32 / 94
31話
しおりを挟む
カチュアの安全と独占欲の影響で、セントウィン王国国王に戴冠したアレサンドは、戴冠式の後で直ぐにウィントン大公領に戻っていた。
当然カチュアと共にだ。
王国の首都にあるセントウィン城は、周辺を敵対的な人族の国々に囲まれ、王都や王城の防御力も信じられないので、使い慣れて安心できるウィントン城の後宮でカチュアを護りたい一心だ。
カチュアに出会う前のアレサンドなら、セントウィン城に居を定め、虎視眈々と周辺の人族王国を狙っていただろう。
何人もの女性画家が後宮に集められていた。
今迄は肖像画になど興味がなく、戴冠や戦勝記念に一幅仕方なく描かせる程度だったのに、今はカチュアの姿を記録したくて、多くの女性画家を召し抱えていた。
特に今日は、戴冠式の手繋ぎを再現するために、また堂々を手繋ぎできる。
皆の前で、特に人族の前で、カチュアが自分の妻だとアピールすることは、何ともいえない快感がある。
カチュアとも甘い秘め事も、色に落ちそうなくらい快楽が激しいのだが、それとはまた違う天にも昇る快楽がある。
それに、カチュアとの秘め事は、後宮の仕来りとは言え、二人きりになれない。
検分役がいて、全てを記録してしまう。
時間も回数もだ、秘め事が秘め事でなくなってしまう。
アレサンドも頭では必要だと分かっているのだ。
不義密通による王家乗っ取りや、側室や愛妾による過度な政務介入を防ぐため、一言一句記録し、表の側近忠臣重臣に披露しなければいけないのは。
だが、カチュアに恋してから、二人の秘め事を公開することに、何ともいえない苛立ち、怒りを感じてしまうのだ。
それに、検分役が余計な事を言うのだ。
「それ以上はカチュア様にご負担でございます」と!
まあ、確かに、つがいの呪縛に囚われたアレサンドは、盛りのついた犬状態ではあるのだが、カチュアが拒否しないならいいではないかと思ってしまうのだ。
だが、その不満を補って余りあるのが、カチュアと一緒に女性画家の前に出ることで、名誉欲というのか承認欲というのか分からない、欲を満足させてくれるのだ。
そしてこの日は、政務で後宮に来れない間に、カチュアとレオが肖像画をかかせたと聞いてしまっていた。
まだ下書きの状態で、鉛筆による線描写でしかないのだが、レオがカチュアの膝に抱かれていて、アレサンドは激しく嫉妬していた。
その所為だろうか。
アレサンドは突然カチュアを抱き上げ、お姫様抱っこをした。
「よいか!
余とカチュアのこの姿を描き残すのだ!
レオとカチュアの絵に劣るようなら、お前達の首を刎ねてやるぞ!」
「アレサンド。
そのような事を言っては嫌です。
皆で仲良く暮らすと言ったではありませんか。
あの約束は嘘だったのですか?
アレサンドは嘘つきなのですか?」
「いや、その、違うのだ。
ちょっと画家達に喝を入れただけで、本気ではなのだ。
首など刎ねない。
絶対に刎ねない。
むしろよく描けた画家には褒美をやろうと思っていたのだ。
だからそんな哀しそうな顔をしないでくれ」
何かあれば直ぐにカチュアが助ける事が増えていた。
いつの間にかカチュアを頼る者達が周囲に集まって来ていた。
当然カチュアと共にだ。
王国の首都にあるセントウィン城は、周辺を敵対的な人族の国々に囲まれ、王都や王城の防御力も信じられないので、使い慣れて安心できるウィントン城の後宮でカチュアを護りたい一心だ。
カチュアに出会う前のアレサンドなら、セントウィン城に居を定め、虎視眈々と周辺の人族王国を狙っていただろう。
何人もの女性画家が後宮に集められていた。
今迄は肖像画になど興味がなく、戴冠や戦勝記念に一幅仕方なく描かせる程度だったのに、今はカチュアの姿を記録したくて、多くの女性画家を召し抱えていた。
特に今日は、戴冠式の手繋ぎを再現するために、また堂々を手繋ぎできる。
皆の前で、特に人族の前で、カチュアが自分の妻だとアピールすることは、何ともいえない快感がある。
カチュアとも甘い秘め事も、色に落ちそうなくらい快楽が激しいのだが、それとはまた違う天にも昇る快楽がある。
それに、カチュアとの秘め事は、後宮の仕来りとは言え、二人きりになれない。
検分役がいて、全てを記録してしまう。
時間も回数もだ、秘め事が秘め事でなくなってしまう。
アレサンドも頭では必要だと分かっているのだ。
不義密通による王家乗っ取りや、側室や愛妾による過度な政務介入を防ぐため、一言一句記録し、表の側近忠臣重臣に披露しなければいけないのは。
だが、カチュアに恋してから、二人の秘め事を公開することに、何ともいえない苛立ち、怒りを感じてしまうのだ。
それに、検分役が余計な事を言うのだ。
「それ以上はカチュア様にご負担でございます」と!
