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61話
しおりを挟む「サミュエル殿下、これ、受け取ってください」
「サミュエル殿下、今日ご予定はございますか?一緒にお茶でもいかがですか?」
あの日以降、令嬢たちはサミュエル殿下によく話しかけている。そんな姿を見ると、相変わらず胸が張り裂けそうになるが、私にはどうする事も出来ない。
そっとサミュエル殿下たちの傍を離れた。
「キャリーヌ、最近令嬢たちのサミュエル殿下へのアプローチがすごいわね。ねえ、本当にこのままでいいの?あなた、サミュエル殿下の事が好きなのでしょう?」
私に話しかけてきたのは、ミリアム様だ。
「私はサミュエル殿下の事は、何とも…」
「嘘おっしゃい!あなたが切なそうにサミュエル殿下を見つめているのを、私は知っているのよ。どうしてサミュエル殿下を避けるの?あなただって、サミュエル殿下の事が好きなのでしょう?それなら、どうして?」
「私はサミュエル殿下の事を、傷つけ裏切ったのです。だから私には…」
「私には、サミュエル殿下と幸せになる権利はないとでも言いたいの?その件に関しては、サミュエル殿下は気にしていないのよ」
「それでも私が気になるのです!どうかもう、サミュエル殿下と私の事は放っておいてください」
「待って…キャリーヌ…」
後ろでミリアム様の声が聞こえるが、今はミリアム様の傍にいる勇気がない。そもそもミリアム様は、私がサミュエル殿下にした仕打ちをよく知らないから、あんなことが言えるのよ!
カイロ様と仲睦まじいミリアム様に、私の気持ちなんてわからないわ!必死に涙を堪え、馬車に乗り込み家路についた。そして、すぐに自室に向かう。部屋についた瞬間、涙が溢れ出る。
苦しい…悲しい…辛い…そんな感情が溢れ出る。私だってサミュエル殿下の傍にいれたら、どんなにいいだろう。でも私は、彼を裏切ったという罪悪感が、それを許さないのだ。
「お嬢様…奥様がお呼びですが…お嬢様は体調が悪いという事にして、お断りしましょうか?」
どれくらい泣いていただろう。申し訳なさそうに、クラミーが話しかけてきたのだ。クラミーにも随分心配をかけている事は分かっている。
でも、自分でもどうする事が出来ないのだ。
「私は大丈夫よ、お姉様が呼んでいるのね。すぐに行くわ。ただ、こんな顔ではいけないから、目を冷やしてくれるかしら」
「かしこまりました。お嬢様、どうかご無理をなさらずに」
そう言いながら、私の目を冷やしてくれるクラミー。落ち着いたところで、お姉様の元へと向かおうとした時だった。待ちくたびれたのか、お姉様が部屋までやって来たのだ。
「キャリーヌ?遅いから来たわよ。今から王宮に行く事になったら、すぐに準備をして」
「えっ?王宮にですか?分かりました、すぐに準備をします」
一体何の用で王宮に向かうのだろう。心当たりと言えば…サミュエル殿下の事かしら?サミュエル殿下がカリアン王国に留学して来てから、早1ヶ月半、ずっと冷たくしていたから、さすがに注意を受けるとか?
いや…そんな事はないだろう。だとすると、一体なんだろう。不思議に思いつつ準備を整えると、お姉様とお義兄様と一緒に、王宮へと向かった。
王宮に着くと、王太子殿下と王太子妃殿下、ミリアム様とカイロ様、さらにサミュエル殿下が待っていた。
「クレスティル公爵、夫人、キャリーヌ嬢、急に呼び出してすまなかったね。実はサミュエル殿下が、急遽帰国する事になって。それで最後に君たちに挨拶をしたいとの事で、来てもらったんだよ」
急遽国に帰るですって…
そんな…
「確か留学期間は3ヶ月でしたよね?急に帰国されるとは、一体どういうことですか?それではキャリーヌも一緒に、帰国するという事ですか?」
お姉様も何も聞いていなかったようで、混乱している。もちろん、私も一体何が起きているのかさっぱりわからない。
「キャリーヌは連れて帰るつもりはないよ…キャリーヌ、僕のせいで辛い思いをさせてしまって、本当にすまなかったね。僕が来てからのキャリーヌは、本当に辛そうで…僕はこれ以上、君に悲しい顔をして欲しくないんだ。だから僕は、国に帰る事にした。キャリーヌ、どうかこの国で幸せになってくれ。君は兄上のせいで、随分傷ついた。だからこそ、幸せになる権利がある。それを邪魔する事なんて、誰にも出来ない。もちろん、僕にもね」
そう言うと、悲しそうに笑ったサミュエル殿下。
サミュエル殿下は、私の為に帰国するの?
