71 / 94
70話
しおりを挟む
「ママ、楽しい!」
「あら、あら、あら。
やり過ぎてはいけませんよ」
「分かった」
カチュアの願いは許可され、後宮の広さに限って地下練習場を作る権利を得た。
井戸や上水下水に悪影響を与えないように、まずは階段を創る。
階段を安全な深さにまで創り出してから、今度は横に強力な岩盤を創る。
後宮に悪影響を与えないように、厚く強固な岩盤を創り出す。
運動大好きなベン皇子は、最初何の興味も示さず、いつも通りの魔術訓練と、いつも通りの体術訓練を行っていた。
だが、カチュアがどんどん階段を深くしていくのを見て、だんだん興味が引かれたようで、一緒に階段を創り始めた。
最初は壊したり雑だったりしたが、カチュアはたしなめることなく、壊したところは創り直し、雑な所は丁寧に仕上がる。
なかにはそれが嫌になって止める者もいるだろうが、ベンは逆に意地になった。
自分が汚くしか作れない所を、母親が奇麗に美しく仕上げている。
それがベンの負けん気を大きく刺激した。
ベンは夢中になって奇麗に階段を創ろうとした。
最初に滑らかな仕上がりを心掛けていたカチュアを真似て、同じように滑らかに仕上げようと、細心の注意を払って魔力を使うようになった。
魔力の細やかなコントロールは、限られた魔力で戦う魔術師とにとっては、生死を分けるほどの重大な能力だった。
だがカチュアは、ベンのために魔術訓練だけに集中しなかった。
食事をとり休息をとり、側近の混血虎獣人族の子供達と運動する時間も作った。
一旦激しく遊びだすと、ベンは階段作りの事など忘れて、夢中で激しく争う。
ケンカというわけではないが、順位付けの争いは獣人族の本能だ。
これは混血にもある、というか、人間にも順位付けの本能はあった。
更にここにレオの誘導がある。
レオがベンを越える力を発揮して、ベンがヘトヘトに疲れるまで誘導するのだ。
ギリギリ追いつけるか追いつけないのかの所で、ベンから逃げるのだ。
そのため常に限界一杯にベンは能力を振り絞る。
そのお陰で、ベンの能力は毎日格段に向上していた。
悔しく思うベンは、魔術を使ってレオを攻撃しようとしたのだが、それはカチュアが絶対に許さなかった。
ベンが魔術を使おうとするたびに、厳しくたしなめなれた。
どのように素早く強い魔法を使おうとしても、カチュアに中和されてしまう。
レオも素早く強くなっており、ベンの魔術を避ける事はできるのだが、カチュアは心配して魔術を発動させなかった。
これがまたカチュアとベンのよい訓練になっていた。
「あら、あら、あら。
やり過ぎてはいけませんよ」
「分かった」
カチュアの願いは許可され、後宮の広さに限って地下練習場を作る権利を得た。
井戸や上水下水に悪影響を与えないように、まずは階段を創る。
階段を安全な深さにまで創り出してから、今度は横に強力な岩盤を創る。
後宮に悪影響を与えないように、厚く強固な岩盤を創り出す。
運動大好きなベン皇子は、最初何の興味も示さず、いつも通りの魔術訓練と、いつも通りの体術訓練を行っていた。
だが、カチュアがどんどん階段を深くしていくのを見て、だんだん興味が引かれたようで、一緒に階段を創り始めた。
最初は壊したり雑だったりしたが、カチュアはたしなめることなく、壊したところは創り直し、雑な所は丁寧に仕上がる。
なかにはそれが嫌になって止める者もいるだろうが、ベンは逆に意地になった。
自分が汚くしか作れない所を、母親が奇麗に美しく仕上げている。
それがベンの負けん気を大きく刺激した。
ベンは夢中になって奇麗に階段を創ろうとした。
最初に滑らかな仕上がりを心掛けていたカチュアを真似て、同じように滑らかに仕上げようと、細心の注意を払って魔力を使うようになった。