まあ、確かに、つがいの呪縛に囚われたアレサンドは、盛りのついた犬状態ではあるのだが、カチュアが拒否しないならいいではないかと思ってしまうのだ。
だが、その不満を補って余りあるのが、カチュアと一緒に女性画家の前に出ることで、名誉欲というのか承認欲というのか分からない、欲を満足させてくれるのだ。
そしてこの日は、政務で後宮に来れない間に、カチュアとレオが肖像画をかかせたと聞いてしまっていた。
まだ下書きの状態で、鉛筆による線描写でしかないのだが、レオがカチュアの膝に抱かれていて、アレサンドは激しく嫉妬していた。
その所為だろうか。
アレサンドは突然カチュアを抱き上げ、お姫様抱っこをした。
「よいか!
余とカチュアのこの姿を描き残すのだ!
レオとカチュアの絵に劣るようなら、お前達の首を刎ねてやるぞ!」
「アレサンド。
そのような事を言っては嫌です。
皆で仲良く暮らすと言ったではありませんか。
あの約束は嘘だったのですか?
アレサンドは嘘つきなのですか?」
「いや、その、違うのだ。
ちょっと画家達に喝を入れただけで、本気ではなのだ。
首など刎ねない。
絶対に刎ねない。
むしろよく描けた画家には褒美をやろうと思っていたのだ。
だからそんな哀しそうな顔をしないでくれ」
何かあれば直ぐにカチュアが助ける事が増えていた。
いつの間にかカチュアを頼る者達が周囲に集まって来ていた。
13
お気に入りに追加
3,384
あなたにおすすめの小説

目覚めたら公爵夫人でしたが夫に冷遇されているようです
MIRICO
恋愛
フィオナは没落寸前のブルイエ家の長女。体調が悪く早めに眠ったら、目が覚めた時、夫のいる公爵夫人セレスティーヌになっていた。
しかし、夫のクラウディオは、妻に冷たく視線を合わせようともしない。
フィオナはセレスティーヌの体を乗っ取ったことをクラウディオに気付かれまいと会う回数を減らし、セレスティーヌの体に入ってしまった原因を探そうとするが、原因が分からぬままセレスティーヌの姉の子がやってきて世話をすることに。
クラウディオはいつもと違う様子のセレスティーヌが気になり始めて……。
ざまあ系ではありません。恋愛中心でもないです。事件中心軽く恋愛くらいです。
番外編は暗い話がありますので、苦手な方はお気を付けください。
ご感想ありがとうございます!!
誤字脱字等もお知らせくださりありがとうございます。順次修正させていただきます。
小説家になろう様に掲載済みです。

【完結】私、四女なんですけど…?〜四女ってもう少しお気楽だと思ったのに〜
まりぃべる
恋愛
ルジェナ=カフリークは、上に三人の姉と、弟がいる十六歳の女の子。
ルジェナが小さな頃は、三人の姉に囲まれて好きな事を好きな時に好きなだけ学んでいた。
父ヘルベルト伯爵も母アレンカ伯爵夫人も、そんな好奇心旺盛なルジェナに甘く好きな事を好きなようにさせ、良く言えば自主性を尊重させていた。
それが、成長し、上の姉達が思わぬ結婚などで家から出て行くと、ルジェナはだんだんとこの家の行く末が心配となってくる。
両親は、貴族ではあるが貴族らしくなく領地で育てているブドウの事しか考えていないように見える為、ルジェナはこのカフリーク家の未来をどうにかしなければ、と思い立ち年頃の男女の交流会に出席する事を決める。
そして、そこで皆のルジェナを想う気持ちも相まって、無事に幸せを見つける。
そんなお話。
☆まりぃべるの世界観です。現実とは似ていても違う世界です。
☆現実世界と似たような名前、土地などありますが現実世界とは関係ありません。
☆現実世界でも使うような単語や言葉を使っていますが、現実世界とは違う場合もあります。
楽しんでいただけると幸いです。
義妹の嫌がらせで、子持ち男性と結婚する羽目になりました。義理の娘に嫌われることも覚悟していましたが、本当の家族を手に入れることができました。
石河 翠
ファンタジー
義母と義妹の嫌がらせにより、子持ち男性の元に嫁ぐことになった主人公。夫になる男性は、前妻が残した一人娘を可愛がっており、新しい子どもはいらないのだという。
実家を出ても、自分は家族を持つことなどできない。そう思っていた主人公だが、娘思いの男性と素直になれないわがままな義理の娘に好感を持ち、少しずつ距離を縮めていく。
そんなある日、死んだはずの前妻が屋敷に現れ、主人公を追い出そうとしてきた。前妻いわく、血の繋がった母親の方が、継母よりも価値があるのだという。主人公が言葉に詰まったその時……。
血の繋がらない母と娘が家族になるまでのお話。
この作品は、小説家になろうおよびエブリスタにも投稿しております。
扉絵は、管澤捻さまに描いていただきました。
【完結】捨てられた双子のセカンドライフ
mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】