でも…
それならそれでいいのかもしれない。サミュエル殿下にとっては、この国に長くいるメリットなんてない。自国でやらなければいけないことが、沢山あるはずだ。それに、私の事は忘れて、早く素敵な令嬢を見つけて欲しい。
「そうですか…サミュエル殿下、あなた様ならきっと、立派な国王陛下になられますわ。どうか…どうか素敵な令嬢を見つけて、幸せになってください。それでは私は、失礼いたします」
ダメだ、これ以上サミュエル殿下を見ていたら、涙が込みあげてきた。王族の方たちがいるまで、泣く訳にはいかない。
サミュエル殿下や王族の方たちに一礼をして、その場を後にしたのだった。
「サミュエル殿下、今日ご予定はございますか?一緒にお茶でもいかがですか?」
あの日以降、令嬢たちはサミュエル殿下によく話しかけている。そんな姿を見ると、相変わらず胸が張り裂けそうになるが、私にはどうする事も出来ない。
そっとサミュエル殿下たちの傍を離れた。
「キャリーヌ、最近令嬢たちのサミュエル殿下へのアプローチがすごいわね。ねえ、本当にこのままでいいの?あなた、サミュエル殿下の事が好きなのでしょう?」
私に話しかけてきたのは、ミリアム様だ。
「私はサミュエル殿下の事は、何とも…」
「嘘おっしゃい!あなたが切なそうにサミュエル殿下を見つめているのを、私は知っているのよ。どうしてサミュエル殿下を避けるの?あなただって、サミュエル殿下の事が好きなのでしょう?それなら、どうして?」
「私はサミュエル殿下の事を、傷つけ裏切ったのです。だから私には…」
「私には、サミュエル殿下と幸せになる権利はないとでも言いたいの?その件に関しては、サミュエル殿下は気にしていないのよ」
「それでも私が気になるのです!どうかもう、サミュエル殿下と私の事は放っておいてください」
「待って…キャリーヌ…」
後ろでミリアム様の声が聞こえるが、今はミリアム様の傍にいる勇気がない。そもそもミリアム様は、私がサミュエル殿下にした仕打ちをよく知らないから、あんなことが言えるのよ!
カイロ様と仲睦まじいミリアム様に、私の気持ちなんてわからないわ!必死に涙を堪え、馬車に乗り込み家路についた。そして、すぐに自室に向かう。部屋についた瞬間、涙が溢れ出る。
苦しい…悲しい…辛い…そんな感情が溢れ出る。私だってサミュエル殿下の傍にいれたら、どんなにいいだろう。でも私は、彼を裏切ったという罪悪感が、それを許さないのだ。
「お嬢様…奥様がお呼びですが…お嬢様は体調が悪いという事にして、お断りしましょうか?」
どれくらい泣いていただろう。申し訳なさそうに、クラミーが話しかけてきたのだ。クラミーにも随分心配をかけている事は分かっている。
でも、自分でもどうする事が出来ないのだ。
「私は大丈夫よ、お姉様が呼んでいるのね。すぐに行くわ。ただ、こんな顔ではいけないから、目を冷やしてくれるかしら」
「かしこまりました。お嬢様、どうかご無理をなさらずに」
そう言いながら、私の目を冷やしてくれるクラミー。落ち着いたところで、お姉様の元へと向かおうとした時だった。待ちくたびれたのか、お姉様が部屋までやって来たのだ。
「キャリーヌ?遅いから来たわよ。今から王宮に行く事になったら、すぐに準備をして」
「えっ?王宮にですか?分かりました、すぐに準備をします」
一体何の用で王宮に向かうのだろう。心当たりと言えば…サミュエル殿下の事かしら?サミュエル殿下がカリアン王国に留学して来てから、早1ヶ月半、ずっと冷たくしていたから、さすがに注意を受けるとか?
いや…そんな事はないだろう。だとすると、一体なんだろう。不思議に思いつつ準備を整えると、お姉様とお義兄様と一緒に、王宮へと向かった。
王宮に着くと、王太子殿下と王太子妃殿下、ミリアム様とカイロ様、さらにサミュエル殿下が待っていた。
「クレスティル公爵、夫人、キャリーヌ嬢、急に呼び出してすまなかったね。実はサミュエル殿下が、急遽帰国する事になって。それで最後に君たちに挨拶をしたいとの事で、来てもらったんだよ」
急遽国に帰るですって…
そんな…
「確か留学期間は3ヶ月でしたよね?急に帰国されるとは、一体どういうことですか?それではキャリーヌも一緒に、帰国するという事ですか?」
お姉様も何も聞いていなかったようで、混乱している。もちろん、私も一体何が起きているのかさっぱりわからない。
「キャリーヌは連れて帰るつもりはないよ…キャリーヌ、僕のせいで辛い思いをさせてしまって、本当にすまなかったね。僕が来てからのキャリーヌは、本当に辛そうで…僕はこれ以上、君に悲しい顔をして欲しくないんだ。だから僕は、国に帰る事にした。キャリーヌ、どうかこの国で幸せになってくれ。君は兄上のせいで、随分傷ついた。だからこそ、幸せになる権利がある。それを邪魔する事なんて、誰にも出来ない。もちろん、僕にもね」
そう言うと、悲しそうに笑ったサミュエル殿下。
サミュエル殿下は、私の為に帰国するの?
でも…
それならそれでいいのかもしれない。サミュエル殿下にとっては、この国に長くいるメリットなんてない。自国でやらなければいけないことが、沢山あるはずだ。それに、私の事は忘れて、早く素敵な令嬢を見つけて欲しい。
「そうですか…サミュエル殿下、あなた様ならきっと、立派な国王陛下になられますわ。どうか…どうか素敵な令嬢を見つけて、幸せになってください。それでは私は、失礼いたします」
ダメだ、これ以上サミュエル殿下を見ていたら、涙が込みあげてきた。王族の方たちがいるまで、泣く訳にはいかない。
サミュエル殿下や王族の方たちに一礼をして、その場を後にしたのだった。
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