魔力の細やかなコントロールは、限られた魔力で戦う魔術師とにとっては、生死を分けるほどの重大な能力だった。
だがカチュアは、ベンのために魔術訓練だけに集中しなかった。
食事をとり休息をとり、側近の混血虎獣人族の子供達と運動する時間も作った。
一旦激しく遊びだすと、ベンは階段作りの事など忘れて、夢中で激しく争う。
ケンカというわけではないが、順位付けの争いは獣人族の本能だ。
これは混血にもある、というか、人間にも順位付けの本能はあった。
更にここにレオの誘導がある。
レオがベンを越える力を発揮して、ベンがヘトヘトに疲れるまで誘導するのだ。
ギリギリ追いつけるか追いつけないのかの所で、ベンから逃げるのだ。
そのため常に限界一杯にベンは能力を振り絞る。
そのお陰で、ベンの能力は毎日格段に向上していた。
悔しく思うベンは、魔術を使ってレオを攻撃しようとしたのだが、それはカチュアが絶対に許さなかった。
ベンが魔術を使おうとするたびに、厳しくたしなめなれた。
どのように素早く強い魔法を使おうとしても、カチュアに中和されてしまう。
レオも素早く強くなっており、ベンの魔術を避ける事はできるのだが、カチュアは心配して魔術を発動させなかった。
これがまたカチュアとベンのよい訓練になっていた。
1
お気に入りに追加
3,386
あなたにおすすめの小説

学園首席の私は魔力を奪われて婚約破棄されたけど、借り物の魔力でいつまで調子に乗っているつもり?
今川幸乃
ファンタジー
下級貴族の生まれながら魔法の練習に励み、貴族の子女が集まるデルフィーラ学園に首席入学を果たしたレミリア。
しかし進級試験の際に彼女の実力を嫉妬したシルヴィアの呪いで魔力を奪われ、婚約者であったオルクには婚約破棄されてしまう。
が、そんな彼女を助けてくれたのはアルフというミステリアスなクラスメイトであった。
レミリアはアルフとともに呪いを解き、シルヴィアへの復讐を行うことを決意する。
レミリアの魔力を奪ったシルヴィアは調子に乗っていたが、全校生徒の前で魔法を披露する際に魔力を奪い返され、醜態を晒すことになってしまう。
※3/6~ プチ改稿中

「宮廷魔術師の娘の癖に無能すぎる」と婚約破棄され親には出来損ないと言われたが、厄介払いと嫁に出された家はいいところだった
今川幸乃
ファンタジー
魔術の名門オールストン公爵家に生まれたレイラは、武門の名門と呼ばれたオーガスト公爵家の跡取りブランドと婚約させられた。
しかしレイラは魔法をうまく使うことも出来ず、ブランドに一方的に婚約破棄されてしまう。
それを聞いた宮廷魔術師の父はブランドではなくレイラに「出来損ないめ」と激怒し、まるで厄介払いのようにレイノルズ侯爵家という微妙な家に嫁に出されてしまう。夫のロルスは魔術には何の興味もなく、最初は仲も微妙だった。
一方ブランドはベラという魔法がうまい令嬢と婚約し、やはり婚約破棄して良かったと思うのだった。
しかしレイラが魔法を全然使えないのはオールストン家で毎日飲まされていた魔力増加薬が体質に合わず、魔力が暴走してしまうせいだった。
加えて毎日毎晩ずっと勉強や訓練をさせられて常に体調が悪かったことも原因だった。
レイノルズ家でのんびり過ごしていたレイラはやがて自分の真の力に気づいていく。
侯爵令嬢に転生したからには、何がなんでも生き抜きたいと思います!
珂里
ファンタジー
侯爵令嬢に生まれた私。
3歳のある日、湖で溺れて前世の記憶を思い出す。
高校に入学した翌日、川で溺れていた子供を助けようとして逆に私が溺れてしまった。
これからハッピーライフを満喫しようと思っていたのに!!
転生したからには、2度目の人生何がなんでも生き抜いて、楽しみたいと思います!!!
聖女追放 ~私が去ったあとは病で国は大変なことになっているでしょう~
白横町ねる
ファンタジー
聖女エリスは民の幸福を日々祈っていたが、ある日突然、王子から解任を告げられる。
王子の説得もままならないまま、国を追い出されてしまうエリス。
彼女は亡命のため、鞄一つで遠い隣国へ向かうのだった……。
#表紙絵は、もふ様に描いていただきました。
#エブリスタにて連載しました。
【完結】魔力がないと見下されていた私は仮面で素顔を隠した伯爵と結婚することになりました〜さらに魔力石まで作り出せなんて、冗談じゃない〜
光城 朱純
ファンタジー
魔力が強いはずの見た目に生まれた王女リーゼロッテ。
それにも拘わらず、魔力の片鱗すらみえないリーゼロッテは家族中から疎まれ、ある日辺境伯との結婚を決められる。
自分のあざを隠す為に仮面をつけて生活する辺境伯は、龍を操ることができると噂の伯爵。
隣に魔獣の出る森を持ち、雪深い辺境地での冷たい辺境伯との新婚生活は、身も心も凍えそう。
それでも国の端でひっそり生きていくから、もう放っておいて下さい。
私のことは私で何とかします。
ですから、国のことは国王が何とかすればいいのです。
魔力が使えない私に、魔力石を作り出せだなんて、そんなの無茶です。
もし作り出すことができたとしても、やすやすと渡したりしませんよ?
これまで虐げられた分、ちゃんと返して下さいね。
表紙はPhoto AC様よりお借りしております。
結婚しても別居して私は楽しくくらしたいので、どうぞ好きな女性を作ってください
シンさん
ファンタジー
サナス伯爵の娘、ニーナは隣国のアルデーテ王国の王太子との婚約が決まる。
国に行ったはいいけど、王都から程遠い別邸に放置され、1度も会いに来る事はない。
溺愛する女性がいるとの噂も!
それって最高!好きでもない男の子供をつくらなくていいかもしれないし。
それに私は、最初から別居して楽しく暮らしたかったんだから!
そんな別居願望たっぷりの伯爵令嬢と王子の恋愛ストーリー
最後まで書きあがっていますので、随時更新します。
表紙はエブリスタでBeeさんに描いて頂きました!綺麗なイラストが沢山ございます。リンク貼らせていただきました。
義妹の嫌がらせで、子持ち男性と結婚する羽目になりました。義理の娘に嫌われることも覚悟していましたが、本当の家族を手に入れることができました。
石河 翠
ファンタジー
義母と義妹の嫌がらせにより、子持ち男性の元に嫁ぐことになった主人公。夫になる男性は、前妻が残した一人娘を可愛がっており、新しい子どもはいらないのだという。
実家を出ても、自分は家族を持つことなどできない。そう思っていた主人公だが、娘思いの男性と素直になれないわがままな義理の娘に好感を持ち、少しずつ距離を縮めていく。
そんなある日、死んだはずの前妻が屋敷に現れ、主人公を追い出そうとしてきた。前妻いわく、血の繋がった母親の方が、継母よりも価値があるのだという。主人公が言葉に詰まったその時……。
血の繋がらない母と娘が家族になるまでのお話。
この作品は、小説家になろうおよびエブリスタにも投稿しております。
扉絵は、管澤捻さまに描いていただきました。

聖女の代わりがいくらでもいるなら、私がやめても構いませんよね?
木山楽斗
恋愛
聖女であるアルメアは、無能な上司である第三王子に困っていた。
彼は、自分の評判を上げるために、部下に苛烈な業務を強いていたのである。
それを抗議しても、王子は「嫌ならやめてもらっていい。お前の代わりなどいくらでもいる」と言って、取り合ってくれない。
それなら、やめてしまおう。そう思ったアルメアは、王城を後にして、故郷に帰ることにした。
故郷に帰って来たアルメアに届いたのは、聖女の業務が崩壊したという知らせだった。
どうやら、後任の聖女は王子の要求に耐え切れず、そこから様々な業務に支障をきたしているらしい。
王子は、理解していなかったのだ。その無理な業務は、アルメアがいたからこなせていたということに。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる