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蝦夷地開拓
紛争
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「オロシャと戦いになったと申すか」
「戦いと申しますか、オロシャの使者と言い争いになりました」
「人死には出たのか」
「いえ、御公儀の指示に従い、三道具を使って捕縛しました」
「オロシャは援軍を出さなかったのか」
「二組目の使者を送ってきましたが、話し合いは平行線となりました」
「互いに千島は自分達の領土と言い争いとなったのか」
「はい」
「オロシャは船でやってきたのだな」
「はい」
「二度の交渉後は、交渉の使者を送ってこなかったのだな」
「はい」
「砲撃はしなかったのか」
「私達が此方に向かうまでは、砲撃を行いませんでした」
「分かった。御苦労であった。下がってくれ」
「はい」
「どう思う。平蔵」
「オロシャも千島が自分の領土だと言い切れないのでしょう」
「以前に想定していた通り、侵略の途中という事か」
「はい。現地の人々が弱ければ支配下に置き、抵抗するようなら戦って奴隷とする。そういう者達なのでしょう」
「さて、どうするべきか」
「・・・・・」
「平蔵はどう思う」
「戦うにしても和を結ぶにしても、武力を示しておかねばなりません」
「矢張りそうなるか」
「長崎奉行所から取り寄せた話を総合すると、南蛮諸国は弱い者に容赦しません」
「そう書いてあったな」
「勘察加に攻め込むかどうかは別にして、攻め込める力がある所は見せつけなければなりません」
「蝦夷加役を願い出た御三家と親藩は、既に千島に拠点を築いておるぞ」
「勝手向きの苦しい外様も、数多く蝦夷加役を願い出ております」
「では予定通り、長州と薩摩に加役を申し付けるか」
「はい。必要なら勘察加にまで攻め込ませましょう」
「だが、目付をどうする。オロシャとの交渉は責任重大だぞ。本来なら余が直接乗り込むべきであるが、今ここを離れるわけにはいかん」
「当然でございます。オロシャとの合戦で勝利を得るには、廻船と交易を途切れさせる訳にはまいりません。廻船と交易の大切さを本当に理解されておられるのは、御老中と御城代だけでございます」
「うむ。ならばどうするべきだと思うか」
「私が、蘭学社中の助けを受けて、交渉いたしましょう」
「矢張りそれしかないか。だが平蔵が居なくなっては、福山城下の治安が心配じゃ」
「我が一門の長谷川久三郎正脩ではいかがでしょうか」
「かなり老齢だが、全う出来るのか」
「惣領が優秀でございますし、何より支配組頭以下の役方が優秀でございます」
「万が一、急死する様な事があったらどうする」
「非常時でございますから、惣領に役目を引き継がせる方法もございますし、後任が決まるまで支配組頭に代行させる事も出来ます。役扶持や役高を惜しまないのなら、東西の二役にするか、添え役を設ける事も出来ます」
「分かった。余は平蔵を千島城代に任じ、東西町奉行所を設けるべきだと思うが、幕閣の方々に御伺いを立て、上様の御裁可を頂かねばならない」
「はい」
「早船を仕立てる」
「戦いと申しますか、オロシャの使者と言い争いになりました」
「人死には出たのか」
「いえ、御公儀の指示に従い、三道具を使って捕縛しました」
「オロシャは援軍を出さなかったのか」
「二組目の使者を送ってきましたが、話し合いは平行線となりました」
「互いに千島は自分達の領土と言い争いとなったのか」
「はい」
「オロシャは船でやってきたのだな」
「はい」
「二度の交渉後は、交渉の使者を送ってこなかったのだな」
「はい」
「砲撃はしなかったのか」
「私達が此方に向かうまでは、砲撃を行いませんでした」
「分かった。御苦労であった。下がってくれ」
「はい」
「どう思う。平蔵」
「オロシャも千島が自分の領土だと言い切れないのでしょう」
「以前に想定していた通り、侵略の途中という事か」
「はい。現地の人々が弱ければ支配下に置き、抵抗するようなら戦って奴隷とする。そういう者達なのでしょう」
「さて、どうするべきか」
「・・・・・」
「平蔵はどう思う」
「戦うにしても和を結ぶにしても、武力を示しておかねばなりません」
「矢張りそうなるか」
「長崎奉行所から取り寄せた話を総合すると、南蛮諸国は弱い者に容赦しません」
「そう書いてあったな」
「勘察加に攻め込むかどうかは別にして、攻め込める力がある所は見せつけなければなりません」
「蝦夷加役を願い出た御三家と親藩は、既に千島に拠点を築いておるぞ」
「勝手向きの苦しい外様も、数多く蝦夷加役を願い出ております」
「では予定通り、長州と薩摩に加役を申し付けるか」
「はい。必要なら勘察加にまで攻め込ませましょう」
「だが、目付をどうする。オロシャとの交渉は責任重大だぞ。本来なら余が直接乗り込むべきであるが、今ここを離れるわけにはいかん」
「当然でございます。オロシャとの合戦で勝利を得るには、廻船と交易を途切れさせる訳にはまいりません。廻船と交易の大切さを本当に理解されておられるのは、御老中と御城代だけでございます」
「うむ。ならばどうするべきだと思うか」
「私が、蘭学社中の助けを受けて、交渉いたしましょう」
「矢張りそれしかないか。だが平蔵が居なくなっては、福山城下の治安が心配じゃ」
「我が一門の長谷川久三郎正脩ではいかがでしょうか」
「かなり老齢だが、全う出来るのか」
「惣領が優秀でございますし、何より支配組頭以下の役方が優秀でございます」
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「分かった。余は平蔵を千島城代に任じ、東西町奉行所を設けるべきだと思うが、幕閣の方々に御伺いを立て、上様の御裁可を頂かねばならない」
「はい」
「早船を仕立てる」
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