王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。
父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。
やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。
これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。
冒険あり商売あり。
さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。
(話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)

【完結】胃袋を掴んだら溺愛されました
成実
恋愛
前世の記憶を思い出し、お菓子が食べたいと自分のために作っていた伯爵令嬢。
天候の関係で国に、収める税を領地民のために肩代わりした伯爵家、そうしたら、弟の学費がなくなりました。
学費を稼ぐためにお菓子の販売始めた私に、私が作ったお菓子が大好き過ぎてお菓子に恋した公爵令息が、作ったのが私とバレては溺愛されました。
この度、猛獣公爵の嫁になりまして~厄介払いされた令嬢は旦那様に溺愛されながら、もふもふ達と楽しくモノづくりライフを送っています~
柚木崎 史乃
ファンタジー
名門伯爵家の次女であるコーデリアは、魔力に恵まれなかったせいで双子の姉であるビクトリアと比較されて育った。
家族から疎まれ虐げられる日々に、コーデリアの心は疲弊し限界を迎えていた。
そんな時、どういうわけか縁談を持ちかけてきた貴族がいた。彼の名はジェイド。社交界では、「猛獣公爵」と呼ばれ恐れられている存在だ。
というのも、ある日を境に文字通り猛獣の姿へと変わってしまったらしいのだ。
けれど、いざ顔を合わせてみると全く怖くないどころか寧ろ優しく紳士で、その姿も動物が好きなコーデリアからすれば思わず触りたくなるほど毛並みの良い愛らしい白熊であった。
そんな彼は月に数回、人の姿に戻る。しかも、本来の姿は類まれな美青年なものだから、コーデリアはその度にたじたじになってしまう。
ジェイド曰くここ数年、公爵領では鉱山から流れてくる瘴気が原因で獣の姿になってしまう奇病が流行っているらしい。
それを知ったコーデリアは、瘴気の影響で不便な生活を強いられている領民たちのために鉱石を使って次々と便利な魔導具を発明していく。
そして、ジェイドからその才能を評価され知らず知らずのうちに溺愛されていくのであった。
一方、コーデリアを厄介払いした家族は悪事が白日のもとに晒された挙句、王家からも見放され窮地に追い込まれていくが……。
これは、虐げられていた才女が嫁ぎ先でその才能を発揮し、周囲の人々に無自覚に愛され幸せになるまでを描いた物語。
他サイトでも掲載中。

遺棄令嬢いけしゃあしゃあと幸せになる☆婚約破棄されたけど私は悪くないので侯爵さまに嫁ぎます!
天田れおぽん
ファンタジー
婚約破棄されましたが私は悪くないので反省しません。いけしゃあしゃあと侯爵家に嫁いで幸せになっちゃいます。
魔法省に勤めるトレーシー・ダウジャン伯爵令嬢は、婿養子の父と義母、義妹と暮らしていたが婚約者を義妹に取られた上に家から追い出されてしまう。
でも優秀な彼女は王城に住み、個性的な人たちに囲まれて楽しく仕事に取り組む。
一方、ダウジャン伯爵家にはトレーシーの親戚が乗り込み、父たち家族は追い出されてしまう。
トレーシーは先輩であるアルバス・メイデン侯爵令息と王族から依頼された仕事をしながら仲を深める。
互いの気持ちに気付いた二人は、幸せを手に入れていく。
。oOo。.:♥:.。oOo。.:♥:.。oOo。.:♥:.。oOo。.:♥:.
他サイトにも連載中
2023/09/06 少し修正したバージョンと入れ替えながら更新を再開します。
よろしくお願いいたします。m(_ _)m
ぼっちな幼女は異世界で愛し愛され幸せになりたい
珂里
ファンタジー
ある日、仲の良かった友達が突然いなくなってしまった。
本当に、急に、目の前から消えてしまった友達には、二度と会えなかった。
…………私も消えることができるかな。
私が消えても、きっと、誰も何とも思わない。
私は、邪魔な子だから。
私は、いらない子だから。
だからきっと、誰も悲しまない。
どこかに、私を必要としてくれる人がいないかな。
そんな人がいたら、絶対に側を離れないのに……。
異世界に迷い込んだ少女と、孤独な獣人の少年が徐々に心を通わせ成長していく物語。
☆「神隠し令嬢は騎士様と幸せになりたいんです」と同じ世界です。
彩菜が神隠しに遭う時に、公園で一緒に遊んでいた「ゆうちゃん」こと優香の、もう一つの神隠し物語です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる