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蝦夷地開拓
蝦夷加役の現状
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「主殿頭、オロシャはまだ戦を仕掛けてこないのか」
「はい。いまだ静観しております」
「今少し攻め込むか」
「思案の為所でございます」
「ほう。強気の主殿頭にしては慎重だな」
「今のままでも、御公儀には想定外の莫大な利益が出ております。これを確保すべきか、島々を確保すべきか、慎重に考えるべきところでございます」
「幕府軍の準備は整ってきたのであろう」
「はい。編成出来る限りの番方を新設し、鍛錬をさせております」
「うむ」
「しかしながらその前に、蝦夷加役を望む諸藩を送り込まねばなりません」
「そうだな。我らが大損害を受けてしまったら、外様がどう動くか分からんな」
「最悪の場合は、異国と手を組み、御公儀に弓引くかもしれません」
「うむ。先ずは志願した藩を送り出し、その後外様を送り込むか」
「御意」
大凶作に苦しむ東国の諸藩は、第一次蝦夷加役を引き続き願い出ていた。
諸藩は勝手向きを立て直すため、藩士の扶持を二割三割召し上げる状態であったから、藩士も家族の一人が衣食住付きで御役に就けるのは、食い扶持が一人分減って助かったのだ。
千島に送られた藩士自身も、屯田の役目は厳しかったが、毎日三度米の飯が食えるのは、望外の喜びであった。
千島の島々で採れる自然の恵みは豊かで、蝦夷加役の食事を豊かにしてくれた。
短い夏場に集めた海の恵みも、俵物に使う物以外は食事に供されたので、故郷に残して来た家族に食べさせてやりたいと、心から思うほど美味しかった。
秋になって川に鮭が遡上するようになると、手掴みで抱えるようにして鮭を獲った。
獲っても、獲っても、尽きない鮭は、屯田生活に大きな恵みをもたらしてくれた。
幕府が用意してくれた塩を使い、毎日毎日鮭の遡上が終るまで、鮭を獲り続けた。
中には商品にならない鮭もあったが、そのような鮭は毎日の食事に供され、屯田生活の恵みとなった。
時には合戦の訓練に、鮭を獲りに来ている熊・狼・狐を狩ったりもした。
少々獣臭かったが、食卓に獣肉が供された。
熊胆や毛皮などは幕府が異国に売り、屯田費用の足しにした。
冬に囲炉裏で暖をとる時には、海水を煮て塩を作った。
東国以上に厳しい冬を乗り越えた蝦夷加役団には、大きな褒美が下された。
役料で頂いた玄米の内、蝦夷加役が食べ切らずに残った分が清算され、半分は藩が幕府から借りている借財返済に充てられた。
だが残りの半分は銀に清算され、蝦夷加役一人一人に褒美として下された。
「第一次蝦夷加役」
米沢藩:三十万石 :国後島
天童藩:二万石 :国後島
黒石藩:一万石 :国後島
八戸藩:二万石 :国後島
鶴岡藩:十四万石 :色丹島
山形藩:五万石 :択捉島
二本松藩:十万石 :択捉島
会津藩:二十三万石:択捉島
亀田藩:二万石 :択捉島
本庄藩:二万石 :択捉島
盛岡藩:二十万石 :得撫島
森岡新田藩:一万石:得撫島
弘前藩:十万石 :得撫島
一関藩:三万石 :得撫島
秋田藩:二十万石 :新知島
秋田新田藩:二万石:新知島
仙台藩:三十一万石:計吐夷島
「はい。いまだ静観しております」
「今少し攻め込むか」
「思案の為所でございます」
「ほう。強気の主殿頭にしては慎重だな」
「今のままでも、御公儀には想定外の莫大な利益が出ております。これを確保すべきか、島々を確保すべきか、慎重に考えるべきところでございます」
「幕府軍の準備は整ってきたのであろう」
「はい。編成出来る限りの番方を新設し、鍛錬をさせております」
「うむ」
「しかしながらその前に、蝦夷加役を望む諸藩を送り込まねばなりません」
「そうだな。我らが大損害を受けてしまったら、外様がどう動くか分からんな」
「最悪の場合は、異国と手を組み、御公儀に弓引くかもしれません」
「うむ。先ずは志願した藩を送り出し、その後外様を送り込むか」
「御意」
大凶作に苦しむ東国の諸藩は、第一次蝦夷加役を引き続き願い出ていた。
諸藩は勝手向きを立て直すため、藩士の扶持を二割三割召し上げる状態であったから、藩士も家族の一人が衣食住付きで御役に就けるのは、食い扶持が一人分減って助かったのだ。
千島に送られた藩士自身も、屯田の役目は厳しかったが、毎日三度米の飯が食えるのは、望外の喜びであった。
千島の島々で採れる自然の恵みは豊かで、蝦夷加役の食事を豊かにしてくれた。
短い夏場に集めた海の恵みも、俵物に使う物以外は食事に供されたので、故郷に残して来た家族に食べさせてやりたいと、心から思うほど美味しかった。
秋になって川に鮭が遡上するようになると、手掴みで抱えるようにして鮭を獲った。
獲っても、獲っても、尽きない鮭は、屯田生活に大きな恵みをもたらしてくれた。
幕府が用意してくれた塩を使い、毎日毎日鮭の遡上が終るまで、鮭を獲り続けた。
中には商品にならない鮭もあったが、そのような鮭は毎日の食事に供され、屯田生活の恵みとなった。
時には合戦の訓練に、鮭を獲りに来ている熊・狼・狐を狩ったりもした。
少々獣臭かったが、食卓に獣肉が供された。
熊胆や毛皮などは幕府が異国に売り、屯田費用の足しにした。
冬に囲炉裏で暖をとる時には、海水を煮て塩を作った。
東国以上に厳しい冬を乗り越えた蝦夷加役団には、大きな褒美が下された。
役料で頂いた玄米の内、蝦夷加役が食べ切らずに残った分が清算され、半分は藩が幕府から借りている借財返済に充てられた。
だが残りの半分は銀に清算され、蝦夷加役一人一人に褒美として下された。
「第一次蝦夷加役」
米沢藩:三十万石 :国後島
天童藩:二万石 :国後島
黒石藩:一万石 :国後島
八戸藩:二万石 :国後島
鶴岡藩:十四万石 :色丹島
山形藩:五万石 :択捉島
二本松藩:十万石 :択捉島
会津藩:二十三万石:択捉島
亀田藩:二万石 :択捉島
本庄藩:二万石 :択捉島
盛岡藩:二十万石 :得撫島
森岡新田藩:一万石:得撫島
弘前藩:十万石 :得撫島
一関藩:三万石 :得撫島
秋田藩:二十万石 :新知島
秋田新田藩:二万石:新知島
仙台藩:三十一万石:計吐夷島
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