幻の十一代将軍・徳川家基、死せず。長谷川平蔵、田沼意知、蝦夷へ往く。

克全

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蝦夷地開拓

徒士組格黒鍬衆と築城築陣

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「親父、ここに切通を掘ればいいのか」
「そうだ、ここに切通を掘っておけば、オロシャが攻め寄せてきたときに、鉄砲や弓で狙い撃ちにすることが出来る」
「分かった」
「親父、ここの柵はこの高さで大丈夫か」
「高さは大丈夫だが、前後の柵が、左右でもっと重なるようにしろ。そうしておけば、オロシャが攻め寄せて来た時に、長く鉄砲や弓で狙う事が出来る」
「分かった」
「源蔵殿、堀切の内側はここでいいのか」
「いや、そこだとオロシャの鉄砲が城壁に届いてしまう。もう三間遠くにしてくれ」
「だがそれだと、味方の鉄砲も敵に届かないのではないか」
「いやそれは大丈夫だ。御城代の御話では、オロシャに備えるために、新型の狭間筒や大鉄砲に加えて、大筒まで量産されているそうだ」
「それは心強いな」
 開拓が成功して屯田役が与えられたのは、御先手組同心格黒鍬衆も同じであった。
 二年前に一町六石分の開拓地が認定され、昨年は二町十二石の開拓地が認定され、今年は三町十八石の開拓地が認定されていた。
 併せて六町三十六石(九十俵)換算の取高開拓地となっていた。
 扶持米と併せれば百二俵と家族扶持であり、徒士組格黒鍬衆に家格を上げることが可能だった。
 ここまで成功した以上、持ち出しの多い役目を命じられるのは当然であった。
 だがどれほど負担が増えようとも、元が黒鍬衆の家格だった彼らにとって、正式な武士と認められる、直参御家人の徒士組に家格が上がる事は、見逃す事の出来ない重要な事だった。
 それ故に、どれほど過酷で困難な築城であっても、どれほど危険な場所での築陣であっても、怯むことなく赴いていった。
 幕府もその男気に応えるべく、惣領部屋住みを見習いとして開拓地の開墾に当たらせるだけでなく、次男以降の部屋住みも見習いとして取り立てて、当主に同行させて築城築陣に当たらせ、三家四家分の黒鍬衆の扶持を与える処置をとった。
 この御陰で、蝦夷地や樺太には、オロシャとの合戦になった場合に、屯田兵団や穢多非人蝦夷開拓団は勿論、小作人も逃げ込める山城が次々と完成していった。
「和製鉄砲と大筒の口径と砲弾重量」
大筒:一貫(三・七五キログラム)の砲弾を発射する口径八四・二ミリ
半筒:半貫(一・八七五キログラム)の砲弾を発射する口径
分砲:二五疋(九三七・五グラム)砲弾を発射する口径
大鉄砲:二〇匁(七五グラム)口径二三・五八ミリ
   :三〇匁(一一二・五グラム)口径二六・九九ミリ
   :五〇匁(一八七・五グラム)口径三三・〇四ミリ
   :一〇〇匁(三七五グラム)口径三九・五ミリ
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