虐待され続けた公爵令嬢は身代わり花嫁にされました。

克全

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46話

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「父上、愚か者は死んでください」
「な?
 うぐっ!」

「兄上、家のためです」
「うぎゃ!」

「逆賊!」
「ぎゃぁああああ!」

 ハレの儀式の日に、サヴィル王国を討伐併合し、カチュアが女王に就任したことを正式に発表する場で、大々的な粛清が行われた。
 それも、アレサンドの側近忠臣は動かなかった。
 直接動いたのは、カチュアに敵意や疑念を持ち、反カチュアの工作をしていた傍系王族と譜代功臣家の一族だった。

 武闘派のアレサンドの側近忠臣には、同じ武闘派が多い。
 だが、少数だが軍師や策謀家もいる。
 その謀臣が、傍系王族と譜代功臣家の中にいる、反当主の者達を唆した。
 このままでは家が滅ぶと。
 彼らの多くは、現当主と当主争いをした者の子孫だ。

 現当主の兄弟姉妹の子供や、兄弟姉妹の重臣だった者の子供だ。
 現体制のままでは、一生浮き上がる事のできない日陰者だ。
 彼らは家を守るという表向きの大義名分を使い、自分の欲望を満たすために、現当主とその子供と重臣達を殺した。

 彼らは主殺し伯父殺し兄殺しの汚名を着ることになった。
 表向きは皇帝陛下に歯向かう反逆者を殺した功臣という事になっている。
 だが虎獣人族の社交界では忌み嫌われる結果となった。
 報酬として傍系王族と譜代功臣家の当主になれたかといえば、なれなかった。

 表向きカチュア皇妃殿下がサヴィル王国女王戴冠発表のハレの日に、皇帝一家を弑逆しようとした大罪人の家だ。
 取り潰す以外の選択はない。
 彼らを殺した者達は、貴族の一族ではあるが、爵位を持たない最下層の貴族扱いの者達だ。

 皇帝一家への叛乱を未然に防いだとはいえ、最下層のギリギリ貴族扱い、もしくは陪臣士族が新規叙勲されるのに、傍系王族や侯爵大侯爵に取立てられるわけがない。
 最下層でも貴族扱いだった者は、宮中伯に叙勲された。
 陪臣士族だった者は、士族だったころの領地に加え、宮中顧問官男爵(宮中男)という名誉職を与えられた。
 殺されなかった者達は、皇室の直臣士族に取立てられた。

 彼らの気持ちはどうだったかといえば、ごく一部の、傍系王族や譜代功臣家の当主を夢見ていた者以外は、全員満足していた。
 元々群れなすことよりも個人で生きていく本能が強い虎獣人族だ。
 主君が殺されてもそれは弱かったからで、自分の縄張り領地が認められ、男爵に叙勲されたり直臣士族に取立てられたら、敵意を持ち続ける事はなかった。

 結果アレサンドは、広大な領地を直轄領とした上に、いつ叛乱を起こすか分からない獅子身中の虫を叩き潰すことができた。
 だがそんなことよりも、カチュアの安全が確立されたことが一番だった。
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