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蝦夷地開拓

カピタンの申し出

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「カピタン殿、態々訪ねて頂き恐縮です」
「いえいえ、今回は本国より親書が届いておりますので、上様に御渡しする前に見て頂けますか」
「私が先に見て宜しいのですか」
「はい。万が一にも、上様に失礼があっていけませんので、先に見て教えて頂きたいのです」
「分かりました。先に拝読させて頂きます」
「いかがでしょうか。失礼には当たりませんか」
「これは、軍事同盟ではないのですか」
「違います。オロシャは南蛮でも一二を争う大国です。そんな国と敵対する気はありません」
「しかし、オロシャは貴国から遠く離れているのではありませんか」
「確かにある程度は離れていますが、絶対に攻めてこないとは言い切れません」
「唐天竺を越え、七つの海を渡らねばならない程遠くに、貴国はあるのですよね」
「はい。ですが北方とは言え、その遠大な距離を領土としているのがオロシャです」
「そんな強大な国とは戦いたくないと言われながら、我らとは商いを続けたいと申されるのですね」
「オロシャは陸軍の国で、海軍はそれほど強くはありません。我が国としては、幕府に艦艇を提供して、オロシャに勝って頂きたいのです」
「しかし我らとしても、自前で軍船と大砲を造れるようになりたいのです」
「そうは申されても、南蛮船を造られるのは初めてではありませんか。万が一満足な船が完成しなかったら、オロシャとの戦いが不利になるのではありませんか」
「貴国から軍船と大砲を購入するのなら、どれほど大量の酒であろうと、今まで通りの値段で勝って頂けるのですね」
「はい。国王陛下の親書です。約束を違える事はありません。ですが、それが上様に失礼に当たることはないか、主殿頭殿に確かめて頂きたかったのです」
「大丈夫です。失礼に当たる事はありません」
「そうですか。それはよかった」
 幕閣はオランダの申し出に苦慮した。
 水軍が南蛮より遅れている事は、賢明な者ほど痛いほど自覚していた。
 軍備を外国の頼らなければいけない事が、重大な欠陥であることも自覚していた。
 その為に、幕府の資金を惜しみなく投入して、幕府が自前で南蛮軍船と大砲を建造出来るようにしていた。
 だがそれが完璧だとも思っていなかった。
 更に問題だったのは、自前で建造鋳造するよりも、オランダから購入した方が高性能で安価だったのだ。
 そこで将軍・徳川家治と大納言・徳川家基の許可を受けて、オランダから購入する軍船と大砲の代価は、酒・醤油・俵物に限ると言う条件を付けた。
 カピタンはその条件を飲み、十隻の大型南蛮帆船と、三百門の二十四ポンド砲、同じく三百門の三十二ポンドカロネード砲の売買契約を結んだ。
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