代わりに王子へ嫁ぐ――たとえお飾りの妃だとしても
千堂みくま
恋愛
「この卑しい娘め、おまえはただの身代わりだろうが!」 ケルホーン伯爵家に生まれたシーナは、ある理由から義理の家族に虐げられていた。シーナは姉のルターナと瓜二つの顔を持ち、背格好もよく似ている。姉は病弱なため、義父はシーナに「ルターナの代わりに、婚約者のレクオン王子と面会しろ」と強要してきた。二人はなんとか支えあって生きてきたが、とうとうある冬の日にルターナは帰らぬ人となってしまう。「このお金を持って、逃げて――」ルターナは最後の力で屋敷から妹を逃がし、シーナは名前を捨てて別人として暮らしはじめたが、レクオン王子が迎えにやってきて……。○第15回恋愛小説大賞に参加しています。もしよろしければ応援お願いいたします。
継母や義妹に家事を押し付けられていた灰被り令嬢は、嫁ぎ先では感謝されました
今川幸乃
恋愛
貧乏貴族ローウェル男爵家の娘キャロルは父親の継母エイダと、彼女が連れてきた連れ子のジェーン、使用人のハンナに嫌がらせされ、仕事を押し付けられる日々を送っていた。
そんなある日、キャロルはローウェル家よりもさらに貧乏と噂のアーノルド家に嫁に出されてしまう。
しかし婚約相手のブラッドは家は貧しいものの、優しい性格で才気に溢れていた。
また、アーノルド家の人々は家事万能で文句ひとつ言わずに家事を手伝うキャロルに感謝するのだった。
一方、キャロルがいなくなった後のローウェル家は家事が終わらずに滅茶苦茶になっていくのであった。
※4/20 完結していたのに完結をつけ忘れてましたので完結にしました。
お前など家族ではない!と叩き出されましたが、家族になってくれという奇特な騎士に拾われました
蒼衣翼
恋愛
アイメリアは今年十五歳になる少女だ。
家族に虐げられて召使いのように働かされて育ったアイメリアは、ある日突然、父親であった存在に「お前など家族ではない!」と追い出されてしまう。
アイメリアは養子であり、家族とは血の繋がりはなかったのだ。
閉じ込められたまま外を知らずに育ったアイメリアは窮地に陥るが、救ってくれた騎士の身の回りの世話をする仕事を得る。
養父母と義姉が自らの企みによって窮地に陥り、落ちぶれていく一方で、アイメリアはその秘められた才能を開花させ、救い主の騎士と心を通わせ、自らの居場所を作っていくのだった。
※小説家になろうさま・カクヨムさまにも掲載しています。
妹の方がいいと婚約破棄を受けた私は、辺境伯と婚約しました
天宮有
恋愛
婚約者レヴォク様に「お前の妹の方がいい」と言われ、伯爵令嬢の私シーラは婚約破棄を受けてしまう。
事態に備えて様々な魔法を覚えていただけなのに、妹ソフィーは私が危険だとレヴォク様に伝えた。
それを理由に婚約破棄したレヴォク様は、ソフィーを新しい婚約者にする。
そして私は、辺境伯のゼロア様と婚約することになっていた。
私は危険で有名な辺境に行くことで――ゼロア様の力になることができていた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる